平成生まれで初めて直木賞を受賞した小説家「朝井リョウ」。直木賞受賞作の『何者』や『桐島、部活やめるってよ』など、現代の若者を中心に、時代を鋭く捉えたリアリティのある作風で話題を集める作家の1人です。

今回は、朝井リョウが発表した作品から、おすすめの小説やエッセイをご紹介。映像化された人気作から、話題の新作まで、朝井リョウ作品の魅力とともにピックアップしました。ぜひ参考にしてみてください。

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平成生まれの直木賞作家「朝井リョウ」とは?

朝井リョウは1989年、平成元年生まれの小説家です。岐阜県出身で、早稲田大学文化構想学部を卒業。大学在学中の2009年に執筆した『桐島、部活やめるってよ』で、小説すばる新人賞を受賞し、作家デビューしました。

作家デビュー後に就職活動をし、一般企業に就職。会社員として勤務しながら作家活動を続け、『何者』で直木賞を受賞します。男性としては戦後最年少かつ、直木賞史上初の平成生まれの受賞者として話題を集めました。

その後も、『世界地図の下書き』で坪田譲治文学賞、『正欲』で柴田錬三郎賞など、多くの作品で文学賞を受賞しています。

2016年には、英語圏最大の文芸誌『Granta』日本語版で、Granta Best of Young Japanese Novelistsに選出。日本はもちろん、海外でも注目されている若手作家の1人です。

朝井リョウ作品の魅力

朝井リョウ作品は現代の若者を中心に、その年代の特徴を鋭く捉えた人物描写に定評があります。フィクションながら、読者の実体験を思い起こさせるような、共感性の高い作風が魅力です。

また、10代をモチーフにした爽やかな青春小説だけでなく、社会の違和感を浮き彫りにするような重厚感のある作品まで、幅広く手掛けている朝井リョウ。どの作品も、現代に生きる人々の精神性をリアルに感じられるのが特徴です。

巧みな情景描写や比喩表現によって、自分の奥に潜む内面を突きつけられるような読書体験をする読者も多い朝井リョウ作品。社会や自分の生き方を見つめ直すきっかけを与えてくれる、おすすめの小説家です。

朝井リョウのおすすめ小説

何者

新潮社 著者:朝井リョウ


何者

第148回直木賞を受賞した、朝井リョウの代表作。累計部数は82万部を突破し、アナザーストーリー集『何様』も刊行されています。2016年に映画化されたほか、舞台化もされました。

主人公は、就職活動を始めた大学生の拓人。拓人は、同居人・光太郎、光太郎の元恋人・瑞月、瑞月の留学仲間で、拓人たちと同じアパートに住む理香、そして理香と同棲中の隆良を交えた5人で、理香の部屋に就活対策として集まるようになります。

協力関係にあったはずの5人。しかし、各々の就職活動が進むにつれて、SNSや面接で発する言葉に見え隠れする本音や自意識が、次第に彼らの関係を変化させていくのでした。

自分を模索し、「何者」かになろうとする学生をリアルな視点で描いている本作品。就活とSNSという題材を通して、人の奥底に潜む生々しい感情を突きつけられます。朝井リョウの鋭い観察眼を体感したい方におすすめの小説です。

桐島、部活やめるってよ

集英社 著者:朝井リョウ


桐島、部活やめるってよ

第22回小説すばる新人賞を受賞し、累計部数69万部を突破した青春群像小説。朝井リョウのデビュー作にあたる連作短編集です。2012年に映画化され、映画は日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞しました。

舞台は田舎の県立高校。高校生たちの学校生活に小さな波紋を及ぼしたのは、バレー部のキャプテンで学校の人気者・桐島の退部がきっかけでした。部活も、校内での立場も全く違う5人の物語がリンクしながら、瑞々しい青春のリアルが浮き彫りになります。

桐島の退部によって影響を受ける生徒たちの視点から描いていく構成が特徴。スクールカーストのさまざまな立場で揺れる高校生の心情が、緻密に表現されています。中高校生にもおすすめの朝井リョウ作品です。

正欲

新潮社 著者:朝井リョウ


正欲

朝井リョウの作家生活10周年を記念して執筆された長編小説。2021年に第34回柴田錬三郎賞を受賞し、2022年の本屋大賞にもノミネートされました。

妻と息子の3人で暮らす検事・寺井、寝具売り場で働く夏月、大学の学祭実行委員・八重子。一見関係のない人物たちの人生が次第に重なっていきます。「多様性」が賞賛される社会で、その枠にも入れないマイノリティの存在を描き出しました。

「多様性」という言葉の意味やあり方について、問題提起を突きつけられる1作。読後に冒頭の印象がガラリと変わる、秀逸な構成も見どころになっています。常識を覆されるような、社会派な小説が好きな方におすすめです。

もういちど生まれる

幻冬舎 著者:朝井リョウ

もういちど生まれる

2012年に直木賞の候補作にノミネートされた、朝井リョウの青春小説。朝井リョウ作品のなかでも人気が高い連作短編集です。

彼氏がいながら、他の人にも好意を寄せられている汐梨。美人の姉が大嫌いな双子の妹・梢。才能に限界を感じながらも、ダンスを続ける遥。異なる環境でそれぞれ必死にもがく5人の生き様を描きます。

