明治から昭和にかけて活躍した作家「泉鏡花」。幻想的な作風や人情味溢れる作風の作品を数多く残しています。文章力が卓越しており、描写された風景が自然とイメージできるのも魅力。戯曲や短編など、さまざまな形の作品を手がけているのも特徴です。

今回は、泉鏡花のおすすめ小説をご紹介します。映像化や舞台化された作品もピックアップ。ぜひ参考にしてみてください。

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幻想的な世界観も魅力の「泉鏡花」とは?

泉鏡花は、1873年金沢生まれの作家です。鏡花はペンネームで、本名は鏡太郎。1890年に上京し、尾崎紅葉に師事します。1995年『夜行巡査』『外科室』を発表。現実社会の暗部に対する著者の思想を小説に反映した作風は「観念小説」と呼ばれ、新進作家として注目を集めました。

その後、『照葉狂言』『高野聖』『婦系図』『歌行燈』など、浪漫・神秘的な作品を数多く執筆。なかには、映像・舞台化された作品も数多くあります。生誕100年の節目である1973年には、金沢市により泉鏡花文学賞が創設されました。

泉鏡花作品の魅力

泉鏡花は、現実と非現実が入り混じる世界観の作品を多く執筆している作家です。すぐれた筆力によって、幻想的な風景が自然と浮かび上がってくるのが特徴。美しい文章は多くの方の心を掴んでいます。

特に語感に強いこだわりを持っているのがポイント。一見すると読みにくい文章も、口に出して読むと耳馴染みのよい、計算された文章であるとわかります。

ほかに、自然主義者流の肉欲的恋愛観に抵抗を持つ著者らしい、精神的な繋がりを大切にした人情物語もおすすめ。戯曲や短編など、さまざまな作品があるので、興味のあるモノから手に取ってみてください。

泉鏡花作品のおすすめ

化鳥・三尺角 他六篇

岩波書店 著者:泉鏡花

化鳥・三尺角 他六篇

目の前の世界を幻想世界へと変換する泉鏡花の作品集。著者らしい、風景をそのまま切り取ったような文章が魅力です。

『化鳥』は、“犬も猫も人間もおんなじだって。…いまに皆分るんだね”というセリフが印象的。そのほか、『清心庵』『三尺角』『木精』『朱日記』『第二菎蒻本』『皮鞄の怪』『茸の舞姫』の全8編を収録しています。

草木鳥獣、死者と人とが思いや痛みを通して繋がっていく作品を楽しめるのがポイント。泉鏡花の世界観を堪能したい方におすすめの1冊です。

高野聖

集英社 著者:泉鏡花

高野聖

妖しく美しい幻想の世界を描き出す泉鏡花の作品です。5編を収録した作品集。表題作は1957年や2012年に実写映画化されているのもポイントです。

飛騨から信濃へと旅をしていた僧はある日、美しい女性と亭主が住む一軒家で夜を過ごそうとします。近くにある水場に案内された僧は、女性に体を洗われて夢見心地の気分になるのでした。その夜、僧は無数の獣に囲まれた気配を感じて…。

泉鏡花らしい、夢と魔が交じり合う世界観が見どころ。幻想的な世界をユーモラスに描いた作品が読みたい方におすすめです。

絵草紙 月夜遊女

平凡社 著者:泉鏡花

絵草紙 月夜遊女

泉鏡花の怪異譚を山村浩二のイラストと共に楽しめる1冊。奇妙で滑稽な新しい物語です。

月夜の山中で、吉と音吉が担いできたアンコウの腹から妖しい美女が出現。肝が化けた美女に“私を一所に連れておいで。”と言われた2人は…。

イラストがあることで物語が可視化され、難解とされる著者の世界がより鮮明になるのが魅力。泉鏡花作品に抵抗のある方でも読みやすいおすすめの作品です。

婦系図

新潮社 著者:泉鏡花

婦系図

泉鏡花が描く、悲恋と復讐の物語です。本作品は『婦系図 湯島の白梅』として1955年に実写映画化し話題に。その後、何度もテレビドラマ化や舞台化されています。

明治時代、著名な大学教授・酒井の門下生である早瀬主税は、芸者あがりのお蔦と秘密裏に結婚します。しかし、酒井の娘との縁談が持ち上がった主税はお蔦との別れを決意。お蔦は、泣く泣く身を引くのでした。

自由恋愛が難しかった時代、女性の愛する男性を想う気持ちが切なく感じられる作品。哀しい雰囲気の泉鏡花作品を読みたい方におすすめです。

外科室・海城発電 他五篇

岩波書店 著者:泉鏡花

外科室・海城発電 他五篇

泉鏡花の初期の代表作を楽しめる作品集です。表題作のほか、『義血侠血』『夜行巡査』『琵琶伝』『化銀杏』『凱旋祭』の7編を収録。なかでも、『義血侠血』は、数多く映画化・舞台化されている『滝の白糸』の原作としても知られています。

