濃密で甘美な恋愛小説が文学界に衝撃を与えた「山田詠美」。直木賞をはじめとする数々の文学賞を受賞したほか、『ひよこの眼』などの青春小説は教科書にも掲載されている、著名な作家の1人です。

今回は、山田詠美が手掛けた作品から、おすすめの小説やエッセイをご紹介。デビュー初期の作品だけでなく、新刊までおすすめ作品を幅広くピックアップしました。山田詠美作品を読んでみたい方はぜひ参考にしてみてください。

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恋愛小説で有名な直木賞作家「山田詠美」とは?

1959年生まれ、東京都出身の小説家・山田詠美。明治大学文学部在学中に、漫画家としてデビューします。大学中退後はアルバイトをしながら作家活動を続け、1985年『ベッドタイムアイズ』で文藝賞を受賞。小説家として衝撃のデビューを飾りました。

以降、『ジェシーの背骨』『蝶々の纏足』も同作品に続いて芥川賞の候補作に選出。受賞には至らなかったものの、1987年『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞を受賞します。

1989年『風葬の教室』で平林たい子文学賞、1991年『トラッシュ』で女流文学賞など、数々の著名な文学賞をデビューから立て続けに受賞。“大人の恋愛小説の名手”として、日本文学界に多大な影響を与えてきました。

また、2003年からは芥川賞の選考委員も務めており、次世代の作家の発掘などにも貢献している代表的な小説家の1人です。

山田詠美作品の特徴や魅力

男女の恋愛を繊細に生々しく描いた作風で、日本の文芸界に衝撃をもたらした山田詠美。特に初期の作品では、外国人との濃密な男女関係を描いたものが多いのが特徴です。異国文化に造詣が深い山田詠美ならではの視点を楽しめます。

恋愛小説が注目を集める一方、山田詠美作品は青春小説の人気が高いのもポイント。思春期の少年少女の複雑な心情を、巧みな比喩とともに表現した筆致は、村田沙耶香など著名な作家も魅了しました。複数の作品が、国語の教科書に教材として採用されています。

山田詠美作品は、どれも一般的な社会規範にとらわれない視点で描かれるのも魅力。言葉から湿度や質感を得られるような、感覚的で甘美な文体とともに、人々のモラルや倫理について問いかけます。

多様な価値観の恋愛小説や青春小説を読みたい方、作家の美しい文体に触れてみたいという方におすすめの小説家です。

山田詠美のおすすめ小説

ジェントルマン

講談社 著者:山田詠美

ジェントルマン

“読む人の価値観を揺るがす衝撃作”と謳われる山田詠美作品です。2012年に野間文芸賞を受賞しました。サイコパスな犯罪者と、彼に心酔する男の愛憎を描いた、衝撃のピカレスク恋愛小説です。

眉目秀麗、文武両道に加え、誰にでも好かれる優しさを持つ青年・漱太郎。そんな同級生のことを冷ややかな目で見ていた夢生は、ある日、漱太郎の悪魔のような本性を垣間見ます。

美しくも残酷な本性に魅入られる夢生。以来、漱太郎の罪を知るただ1人の存在として、彼を愛し守り抜くと誓うのですが…。

ゾクゾクするような緊張感とともに、登場人物それぞれのままならない愛の形を描いた長編小説。狂気的な恋愛小説やサスペンス小説が好きな方におすすめの、ダークな1作です。

ファースト クラッシュ

文藝春秋 著者:山田詠美


ファースト クラッシュ

山田詠美が「初恋」をテーマに、恋愛の醍醐味を描いたハードボイルド・ロマン小説。3姉妹が1人の少年に落ちる初恋の様子を、プラトニックに描いた意欲作です。

物語の中心は、裕福で優雅な生活を送る高見澤家。父・母・家政婦、そして個性的な3姉妹がともに暮らしています。そんな高見澤家にやってきた、母を亡くした少年・力。ひねくれた性格の力ですが、彼の魔性の魅力に3姉妹は恋に落ちるのでした。

3姉妹それぞれの視点で描かれていく本作品は、思春期の少女たちが恋愛する際の、繊細さや傲慢さなどのリアルな心理描写が見どころ。初恋の記憶がよみがえる、おすすめの恋愛小説です。

ぼくは勉強ができない

新潮社 著者:山田詠美


ぼくは勉強ができない

1996年に映画化もされた、山田詠美の人気作。自分なりの哲学を持っている高校生の主人公が、常識や偏見との間で悩みながら、物事の本質を問いかける連作短編集です。

主人公は17歳の男子高校生・時田秀美。勉強はできないものの、女性にモテるクラスの人気者です。ショット・バーで働く年上の恋人がいるなど、どこかクールな魅力を持つ彼は、窮屈な学校生活のなかで、周囲の人々の影響を受けながら成長していきます。

