ロシアを代表する文豪「ドストエフスキー」。難解な作品が多いことで知られていますが、現代においても多くの愛読者がいる作家です。特に、現代の預言書とまで謳われ、五大長編小説として括られる代表作に触れることなく、ロシア文学は語れません。

そこで、今回はドストエフスキーのおすすめ小説をご紹介。今を生きる方が共感できるテーマの作品も多いので、ぜひチェックしてみてください。

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19世紀後半を代表するロシアの文豪「ドストエフスキー」

ドストエフスキーは、1821年生まれのロシア人作家です。19世紀のロシア文学を代表する世界的な文豪として知られています。1846年に『貧しき人びと』を発表し、一躍作家としての地位を確立。しかし、1849年には空想的社会主義に関わったとして逮捕され、シベリアに流刑となってしまいます。

その後、1861年のロシアにおける農奴解放前後の社会的な混乱や不安を背景に、鋭い感性によって世界的に評価される作品を次々に発表。「五大長編小説」とも括られる『罪と罰』『白痴』『悪霊』『未成年』『カラマーゾフの兄弟』は「現代の予言書」とまで称されました。

ドストエフスキー作品の魅力

ドストエフスキーの作品は当時の社会背景を的確に考察し、物語に反映しているのが特徴。社会の階層化や分断が進み、不安や不満を持つ民衆が増えた点では、現代にも通ずる部分があり、今なお読者の共感をつかんでいます。

時代や人種を超えて、作中で描かれる人間らしい登場人物の心理描写や行動に共感できるのも魅力のひとつ。自意識過剰がゆえに引きこもりになってしまう男性の話や浮気する妻にしがみつき続ける夫の話、ギャンブルに依存して破滅する男性の話など、現代にも通ずるテーマの作品から手に取るのもおすすめです。

ドストエフスキーのおすすめ小説

罪と罰 上

新潮社 著者:ドストエフスキー

罪と罰 上

格差がもたらした犯罪をテーマに描くドストエフスキーの長編小説。筆者の作品のなかでも、「五大長編小説」として数えられている代表作のひとつです。2019年1月には舞台化されました。

頭脳明晰ですが貧しい学生・ラスコーリニコフは、「ひとつの罪は百の善行によって償われる」という哲学を持っていました。ある日、強欲な金貸しの老婆を殺してお金を奪おうとしますが、その場にいた妹まで殺害。予期せぬ殺人により、ラスコリーニコフの心はしだいにむしばまれていき、罪の意識に押しつぶされそうになるのでした。

格差社会が問題となりつつある現代においても、通ずる部分の多いのがポイント。矛盾を含んだ社会に問題提起している作品として読むのもおすすめです。

カラマーゾフの兄弟 上

新潮社 著者:ドストエフスキー

カラマーゾフの兄弟 上

神と人間という壮大なテーマを扱うドストエフスキーの長編小説。世界文学屈指の名作と謳われている作品でもあります。2013年には、現代風にアレンジしたドラマ版が日本で制作されているのもポイントです。

勝手気ままな生き方をするドミートリイ、冷徹で知性に溢れたイワン、信仰深く慎ましやかに生きるアリョーシャは、強欲な父を持つ兄弟。3人に加え、父・フョードルの隠し子と目されるスメルジャコフをも巻き込み、相続問題が勃発します。しかし、問題が解決せぬままにフョードルが何者かに殺害されてしまい…。

家族に起こった問題を通して、自由や幸福といった人間の本質を問いかけてくる作品。人生について見つめなおしたい方にもおすすめの1冊です。

未成年 上

新潮社 著者:ドストエフスキー

未成年 上

当時のロシア社会の混乱を背景に、信仰や恋に引き裂かれゆく人間を描いた作品。ドストエフスキー円熟期の名作と謳われています。

貴族・ヴェルシーロフは、一家の主でありながらもアフマーコワへの熱烈な想いを止められずにいます。一方、彼と使用人の間に生まれた私生児・アルカージイは、自身の生い立ちがゆえに世を憎み、富と権力を欲しながらも父の愛を渇望しているのでした。

主人公によるモノローグ形式で物語が進んでいくのが特徴の作品。若者が社会に対して持ちうる強烈な不満や不安を描き出している点にも注目してみてください。

白痴 上

新潮社 著者:ドストエフスキー

白痴 上

皆から愛されたムイシュキン公爵が巻き起こす混乱と騒動についての物語。ドストエフスキーが「無条件に美しい人間」を描き出そうとして執筆されたといわれています。

スイスの精神療養所で大人になったムイシュキン公爵は、ロシアの現状を知らずに帰郷。純真で無垢な心のままの公爵は、すべての人から親しみを持たれます。しかし、ロシア的因習にとらわれている人々は、ムイシュキン公爵をきっかけとし騒動に巻き込まれていくのでした。

