実在する土地や歴史と空想を掛け合わせた、唯一無二の作風で知られる「万城目学」。奇想天外でファンタジックな世界観は「万城目ワールド」と呼ばれ、幅広い世代から愛されています。
短編から長編、エッセイなど幅広い作品を発表しているうえ、映画化やドラマ化された作品も豊富。そのため、どれから読むべきか悩む方も多いはずです。今回は、万城目学のおすすめ小説を厳選してご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
※商品PRを含む記事です。当メディアはAmazonアソシエイト、楽天アフィリエイトを始めとした各種アフィリエイトプログラムに参加しています。当サービスの記事で紹介している商品を購入すると、売上の一部が弊社に還元されます。
ユーモラスなファンタジー作品が人気の「万城目学」とは?
万城目学は、1976年、大阪府生まれの作家です。京都大学法学部卒業後、化学繊維会社に勤務しながら執筆。その後、2006年に『鴨川ホルモー』でボイルドエッグズ新人賞を受賞し、作家デビューを果たします。
咲くやこの花賞を受賞し、直木賞や山田風太郎賞、本屋大賞といった賞にもたびたびノミネートされています。映画やドラマ、コミックなど、メディア化された作品も多く、幅広い世代から人気のある作家です。
万城目学作品の魅力
万城目学作品の魅力は、現実世界に非日常的な内容を取り入れる、ファンタジックな作風です。ユーモアとともに予想外の展開が繰り広げられることから、「万城目ワールド」と呼ばれています。
明るくすがすがしい登場人物が多いのも、万城目学作品の魅力。著者自ら「人の悪意に興味が薄く、書きたいという欲求がゼロ」といっているだけあって、親近感のある登場人物と朗らかな作風を得意としています。
また、自身にゆかりのある場所を舞台にしている作品も多数。特に関西地方で展開される小説からは、著者の故郷に対する思い入れが感じられます。
万城目学のおすすめ小説
とっぴんぱらりの風太郎
文藝春秋 著者:万城目学
仕事をクビになった忍者を主人公にした長編小説です。著者初の時代小説で、2014年の本屋大賞で5位を獲得。また、第150回直木賞候補作にも選ばれています。
忍者の風太郎は、さまざまな不運が重なり伊賀から追い出されてしまう事態に。都で当てもなく暮らしていましたが、ある日、謎のひょうたんと出会ったことをきっかけに、風太郎の運命が徐々に動き始めます。
物語前半の穏やかな雰囲気から一転、後半でシリアスな雰囲気になる、緊張感のある展開は必見。上下巻構成なので、一気読みもおすすめです。
プリンセス・トヨトミ
文藝春秋 著者:万城目学
大阪の歴史をテーマにした、エンターテインメント小説です。2009年の咲くやこの花賞を受賞し、第141回直木賞候補作にもノミネート。また、2011年には映画化もされました。
東京から来た会計検査院の3名の調査官と空堀商店街に住む中学生たち。彼らは、大阪人しか知らない歴史の封印の存在を知ってしまいます。400年以上守られてきた秘密が明らかになったことで、5月末日の木曜日、営業活動・商業活動・公共交通機関が全停止してしまうことに…。
予想外の展開が続き、一気読みする読者も多い作品。大阪を舞台に繰り広げられる、壮大な世界観の物語に浸りたい方におすすめです。
偉大なる、しゅららぼん
集英社 著者:万城目学
滋賀県の湖東地方を舞台にした長編小説です。琵琶湖の歴史や神秘にフォーカスした作品で、2014年には映画化もされています。
長い間、対立関係にある日出家と棗家は、ともに特殊能力を持つ一族です。しかし、彼らはある大きな危機に直面。主人公・日出涼介は、両家の人々とともに危機に立ち向かいますが…。
ボリュームのある一冊ながら、登場人物それぞれに存在感があり、最後まで飽きずに読み進められるのが特徴。爽やかな読後感を味わいたい方におすすめです。
鹿男あをによし
幻冬舎 著者:万城目学
奈良県を舞台にした著者の代表作で、出版直後に第137回直木賞候補作となった長編小説です。2008年にはドラマ化・コミック化もされています。
大学の研究室を追われた主人公は、教授に勧められるがまま、奈良の女子高で歴史の教師を務めることに。彼は軽い気持ちで赴いたが、ある日、鹿に話しかけられたことから状況が一変します。
ほかの作品と比べてファンタジー要素が多いものの、ていねいな人物描写もあり、読みやすいのがポイント。奈良県にゆかりのある方にもおすすめです。
ヒトコブラクダ層ぜっと
幻冬舎 著者:万城目学
三つ子を主人公にした、長編冒険小説。アクション、神話、SFやミリタリーなど、さまざまな要素を絡めて展開するスピード感あふれる物語です。