独特な思考を持ち、時には残酷なまでに正直に物事を語る秀美。彼の言葉に、自分の価値観や常識について改めて考えさせられます。勉強以上に大切なものを教えてくれる、大人にもおすすめの青春小説です。

放課後の音符

新潮社 著者:山田詠美


放課後の音符

“おとなを目指す女子のための恋活力向上小説”と銘打たれる、山田詠美の恋愛短編集。大人びた女子高生たちを主人公にした、8つの物語が収録されています。

大人でも子供でもない、多感な17歳の女子高生。背伸びした恋や、心のなかに留めてきた甘い感情、片思いのまま終わってしまった憧れなど、彼女たちの甘酸っぱくビターな心情を繊細に綴りました。

全力で恋する女子高生の儚さや危うさを、山田詠美の巧みな筆致で描き、みずみずしさも感じられる本作品。少し背伸びをしたような恋愛小説が読みたい高校生にも、おすすめの山田詠美作品です。

風味絶佳

文藝春秋 著者:山田詠美

風味絶佳

山田詠美の作家生活20周年で刊行された短編集です。2005年に谷崎潤一郎賞を受賞。2006年には『シュガー&スパイス〜風味絶佳〜』として映画化もされました。

鳶職の男性やゴミの清掃作業員など、どの物語にも肉体労働を仕事にする男性が登場。彼らとの恋愛模様や人間関係を描いた濃密な短編が、6編収録されています。

甘さだけでなくほろ苦さも感じるような、物語の多彩さが魅力。山田詠美の甘美な筆致と、技巧的な物語構成を存分に味わえます。“恋愛小説の名手”と呼ばれる山田詠美の、恋愛への鋭い眼差しや哲学に触れられるおすすめの短編集です。

蝶々の纏足・風葬の教室

新潮社 著者:山田詠美

蝶々の纏足・風葬の教室

By: shinchosha.co.jp

平林たい子文学賞受賞作『風葬の教室』を含む、3編を収録した山田詠美の小説集。少女が女性へと変化していく繊細な思春期の感性を、叙情的に描き出しました。『蝶々の纏足』は芥川賞の候補作にも選出されています。

転校生の少女は教室のなかで孤立し、陰湿ないじめを受けていました。絶望し、自殺か復讐を考えるほどに追い詰められていく少女。そんな状況で、少女は自分を辱めた同級生を、心の中で1人ずつ処刑していくのです。

山田詠美の文学的表現の豊かさが溢れる1作。作家の村田沙耶香も、高校時代に『風葬の教室』に出会ったことで“読書世界が変わりました”とコメントしています。高校生にもおすすめの小説です。

A2Z

講談社 著者:山田詠美

A2Z

山田詠美が、2000年に読売文学賞小説賞を受賞した1作。ダブル不倫をする夫婦を主軸に、大人の恋愛と結婚について描いた長編恋愛小説です。

年下の郵便局員・成生と恋に落ちた文芸編集者・澤野夏美。一方で夫・一浩も夏美に恋人の存在を打ち明けます。夫への複雑な思いを抱きながら仕事に情熱を注ぐ夏美に、新人作家・永山も思いを寄せており…。

各章、AからZまでの英単語が入っているという、ユーモアのある構成も見どころ。不倫小説ながら、さっぱりとした印象で楽しめたという読者も多い、おすすめの山田詠美作品です。

つみびと

中央公論新社 著者:山田詠美

つみびと

児童置き去り事件の本質に切り込んだ長編小説。山田詠美が実際の事件に着想を得て、その裏側をフィクションとして描いた迫真の1作です。2018年から日本経済新聞で連載小説として掲載されていました。

灼熱の夏、幼い子供2人を部屋に置き去りにし、ネグレクト死させた母親・蓮音。彼女は、なぜこのような痛ましい事件を起こすに至ったのでしょうか。蓮音と彼女の母、そして4歳の長男・桃太という3人の視点から、悲劇を浮き彫りにします。

山田詠美の豊かな想像力で、悲劇へ至る過程を丁寧に描き出した本作品。ノンフィクションのように感じるほどリアリティのある展開からは、社会のあり方について再考させられます。社会派な小説を読みたいという方におすすめです。

血も涙もある

新潮社 著者:山田詠美

血も涙もある

2021年に発売された山田詠美の作品。“私の趣味は人の夫を寝盗ることです”というセンセーショナルな一文から始まる本作品は、妻・夫・恋人という、不倫の三角関係から、人の数だけ存在する倫理観を掘り下げた恋愛小説です。

有名料理研究家・沢口喜久江の夫・太郎は、10歳年下で女性関係が絶えないイラストレーター。ある日、喜久江の助手・桃子が、太郎の恋人になります。

不倫関係にありながら罪悪感のない桃子と、古風な妻・喜久江。そして身勝手な太郎の歪な3人の関係性は、次第にユーモラスかつ残酷に、その様相を変えていくのでした。

3人を語り手として、視点を入れ替えながら進んでいく構成が特徴的な1作。それぞれの主観が、山田詠美らしいユーモアたっぷりに描かれています。読みやすく、爽快な読後感の山田詠美作品として、おすすめの小説です。