夢や才能と、現実の間で揺れる若者の繊細な心情が、巧みに表現されているのがポイント。5人の人間関係が繋がりあう構成によって、それぞれの人物を多面的に表現しています。大学生にもおすすめの朝井リョウ作品です。

世界地図の下書き

集英社 著者:朝井リョウ

世界地図の下書き

第29回坪田譲治文学賞を受賞した、朝井リョウ渾身の1作。直木賞受賞後第1作にあたります。児童養護施設を舞台に、朝井リョウならではの筆致で「希望」を描いた、大人も子供も読める作品です。

両親を事故で亡くし、「青葉おひさまの家」で暮らしはじめた小学生の太輔。心を閉ざしていた太輔でしたが、次第に仲間たちと打ち解けていきます。やがて、施設を卒業することになった高校生・佐緒里のために、子供たちはある作戦を立てるのでした。

それぞれに事情を抱える子供たちの、痛みや苦悩を描きつつ、力強い希望も感じさせるメッセージ性が魅力的な1作。切なさやあたたかさに胸を打たれる読者も多い、おすすめの朝井リョウ作品です。

武道館

文藝春秋 著者:朝井リョウ

武道館

“朝井流社会派エンタメの傑作”と評される、朝井リョウの長編小説。自身もアイドル好きである朝井リョウが、現代のアイドルをモチーフに、現代社会の精神性を描き出した意欲作です。2016年にドラマ化もされています。

物語の主軸は、結成当初から武道館ライブを目標に活動してきた、女性アイドルグループ「NEXT YOU」。さまざまな手段で人気と知名度を上げていく彼女たちでしたが、注目が集まるにつれて、世間からの複雑な視線が向けられるようになるのです。

アイドルと1人の少女の間で葛藤し、揺れ動く心情を丁寧に描いている本作品。恋愛禁止ルールや特典商法など、現代のアイドルを取り巻くリアルな現状が詰まっています。アイドルファンはもちろん、アイドル文化に馴染みがない方にもおすすめの1作です。

少女は卒業しない

集英社 著者:朝井リョウ

少女は卒業しない

校舎の取り壊しが決まった地方の高校を舞台に、さまざまな想いを抱く7人の生徒たちの視点から卒業式の1日を描いた、珠玉の連作短編集。瑞々しい別れと旅立ちが詰まった、朝井リョウの青春小説です。

生徒会の女子生徒が、衝撃の「告白」ともいえる送辞を述べる『在校生代表』や、告白スポットになっている校舎の壁画に込められた、男子の想いを明らかにする『ふたりの背景』など、青春のきらめきを閉じ込めたような7編が収録されています。

限られた時間のなかで、一歩を踏み出す少女たちの勇気や、別れの切なさが繊細に表現されている朝井リョウ作品。高校生や、爽やかで甘酸っぱい小説を読みたい方におすすめの短編集です。

チア男子!!

集英社 著者:朝井リョウ

チア男子!!

朝井リョウの母校・早稲田大学の男子チアリーディングチームをモデルにした、青春スポーツ小説。デビュー作に続く、朝井リョウの2作目にあたります。2016年にアニメ化されたほか、実写映画化や舞台化もされた人気作です。

道場の長男として、幼い頃から柔道を続けてきた大学1年生の晴希。しかし、自分の限界を悟っていた晴希は、怪我をきっかけに柔道をやめることを決断します。そんな折、幼なじみで親友の一馬に誘われ、晴希は大学チア初の男子チームを結成することになり…。

個性的な登場人物たちのコミカルなやりとりとともに、それぞれに悩みながら成長していく姿に、リアルな熱量を感じられます。また、伏線などもある巧みな構成も見どころ。笑いと汗と涙が詰まった、読み応えのあるおすすめの青春小説です。

どうしても生きてる

幻冬舎 著者:朝井リョウ

どうしても生きてる

生きづらさを抱えながら生きていこうとする人々を描いた、朝井リョウの名作短編集。性別や容姿、雇用問題など、現代社会の問題を浮き彫りにする6編が収録されています。

妻の妊娠を口実に夢を諦め、仕事に邁進するも、仕事に誇りを見出せない『流転』。胎児の出生前診断をめぐる意見の食い違いで、夫婦喧嘩になる『籤』。どの物語も、さまざまな立場で感じるジレンマを、鋭く生々しい視点で描き出しました。

人間の本質や闇に触れながらも、思わず共感してしまうポイントが多くある本作品。人生の葛藤や苦しみにそっと寄り添う、おすすめの朝井リョウ作品です。

時をかけるゆとり

文藝春秋 著者:朝井リョウ

時をかけるゆとり

戦後最年少の直木賞受賞者である朝井リョウによる、初のエッセイ集。“圧倒的に無意味な読書体験”と銘打たれる本作品は、話題の小説と並ぶ朝井リョウの人気作です。

「ゆとり世代」である朝井リョウが、上京の日々やバイト、夏休み、就活や社会人生活など自身の経験について綴りました。同氏の観察眼を駆使して描かれる「ゆとり世代」に、切なさやおかしみを感じられる23編が収録されています。

朝井リョウの秀逸な言葉選びに、笑いが止まらなかったという読者も多いおすすめのエッセイ集です。人間味溢れる朝井リョウの筆致を、ぜひ味わってみてください。

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