騒動はナスターシャという女性をめぐってさらに深まっていきます。登場人物たちの行く末に注目しながら読むのがおすすめの作品です。

悪霊 上

新潮社 著者:ドストエフスキー

悪霊 上

無神論的革命思想を悪霊に見立てて展開されるドストエフスキーの作品。悪霊に取り憑かれ破滅した人々を、実在の事件をモチーフにして描いている点が特徴です。

1861年の農奴解放令によって、旧来の価値は崩壊しました。社会的な混乱が深まるロシアで、青年たちは無政府主義や無神論を信念とし、秘密結社を組織してロシア社会の転覆を企てますが…。

登場人物が多い長編なので、相関図などを作りながら読み進めるのがおすすめ。読み応えのあるドストエフスキー作品に挑戦したい方はチェックしてみてください。

地下室の手記

新潮社 著者:ドストエフスキー

地下室の手記

誰にも愛されず愛したこともない主人公が、社会から隔絶された地下室で綴った、手記の体を成したドストエフスキーの作品。「ドストエフスキーの全作品を解く鍵」と評されています。

小官吏は強烈な自意識過剰から一般社会との関係を絶ち、地下室に閉じこもっていました。彼は、理性による社会改造の可能性を否定し、人間の本性は非合理であるという主張を展開しますが…。

著者の初期の人道主義的作品から、後期の作品群へのターニングポイントに位置づけられる点に注目。ドストエフスキーを深く読み込みたい方におすすめです。

貧しき人びと

新潮社 著者:ドストエフスキー

貧しき人びと

文豪・ドストエフスキーのデビュー作。写実的ヒューマニズムの傑作とも謳われ、著者の名声を確立するきっかけにもなった作品です。

世間から軽蔑されている善良だが小心者の小役人・マカール・ジェーヴシキンと、幸の薄い乙女・ワーレンカが織りなす悲劇。物語は、2人の往復書簡の形で展開されていきます。はたして、愛は貧しさに打ち勝てるのでしょうか。

都会の裏側に住む行き場のない人々を取り上げ、彼らの心理的葛藤を描き出している点に注目。著者の原点に触れたい方にもおすすめです。

賭博者

新潮社 著者:ドストエフスキー

賭博者

ドストエフスキーが実際に体験した出来事をベースに書き上げた作品。自身の体験に裏打ちされた物語と深い人間考察によって、ほかの作品にない独特の雰囲気を生み出しているのが特徴です。

主人公の青年は、ドイツのとある観光地に滞在している将軍家の家庭教師をしながら、ルーレットの魅力にとりつかれていきます。ギャンブルにのめり込み、青年はしだいに身を滅ぼしてゆき…。

主人公を通して、ロシア人に特有とされる病的性格を浮き彫りにしているのがポイント。ギャンブル依存症という、現代人にも通ずる社会問題がテーマになっている点にも注目してみてください。

永遠の夫

新潮社 著者:ドストエフスキー

永遠の夫

夫であること以外にはなにもない哀しき男性を描き出すドストエフスキーの作品。著者の作品群のなかでも異色の作品に位置づけられています。

ある夜、ヴェリチャーニノフのもとへ、帽子に喪章をつけたトルソーツキーが訪れます。彼は、愛人をとっかえひっかえしている妻にしがみついていることしかできない「永遠の夫」でした。ヴェリチャーニノフは、かつて関係のあったトルソーツキーの妻の死を告げられて…。

浮気されていた男・トルソーツキーではなく、妻の浮気相手であるヴェリチャーニノフの視点で物語が進むのが印象的な作品。現代でも起こりうる「浮気」にまつわるドストエフスキー作品が気になる方におすすめです。

白夜 おかしな人間の夢

光文社 著者:ドストエフスキー

白夜 おかしな人間の夢

ドストエフスキーらしくないと謳われた作品を、4編収めた作品集。暗い・重い・長いが特徴となる作風のなかで、ひと味違った雰囲気を楽しめるのが魅力の1冊です。

ペテルブルグの夜を舞台に、内向的で夢見がちな青年と少女の出会いを描いた『白夜』。自殺を決意した男が、真理を発見したことを理由に自殺をやめてしまう『おかしな人間の夢』などを収録しています。

全編を通して、どこか明るさがにじみ出ているのが印象的な作品。希望を持った終わり方を堪能できるドストエフスキー作品に触れたい方におすすめです。