貴金属を盗んで大金を手にした三つ子の前に、ライオンと謎の女が登場します。彼らは砂漠に向かうことになりますが、そこでは驚きの展開が待ち受けていて…。
著者の作品のなかで最もページ数が多く、スケールの大きい作品です。また、これまでの作品とは異なり、海外を舞台にしているのも特徴。上下巻構成なので、時間のあるときに一気読みもおすすめです。
かのこちゃんとマドレーヌ夫人
筑摩書房 著者:万城目学
元気な小学校1年生・かのこちゃんと、猫のマドレーヌ夫人が日々遭遇する出来事を描く長編小説。第143回直木賞候補作で、児童小説としても刊行されています。
何気ない日常で出会う不思議や驚きを、それぞれの目線でていねいに描いているのがポイント。著者のほかの小説とは異なり、歴史や特定の地域をテーマにしていないのも特徴です。
笑いあり涙ありのストーリーに魅了され、何度も読み返す読者も多数。優しい気持ちになれる万城目学作品が読みたい方におすすめです。
鴨川ホルモー
KADOKAWA 著者:万城目学
京都の大学生たちが行う不思議な競技をテーマにした、著者のデビュー作です。「ボイルドエッグズ新人賞」を受賞し、本屋大賞にもノミネート。映画化・コミック化もされた代表作です。
主人公の安倍は、対戦型の競技「ホルモー」を行うサークルから勧誘されます。彼は、ある女性への一目惚れをきっかけに入部を決意。競技や恋愛・友情に浸る青春の日々を過ごします。
登場人物の強烈な個性と、奇想天外な設定に引き込まれる作品。「万城目ワールド」ならではの、独特の世界観がぞんぶんに味わえる小説が読みたい方におすすめです。
ホルモー六景
KADOKAWA 著者:万城目学
著者の人気作『鴨川ホルモー』のスピンオフ短編集。前作のヒロインや、相手チームの女性など、さまざまな登場人物たちの恋愛事情を描く6編を収録しています。
前作ではあまり触れられなかった、学生たちの日常に焦点を当てた話が中心。恋愛が成就する前のもどかしさ、ままならなさを書いているのが特徴です。
前作の場面を彷彿とさせるシーンもあり、2作品セットで読むのがおすすめ。甘酸っぱい気持ちに浸りたい方にもぴったりな一冊です。
パーマネント神喜劇
新潮社 著者:万城目学
恋愛成就の神々を主人公にしたお仕事小説。4編を収録する連作短編集です。2018年の山本周五郎賞にもノミネートされました。
縁結びの神は一見、小太りの中年男性。派手な柄シャツと下ぶくれの顔がトレードマークです。彼は同僚のサラリーマンとともに、人々と自身の願いを叶えるために仕事に務めます。
まるで人間のように描かれる神の姿がユニークで、最後まで気楽に読み進められる作品。あたたかみのある作品を読みたい方におすすめです。
悟浄出立
新潮社 著者:万城目学
『西遊記』『三国志』などの古典作品に登場する脇役たちにフォーカスした5編を収録する短編集。第152回直木賞候補作・第5回山田風太郎賞候補作です。
勇敢な悟空や怖い物知らずの八戒と行動しながら、物事を静観してしまう悟浄。彼が八戒に長年の疑問をぶつける表題作『悟浄出立』をはじめ、人生の見方が変わる物語ばかりです。
「万城目学がずっと描きたかった物語」というだけあり、ほかの作品とは異なる読み口も特徴。中国の古典文学や、歴史好きの方におすすめです。
ザ・万字固め
文藝春秋 著者:万城目学
著者の3冊目のエッセイです。日常生活の様子や普段考えていること、旅先での出来事などをまとめた、全35編を収録しています。
愛するひょうたんについて熱く語る話から、東電の株主総会に潜入した話などもあり、バラエティーに富んでいるのが特徴。綿矢りさ・森見登美彦との対談も見どころです。
著者ならではの、ユニークな物事の見方や鋭い着眼点が垣間見えるのもポイント。万城目学ファンの方や、小説のほかにも読んでみたい方にもおすすめです。
ぼくらの近代建築デラックス!
文藝春秋 著者:万城目学・門井慶喜
直木賞を受賞した『銀河鉄道の父』などで知られる小説家・門井慶喜との共著。近代建築ファンの2人が、東京・横浜・大阪・京都・神戸などの名建築を訪れるルポ対談集です。
「大阪綿業会館」「築地本願寺」などの建築物について、歴史的な観点も取り入れつつ解説。「講談社」や「日比谷公園」といった、比較的身近な建物も取り上げているのが特徴です。
地図や写真もあり、ガイドブック感覚で楽しめる一冊。建築愛あふれる2人の、軽妙なやり取りも見どころです。建築物に興味がある方は、ぜひ読んでみてください。
ファンタジー要素が多く、独特の世界観が楽しめる万城目学作品。初心者なら、映画化・ドラマ化された作品や、代表作から読むのがおすすめです。過去に万城目学の作品を読んだことがある方は、短編集やルポ対談も要チェック。また、歴史をテーマにしていない作品も面白く、新鮮な読書体験ができます。