恋愛小説を多く執筆し、直木賞を始め多くの文学賞を受賞している「井上荒野」。自身の両親と愛人の三角関係をテーマにした小説を執筆するなど、大きな反響を呼んだ作品も多い作家です。

そのような井上荒野の作品を、どれから読もうか悩む方もいるのではないでしょうか。そこで本記事では、恋愛小説を中心に、井上荒野のおすすめ小説を厳選。短編・長編ともにご紹介しますので、参考にしてみてください。

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直木賞作家「井上荒野」とは?

井上荒野は1961年、東京都生まれ。作家の井上光晴を父に持つ、二世作家です。

成蹊大学文学部を卒業後、出版社勤務やライターとして活躍。1989年、同人小説として書いていた『わたしのヌレエフ』でフェミナ賞を受賞しました。一時は体調不良のために執筆活動を中断するものの、2001年に作家業を再開します。

2004年には『潤一』で島清恋愛文学賞、2008年には『切羽へ』で直木賞を受賞しました。2018年には『その話は今日はやめておきましょう』で織田作之助賞を受賞するなど、受賞歴多数の作家です。ドラマ化・映画化された作品も多く存在。児童書の翻訳家や絵本作家としても活動中です。

井上荒野作品の魅力

井上荒野作品の魅力は、人々の複雑な心情や気持ちの移り変わりを、シャープな文体で描く点です。作風について著者は、登場人物たちを遠くから眺めている気分で執筆していると話しています。

壮大なドラマではなく、小さな変化を書いていくのが好きな著者。夫婦や安定した関係の人々をテーマに選ぶことも多いのが特徴です。男女の三角関係や夫婦の関係を描いた作品が目立つものの、第三者目線の非常に淡々とした筆致で描かれ、読後はどこか爽やかささえ感じられます。

おいしそうな料理の描写も必見です。もともと著者自身は食事が好きで、料理エッセイや料理小説も多数発表。幼少時から短い話を書き始めており、動物や食べ物に関係する話も多かったことが、ルーツとなっています。

井上荒野のおすすめ小説

あちらにいる鬼

朝日新聞出版 著者:井上荒野

あちらにいる鬼

著者の父・井上光晴と、彼と不倫関係にあった瀬戸内寂聴、彼の妻の三角関係をモデルにした長編小説です。2022年には映画化も決定しています。

ともに作家である白木篤郎と長内みはるは、講演旅行を機に不倫を開始。篤郎とみはるは、情愛と「執筆」という行為で通じる、かけがえのない存在でした。一方、篤郎の妻・笙子は2人の関係に気づいているものの、変わりなく過ごす日々を送ります。

多くの新聞や雑誌で反響を巻き起こし、「衝撃の最高傑作」との呼び声も高い作品。リアリティのあふれる恋愛小説が読みたい方におすすめです。

その話は今日はやめておきましょう

毎日新聞出版 著者:井上荒野

その話は今日はやめておきましょう

穏やかに過ごす老夫婦の暮らしが、ある青年の登場で変化する様子を描いた長編小説。第35回織田作之助賞を受賞した作品です。

昌平とゆり子は定年退職し、趣味のクロスバイクを楽しむ日々を送っていました。ある日、昌平が転倒事故を起こして骨折。家事手伝いとして、一樹という青年が2人の家に通うようになります。しかし、ゆり子は徐々に家庭内の異変を感じ始めて…。

3人の視点から物語が進んでいき、それぞれの心情や生い立ちが明らかになっていくのが特徴。緊張感のあるストーリー展開の井上荒野作品を読みたい方におすすめです。

結婚

KADOKAWA 著者:井上荒野

結婚

著者の父・井上光晴の著作に、オマージュを込めて執筆した長編小説。結婚詐欺師の姿を通じて男女の闇と欲望を描く作品です。2017年には映画化されています。

結婚願望を諦められず、不満を抱えて生きる女性たちに取り入り、金銭を奪って姿をくらます結婚詐欺師・古海。何人もの女性がだまされていましたが、仙台の会社員・鳩子は彼を追い、ついに彼の相棒を発見します。しかし、古海もある闇を抱えていたことが判明し…。

サスペンス小説のような展開に引き込まれ、結婚の意義を考えさせられる一冊。作家・西加奈子による解説もおすすめポイントです。

そこにはいない男たちについて

角川春樹事務所 著者:井上荒野

そこにはいない男たちについて

最愛の夫を亡くした女性と、愛したはずの夫を嫌いになった女性を描く長編小説。多くのメディアで絶賛された、おすすめの人気作です。

料理教室を主催している実日子は、夫の突然の死により教室をしばらく休止していました。再開した教室に初めて参加した女性・まりは、参加者たちの前で「夫とうまくいっていない」と話します。

立場・境遇の異なる2人の女性の心情や行動に、思わず感情移入をしてしまう読者も多数の作品。登場する料理の、食欲をそそる描写も見どころです。

潤一

新潮社 著者:井上荒野

潤一

14歳から62歳までの女性の間を渡り歩く男性を描いた、連作短編集。第11回島清恋愛文学賞を受賞した作品で、2019年にはドラマ化もされました。

26才の伊月潤一は、住所不定・無職の不良。気まぐれで女性をとりこにする魅力の持ち主ですが、1人の女性の元には長く留まらない性格です。彼は、日常に不満を抱く女性たちとともに、つかの間の愛を育んでいきます。

ミステリアスで、はかなささえ感じさせる潤一の姿に魅了される読者も多い作品。不思議な読後感の井上荒野作品を読みたい方におすすめです。

リストランテ アモーレ

角川春樹事務所 著者:井上荒野

リストランテ アモーレ

レストランの店主や客たちの恋愛事情を、華やかな料理の数々とともに描く連作短編集。メインディッシュからデザートまで、バラエティ豊かな料理が登場し、物語を彩ります。

偲と杏二の姉弟は、東京・目黒でレストラン「アモーレ」を営業中。連日、常連客の訳ありカップルや杏二の師匠など、さまざまな客が来店します。カツレツやアクアパッツァ、レモンパイなどの旬の料理とともに、各自の事情が明らかになっていくのですが…。

店主姉弟も含めた多くの人々の恋愛模様が描かれます。落ち着きとさわやかさのある筆致により、気楽に読める一冊です。俳人・俵万智による解説も必見。幸福感のある井上荒野の作品が読みたい方におすすめです。