17歳という若さでデビューした小説家「乙一」。デビュー以来、ホラー小説というジャンルに収まらない、独特な世界観の物語を発表してきました。複数の別名義で作風を使い分け、“天才”や“鬼才”とも称される人気小説家の1人です。

今回は、乙一が手掛けた小説から、おすすめの作品を独自のランキングにしてご紹介。乙一作品の特徴や魅力とともに名作をピックアップしたので、ぜひ参考にしてみてください。

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天才作家といわれる「乙一」とは?

乙一は1978年福岡県生まれの小説家・映画監督です。高等専門学校在学中の1996年に、『夏と花火と私の死体』でジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞。17歳という異例の若さで作家デビューしました。

2003年には『GOTH リストカット事件』で本格ミステリ大賞を受賞。『ZOO』など、多くの作品が映画化されています。また、人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』のノベライズも担当しており、2022年に最新作『野良犬イギー』が刊行されました。

一方で、乙一は「中田永一」や「山白朝子」といった、複数の別名でもデビューしている作家です。中田永一作『くちびるに歌を』は、2012年に小学館児童出版文化賞を受賞し、映画化もされています。

そのほか、本名である安達寛高として映画の脚本や監督も務めており、多方面でマルチな才能を発揮する天才作家の1人です。

乙一作品の特徴や魅力

斬新な設定で書かれる、ホラーテイストな物語に定評がある乙一。そのなかでも、残酷な描写が際立つグロテスクな作品から、切なさが胸を打つ感動作まで、多彩な作風が使い分けられているのが特徴です。

ファンの間では、作品の雰囲気によって2種類に分けられているのもポイント。猟奇的で嫌な読後感が残るサスペンス・ホラーは「黒乙一」作品、物悲しさを感じる繊細で美しい物語は「白乙一」作品と呼ばれて親しまれています。

残酷さとあたたかさが入り混じるような、独特の世界観が魅力の乙一作品。短編集も多く、文体も平易で読みやすいので、小説を読み慣れていない方や中学生にもおすすめの小説家です。

乙一のおすすめ小説ランキング

第1位 失はれる物語

KADOKAWA 著者:乙一


失はれる物語

“乙一の里程標”として読者からの評価も高い、全8編の短編集です。文庫版では、絵本としても展開されている『ボクの賢いパンツくん』を初収録。『手を握る泥棒の物語』は2004年に映像化もされています。

交通事故によって全身不随になり、右腕の皮膚感覚以外すべての感覚を失くしてしまった私。ピアニストの妻はその右腕を鍵盤に見立てて、日々の想いを演奏で伝えてくれます。それは変わらない日常を過ごす私の、唯一の救いとなりますが…。

表題作の『失はれる物語』をはじめ、何かを失った人々の姿が共通して描かれるのが特徴。ほの暗い不思議な雰囲気のなかに、胸を打つあたたかさや切なさを感じられます。ホラー小説が苦手な方や、普段小説を読み慣れていない方にもおすすめの乙一作品です。

第2位 ZOO 1

集英社 著者:乙一


ZOO 1

2004年に山本周五郎賞の候補作品にも選出された、乙一の傑作短編集です。文庫化にあたって、全10編を2作に分冊。本作品では、2005年に映画化もされた5つの短編が収録されています。一部の作品は漫画化もされました。

双子の姉妹にもかかわらず、なぜか姉のヨーコだけが母から虐待される『カザリとヨーコ』。謎の犯人に拉致監禁された姉と弟が脱出をはかる『SEVEN ROOMS』など、“ジャンル分け不能”とも評される多彩な物語が揃っています。

グロテスクなミステリーから、心あたたまる感動作まで、乙一が描く斬新な世界観を存分に味わえる本作品。どれもテイストが異なる点もおすすめです。

第3位 暗いところで待ち合わせ

幻冬舎 著者:乙一


暗いところで待ち合わせ

盲目の女性と殺人事件の容疑者による異色の同棲生活を描いた、乙一の名作長編小説。2006年に映画化もされた、ハートフル・ミステリーです。

殺人事件の犯人として追われるアキヒロが逃げ込んだのは、視力をなくし、独り静かに暮らすミチルの家でした。他人の気配に怯えるミチルは、身を守るため、知らないふりをすることを決意。始まった奇妙な同棲生活は、一切の会話もなく進んでいきますが…。

2人のそれぞれの視点から語られる本作品は、互いの心情の変化とともに、ホラーチックな導入から少しずつ様相を変えていきます。他者と関わる素晴らしさを静かな物語を通して教えてくれる、おすすめの1作です。

第4位 GOTH 夜の章

KADOKAWA 著者:乙一

GOTH 夜の章

By: rakuten.co.jp

2003年度の本格ミステリ大賞を受賞した『GOTH リストカット事件』が、『GOTH 夜の章』『GOTH 僕の章』に分けて文庫として刊行されました。漫画化ののち、2008年に映画化もされた乙一の代表作です。

森野夜が拾ったのは、近頃騒がれている連続殺人犯の日記帳でした。女性が山奥で切り刻まれていく過程が記された日記帳から、警察も未発見の犠牲者がいると推測する森野。“彼女に会いにいかない?”と、森野は未発見の死体の見物に「僕」を誘うのです。