『外科室』は泉鏡花作品のエッセンスが詰まった作品で、お互いに一目惚れをした学生と少女の物語。大人になって、外科医師と患者として手術室の中で再会し、愛を貫くというストーリーです。

泉鏡花が得意とする幻想的な作風ではなく、愛や生をテーマとしたリアルな作風が特徴。著者の作品の魅力を感じてみたい方におすすめです。

歌行燈

岩波書店 著者:泉鏡花

歌行燈

冬の桑名の月夜での出来事を描いた泉鏡花の作品です。明治42年に泉鏡花が訪れた、三重県桑名の宿「船津屋」で書き上げました。船津屋の表塀には「歌行燈句碑」が建てられており、観光名所にもなっています。

“私はね…お仲間の按摩を一人殺しているんだ”と、芸への驕りが招いた出来事を語る流しの旅芸人。一方、近くの旅宿では2人の老人が芸妓の身の上話に耳を傾けていました。

ふたつの物語が交錯したときに現れる、新たな物語に注目。1943年と1960年に実写映画化もされています。研ぎ澄まされた文章も魅力。泉鏡花の文章力を味わいたい方におすすめの作品です。

春昼・春昼後刻

岩波書店 著者:泉鏡花

春昼・春昼後刻

泉鏡花作品のなかでも傑作といわれている1冊。幻想的な世界観と、著者の美しい文章が堪能できるのが魅力の作品です。

自然と寝入ってしまいそうになる穏やかな春の昼下がり。散策の最中に立ち寄った山寺で住職から聞かされたのは、出会ってすぐに不可思議な夢の契りに結ばれた男女の物語でした。明るい景色のなか、不気味な運命の物語を展開します。

著者の筆力によって春の陽気を見事に書き表している作品。泉鏡花作品の世界観に没入してみたい方におすすめです。

夜叉ケ池・天守物語

岩波書店 著者:泉鏡花

夜叉ケ池・天守物語

近年再び脚光をあびる泉鏡花の戯曲2編を収録した1作。泉鏡花作品のなかでは比較的読みやすい作品です。

幻想と現実が融合する『夜叉ケ池』では、竜神が封じこめられた夜叉ケ池が舞台。伝承を守り続ける萩原は、1日に3回鐘をつき鳴らし続けます。また、すぐれたイマジネーションで描かれた『天守物語』は、播州姫路城の天守に住んでいる妖精夫人・富姫の伝説をモチーフにしています。

いずれも、美しい妖魔と醜い人間との対比がポイント。傑作戯曲と謳われることもあり、泉鏡花にはじめて挑戦する方にもおすすめです。

日本橋

岩波書店 著者:泉鏡花

日本橋

泉鏡花が、当時の自然主義者流の肉欲的恋愛観を批判して執筆した作品。1929年と1956年に実写映画化されています。

紅燈の巷が舞台。そこに生きる女性の姿を描いています。すぐれた文筆家である泉鏡花の文章を堪能できるのが魅力です。

肉体的ではなく、精神的で観念的な繋がりを大切にしていた泉鏡花の恋愛観を感じてみてください。

草迷宮

岩波書店 著者:泉鏡花

草迷宮

泉鏡花ならではの迷宮世界を展開している作品です。「毬つき唄」をテーマに語りの時間や空間が重なり合って、不可思議な世界観を構築しています。

幼い時代に亡き母が歌ってくれた手毬唄に思いを巡らす青年。母との思い出として耳の奥に残るあの懐かしい唄をもう一度聞きたいと、唄を捜し求めて彷徨っていました。たどり着いたのは、妖怪に護られた美女が棲む屋敷で…。

本作品は、1983年に実写映画化されています。泉鏡花作品のなかでも難解といわれており、しっかりと向き合う作品を探している方におすすめです。

湯島詣 他一篇

岩波書店 著者:泉鏡花

湯島詣 他一篇

貧乏な生まれの秀才・神月梓と、芸妓・蝶吉の2人の出会いと行く末を描いた表題作含む2編で構成された作品。『湯島詣』は、著者の作品のなかでも特に切なさを感じられます。

表題作は、世間の荒波に耐えてきた蝶吉が、華族の令嬢を妻にした神月梓と恋に落ちる作品。梓は妻を捨てて蝶吉を選び、心中することを選びました。一方、『葛飾砂子』は、亡くなった役者の浴衣を川に流して供養しようとする下町娘と、世俗から離れた老船頭を描いた人情物語です。

悲しい物語の『湯島詣』と、ぬくもりのある『葛飾砂子』のコントラストも印象的な1冊。著者の作風の広さを体感したい方にもおすすめです。

鏡花短篇集

岩波書店 著者:泉鏡花

鏡花短篇集

現実と非現実が入り混じった泉鏡花の世界観を堪能できる作品集。著者の魅力をより楽しめる短編を9編収録しています。

収録作品は、『竜潭譚』『国貞えがく』『二,三羽――十二,三羽』など。紀行文と小説で構成されています。美しい語り口と、情景を鮮明に想像させる文章力を体感したい方におすすめです。

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