ベッドタイムアイズ・指の戯れ・ジェシーの背骨

新潮社 著者:山田詠美

ベッドタイムアイズ・指の戯れ・ジェシーの背骨

山田詠美初期の作品を収録した、おすすめの小説集です。1985年に文藝賞を受賞し、芥川賞の候補作にも選ばれたデビュー作『ベッドタイムアイズ』や、同じく芥川賞候補作の『ジェシーの背骨』を含む、山田詠美の名作3編を楽しめます。

クラブ歌手・キムと、黒人兵・スプーンの狂おしいほどの愛を描いた『ベッドタイムアイズ』、黒人ピアニストが愛と復讐を奏でる『指の戯れ』。そして、愛し始めた中年男性の連れ子に翻弄される『ジェシーの背骨』という、濃密な愛の物語を収録しました。

どの物語にも共通して、それぞれに黒人男性が登場するのがポイント。80年代当時の官能的な雰囲気を味わえます。山田詠美の原点を感じられる1作です。

ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー

幻冬舎 著者:山田詠美

ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー

山田詠美が1987年に直木賞を受賞した、同氏の代表作。8つのラブストーリーを収録し、“極上の恋愛小説集”と謳われる連作短編集です。1988年には、本作品をモチーフにして映画化もされています。

直木賞受賞時に大センセーションを巻き起こしました。初恋や喧嘩別れ、死別に旅立ちの日など、恋愛におけるさまざまなシーンを、ソウル・ミュージックの名曲タイトルとともに表現しているのが特徴です。

男女の性愛や情愛が、小気味よいテンポで描かれています。文体からスタイリッシュでセクシーな魅力が溢れる、おすすめの山田詠美作品です。

晩年の子供

講談社 著者:山田詠美

晩年の子供

“青春前期の憂愁を見事に描く山田文学の傑作”と謳われる、山田詠美の短編集。高校国語の教科書にも使用されてきた『ひよこの眼』『海の方の子』を含む、8編が収録されています。

季節はずれの転校生・幹生の目を見たとき、なぜか懐かしい気持ちになった中学生の亜紀。その感情の答えを探るため、亜紀は幹生を見つめ続けます。そんな亜紀の様子はいつしかクラス中の噂となり、好奇な視線が2人に向けられるのでした。

『ひよこの眼』をはじめ、多感な時期の少女特有の目線から、世の中のやるせなさや残酷さ、恐れを描いた物語を味わえます。青春期のノスタルジーを感じられる、大人にもおすすめの短編集です。

明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち

幻冬舎 著者:山田詠美

明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち

山田詠美が家族をテーマにした、愛惜の感動長編小説です。ステップファミリーを繋ぎ止めていた子供の死から始まる、家族の崩壊と再生を描き出しました。

それぞれに子連れの2組の親子は、澄川家として1つの家族になるため、東京郊外の一軒家に移り住みます。長男・澄生の気配りで、完璧な幸福を手に入れたかのように見えた家族。しかし、落雷によって澄生が急死したことによって、一家の姿は一変するのです。

家族の在り方について深く考えさせられる山田詠美作品。予想もつかないラストシーンも見どころになっています。人生にまつわる多くの名言が山田詠美の語り口で堪能できる、おすすめの1作です。

色彩の息子

集英社 著者:山田詠美

色彩の息子

「色」をモチーフに、人の複雑な心情を描いた短編集です。心の奥底に潜む目を背けたくなるような感情とともに、人間らしさを生々しいほどに暴き出しました。

澄み切った青い空気がただよう明け方、人の声に触れたくて、知らない誰かに電話をかける『顔色の悪い魚』。美人な妹と、頬にある黒子の有無で差別されて生きてきた『黒子の刻印』など、12の短編が収録されています。

山田詠美らしい流れるような筆致で書かれる物語は、どれもぞくりとするような狂気を感じる描写が特徴。短編それぞれの長さは短いので、隙間時間の読書にもおすすめの山田詠美作品です。

吉祥寺ドリーミン てくてく散歩・おずおずコロナ

小学館 著者:山田詠美

吉祥寺ドリーミン てくてく散歩・おずおずコロナ

山田詠美がコロナ禍をつづった新刊エッセイ集です。雑誌『女性セブン』の人気連載から、傑作エッセイ100編を厳選して収録しました。「言葉の小姑」を自認する山田詠美が、世間のさまざまな違和感に鋭く切り込みます。

身近な時事ネタに、優しく、時には厳しく言及していく山田詠美の語り口が見どころ。山田詠美自身の不要不急の愉快な日常についても描かれており、同氏への親しみを感じられる1作になっています。痛快さに溢れた、おすすめのエッセイ集です。

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