人間の残酷な面を覗きたがる、猟奇趣味を持った高校生が主軸の連作短編集。上巻にあたる本作品では、「夜」に焦点をあわせた3つの短編が収録されています。ゾッとするようなダークな世界観のミステリーを読んでみたい方に、おすすめの乙一作品です。

第5位 天帝妖狐

集英社 著者:乙一

天帝妖狐

乙一のデビュー2作目にあたる作品集。『天帝妖狐』『A MASKED BALL』の中編2作が収録されています。学校のトイレの落書きやコックリさんなど、身近な題材を乙一らしい筆致でダークなホラーに仕上げた人気作です。

行き倒れそうになっていた謎の青年・夜木。顔中に包帯を巻き、素顔を決して見せない夜木でしたが、彼を助けた純朴な少女・杏子とだけは心を通わせるようになります。しかし、やがて夜木を凶暴な事件が襲い、謎に満ちた素顔が明らかになるのです。

どちらの作品も、得体のしれないものへの恐怖心を巧みに描いているのが特徴。不吉な予感が徐々に迫るゾクゾクとした感覚とともに、切なく美しい余韻にも浸れます。日常と隣り合わせの非日常を楽しめる、おすすめのホラー小説です。

第6位 夏と花火と私の死体

集英社 著者:乙一

夏と花火と私の死体

乙一のデビュー作である『夏と花火と私の死体』と、短編『優子』の2作が収録されている乙一作品。斬新な語り口でホラー界を驚愕させた表題作は、1996年にジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞しました。

9歳の夏休み、殺されてしまった少女。その死体をめぐって、幼い兄妹の悪夢のような4日間の冒険が始まります。死体の隠し場所に悩み、大人たちの追求が迫るなか、子どもたちはどのようにこの危機を乗り越えるのでしょうか。

田舎の夏休みというノスタルジーを感じる舞台設定のなかで、死体の隠蔽をはかる子どもたちの残酷さが不気味に際立ちます。ハラハラとした緊張感のある展開も見どころ。一気読みした読者も多い、おすすめのホラーサスペンス小説です。

第7位 暗黒童話

集英社 著者:乙一

暗黒童話

死者の眼球が記憶を呼び覚ます、乙一のホラー小説です。乙一にとって初の長編小説。「黒乙一」のなかでも人気が高い1作です。

女子高生の「私」は事故で記憶と左眼を失い、臓器移植で死者の眼球の提供を受けます。やがて見覚えのないさまざまな風景を、私の脳裏に映すようになる左眼。それは、眼の提供者が見てきた風景の「記憶」だったのです。眼の記憶に導かれて、私は提供者が生前住んでいた町をめざして旅に出ますが…。

グロテスクな描写が目を引く本作品は、二転三転する構成や展開が読めないミステリー要素も見どころ。暗黒の世界観にもかかわらず、読後には不思議な余韻を感じるという、乙一作品の魅力に溢れたおすすめの小説です。

第8位 平面いぬ。

集英社 著者:乙一

平面いぬ。

“天才・乙一のファンタジー・ホラー傑作集”と謳われる短編集。表題作含め、4編が収録されています。

肌に棲む犬と少女の不思議な共同生活を描いた『平面いぬ。』のほか、見た者を石に変えてしまう魔物の怪異譚『石ノ目』など、ファンタジーにホラーを織り交ぜた作品が楽しめる作品です。

どれもホラー小説らしい不気味な設定のなかに、物悲しさやあたたかみを感じる読後感が魅力。一筋縄ではいかない、意外性のある展開も楽しめます。ホラー小説初心者の方や、中学生にもおすすめの乙一作品です。

第9位 小説 シライサン

KADOKAWA 著者:乙一

小説 シライサン

とある怪談話をめぐるノンストップホラー長編作。安達寛高名義で乙一本人が監督を務めた、2020年の映画『シライサン』の原作小説です。乙一名義では4年ぶりに書き下ろされ、漫画化もされています。

眼球破裂で死亡した親友の変死を目撃した女子大生・瑞紀と、同じように弟を亡くした青年・春男。異様な死の真相を探るなかで、事件の鍵を握る詠子から知らされたのは、死んだ2人が旅行先でとある怪談話を聞いたという共通点でした。

聞いた人間が呪われるという、怪談の恐怖を描いた本作品。“後味が悪いものが好き”だという乙一らしい、後を引く恐怖を体感できます。日本的な王道ホラー小説が好きな方におすすめです。

第10位 Arknoah1 僕のつくった怪物

集英社 著者:乙一

Arknoah1 僕のつくった怪物

乙一が初めて描く長編ファンタジーシリーズの第1作目。本作品と『Arknoah2 ドラゴンファイア』の計2作が刊行されています。いじめられっ子の兄弟2人が織りなす異世界冒険譚です。

学校でいじめられている兄弟・アールとグレイは、父の書斎で見つけた絵本から、不思議な異世界「アークノア」に迷い込んでしまいます。元の世界に戻るためには、アークノアを破壊すべく現れた恐ろしい怪物を倒さなければならないのですが…。

個性的な登場人物と、奥深く作り込まれた舞台設定に惹きつけられる乙一作品。王道ファンタジーをベースに、少年たちの成長譚としても楽しめます。“乙一にしか書けない異世界ファンタジー”とも評される、おすすめの小説です。

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