後味の悪さが魅力のミステリー「イヤミス」を多く発表してきた小説家「沼田まほかる」。56歳でのデビュー後、映画化もされた『ユリゴコロ』の注目をきっかけに、「まほかるブーム」を巻き起こした人気作家です。

今回は、沼田まほかるが手掛けた小説を、おすすめのポイントともに詳しくご紹介。デビュー作から映画化された人気作まで、それぞれの魅力を解説します。ぜひ、手に取る際の参考にしてみてください。

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後味の悪さが魅力のイヤミスの女王「沼田まほかる」とは?

沼田まほかるは、1948年大阪府生まれの小説家です。離婚を経て実家の寺で僧侶になったあと、建設コンサルタントの会社を設立。しかし、その会社も倒産するなど、波乱の人生を送ってきました。

1985年から大阪文学学校に3年間通い、2004年『九月が永遠に続けば』でホラーサスペンス大賞を受賞。56歳という遅咲きで、作家デビューを果たします。

作家としての転機は、2012年に大藪春彦賞を受賞した『ユリゴコロ』の刊行でした。同作品が話題になると同時に、それまでの既刊も相次いで増刷。”出版界の事件”とまでいわれるほどの、「まほかるブーム」を巻き起こします。

複数の作品が映画化されており、その作風から、湊かなえや真梨幸子に並ぶ「イヤミスの女王」として人気を集める作家の1人です。

沼田まほかる作品の魅力

沼田まほかる作品は、後味の悪さが魅力のミステリー「イヤミス」に分類される作品が多いのが特徴。特に沼田まほかるのイヤミスでは猟奇性や異常性などを抱えた登場人物が多く、読んでいる途中にも陰鬱とした雰囲気が漂います。

しかし、そんな人間の心の闇を、深い洞察力で生々しく表現しているのが沼田まほかる作品の魅力です。高い文章力によって書かれる迫真の心理描写には、怖いモノ見たさで読み進めてしまうような引力があります。

また、沼田まほかる作品では、どこか現実味のある、じっとりとした恐怖を味わえるのもポイント。リアリティのある狂気が、予想もつかない展開を演出し、後を引く怖さを読者にもたらします。

イヤミスが好きな方や、人の心の闇が巻き起こすサスペンス小説を読んでみたい方におすすめの小説家です。

沼田まほかるのおすすめ小説

ユリゴコロ

双葉社 著者:沼田まほかる

ユリゴコロ

“まほかるブームを生んだ超話題作”と銘打たれる、沼田まほかるの代表作。2012年に大藪春彦賞を受賞し、本屋大賞にもノミネートされました。2017年に映画化もされ、累計部数40万部を突破した恋愛ミステリー小説です。

亮介は実家で偶然、「ユリゴコロ」と題されたノートを見つけます。そのノートには、殺人に取り憑かれた人間の生々しい告白文が綴られていました。内容は果たして創作なのでしょうか、事実なのでしょうか。

しかし、誰が書いたかもわからない謎のノートは、亮介たち一家の過去にまつわる驚愕の事実を孕んでいました。

殺人を心の拠り所にして生きてきた殺人犯の手記を主軸に、過去と現在が交錯しながら真実を描き出していきます。ちりばめられた謎が、圧倒的な筆力の高さで繋がっていく様も見どころ。沼田まほかるのイヤミスを読んでみたい方に、おすすめの人気作です。

彼女がその名を知らない鳥たち

幻冬舎 著者:沼田まほかる

彼女がその名を知らない鳥たち

“最低な大人たちによる、最高に美しい恋愛ミステリー”と謳われ、2017年に映画化もされた、沼田まほかるの長編小説。歪んだ共依存関係にある男女を中心に、究極の愛とはなにかを問いかける衝撃作です。

8年前に別れた黒崎を忘れられない十和子は、人生をあきらめた中年男・陣治と寂しさから一緒に暮らしはじめます。陣治を激しく嫌悪しながらも離れられない十和子。そんななか、“黒崎が行方不明だ”と知らされた十和子は、陣治が彼を殺したと疑いはじめ…。

それぞれに不快感を覚えるような登場人物たちにもかかわらず、陰鬱な雰囲気にだんだんと引き込まれていく読者も多い本作品。衝撃のラストを含め、さまざまな感情に心を揺さぶられる、おすすめの沼田まほかる作品です。

痺れる

光文社 著者:沼田まほかる

痺れる

日常のすぐ隣にありそうなリアルな恐怖を描いた、沼田まほかるの短編集です。心にまとわりついて離れない、悪夢のような独特の世界観の短編が揃っています。

老年を迎えつつある女性が、心の奥底にしまい続けてきた暗い秘密を独白する『林檎曼荼羅』。別荘地での暮らしに迷い込んできた息子のような歳の青年に、不穏な衝動を抱く中年女性を描いた『ヤモリ』など、9編を収録しました。

痺れるような不気味さ、後味の悪さが魅力的な本作品。どの短編も読み進めるにつれて、人間の心の闇や狂気がじわじわと浮き彫りになります。それぞれの物語は短い短編集なので、沼田まほかる作品を初めて読む方にもおすすめの1作です。

九月が永遠に続けば

新潮社 著者:沼田まほかる

九月が永遠に続けば

沼田まほかるが2004年度のホラーサスペンス大賞を受賞した、長編サスペンス小説。果てしない心の闇の暗さと美しさを克明に描き、読書界を震撼させた傑作です。

高校生の一人息子の失踪、愛人の事故死、別れた夫・雄一郎の娘の自殺。佐知子の周囲の人々に、次々と不幸な出来事が襲いかかります。さらに、息子の行方を探すなかで明らかになった、雄一郎とその後妻の忌まわしい過去が恐怖を増幅させるのでした。

ドロドロとした人間模様が絡み合いながら、二転三転する構成が見どころ。沼田まほかるの原点として楽しみたい方におすすめの小説です。

猫鳴り

双葉社 著者:沼田まほかる

猫鳴り

1匹の猫に関わるさまざまな人々を、濃密な筆致で描いた長編小説。子猫の頃から最期までを、3部構成で繊細に表現した沼田まほかるの名作です。

流産の悲しみに暮れていた夫婦が飼い始めたのは、1匹の捨て猫でした。「モン」と名付けられた猫は、夫婦や思春期の闇にとらわれた少年の心に、不思議な存在感で寄り添います。やがて20年の歳月が過ぎ、モンは最期の日々を迎えます。

懸命に生きる猫との交わりを通して、生死や老いについて深く考えさせられる沼田まほかる作品。登場人物たちが心の闇に囚われる一方で、物語に共通する猫の存在が光として際立ちます。猫の生き様から多くのことを学べる、おすすめの感動小説です。

アミダサマ

光文社 著者:沼田まほかる

アミダサマ

集落へやってきた謎の美少女と、その周囲で次々と発生する怪事件を描いた沼田まほかる作品。“まほかるワールド全開の、サスペンス長編!”と銘打たれる、ホラーサスペンス小説です。

産廃処理場に捨てられた冷蔵庫の中で発見されたのは、「ミハル」という名の死にかけた幼女でした。住職・浄鑑が彼女を引き取ると、やがて寺が存在する集落では凶事が立て続けに発生。人々の間に邪気が増殖していきます。果たしてミハルは一体何者なのか…。

僧侶だった沼田まほかるらしい、仏教的な世界観が魅力の1作。日常が徐々に狂っていく集落の様子から、ゾクゾクとするような恐怖が読者を襲います。ファンタジーテイストなホラー小説が好きな方におすすめです。

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