理系知識を用いたミステリーに定評がある小説家「森博嗣」。『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞し、「理系ミステリィ」という新たなジャンルを確立させるなど、斬新な作風で知られる作家の1人です。

今回は、工学博士でもある森博嗣が手掛けた数多くの小説から、おすすめの作品をご紹介。映像化もされた人気のシリーズ作品から、読みごたえのある長編小説までピックアップしたので、ぜひ参考にしてみてください。

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理系知識を用いたミステリー作家「森博嗣」とは?

1957年愛知県生まれの森博嗣。工学博士でありながら、小説家でもあるという珍しい経歴の持ち主です。某国立大学工学部で助教授として研究するかたわら、趣味の模型制作の資金調達を兼ねて、小説を書き始めました。

1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞し、作家デビュー。理系知識を用いたトリックが話題になった本作品は、「理系ミステリィ」という新しいジャンルを確立させました。

かなりの多作で知られており、2022年4月時点で合計著作数は360冊を超え、累計部数1610万部を突破しています。小説のほか、エッセイや新書、写真集や詩集なども手掛ける多才な作家です。

森博嗣作品の魅力

森博嗣のミステリー小説は、工学や科学などの知識がトリックに使用されることが多いのが特徴。また、ミステリー小説以外でも、科学技術の進歩したSF小説など、理系的な要素を取り入れた知的で斬新な世界観が魅力です。

一方で、個性的なキャラクターやシュールなユーモアも、森博嗣作品の見どころ。哲学的な会話劇などもあり、理系知識に詳しくない方でも読みごたえのある作品が揃っています。

そして、森博嗣作品は多くがシリーズとして刊行されてきました。「S&Mシリーズ」など、これまでに10作品以上のシリーズを発表。シリーズ同士で関連性がある場合も多く、作品の繋がりを意識して読むことで、新事実や伏線などを発見できる楽しみもあります。

それぞれ単独作品、単独シリーズとしても楽しめるようになっているので、気になる世界観のものから手に取ってみるのがおすすめです。

森博嗣のおすすめ小説

すべてがFになる

講談社 著者:森博嗣

すべてがFになる

第1回メフィスト賞を受賞した、森博嗣のデビュー作であり代表作。「S&Mシリーズ」の第1作目にあたり、シリーズ累計発行部数は390万部を突破しています。アニメ化だけでなく、ドラマ化やゲーム化など多数のメディアミックスもされました。

研究室の旅行で、孤島のハイテク研究所を訪れたN大助教授・犀川創平と女子学生・西之園萌絵。研究所では天才工学博士・真賀田四季が、少女の頃から隔離された生活を送っていました。

しかし、そんな彼女の部屋からウエディングドレスを身につけ、両手両足を切断された死体が発見されます。犀川たちは、コンピューターに残されたメッセージを手がかりに、この不可解な密室殺人に挑むのでした。

理系要素を交えた緻密なトリックを用いた本作品は、“ミステリィの世界を変えた記念碑的作品”と謳われています。森博嗣の世界観を堪能するために、まず手に取りたいおすすめの1作です。

新装版 スカイ・クロラ The Sky Crawlers

中央公論新社 著者:森博嗣

新装版 スカイ・クロラ The Sky Crawlers

2008年にアニメ映画化もされた、森博嗣の人気作。森博嗣が“自分の本質に最も近い作品”とし、同氏の最高傑作と認めるシリーズ「スカイ・クロラシリーズ」の1作です。英訳本も出版されています。

物語は、戦争がショーとして成立している架空の世界が舞台。戦闘機のパイロットとして会社組織に所属するカンナミは、飛行機に乗り、敵の戦闘機を撃墜することを仕事としています。人を殺め続ける日常のなかで、彼は生死について思いを巡らせるのでした。

架空戦記でありながら、設定や背景描写をあえて詳細に記述しない、淡々とした詩的な世界観が特徴的な1作。登場人物たちの死生観や、世界観の謎に引き込まれる読者も多い、おすすめの森博嗣作品です。

黒猫の三角

講談社 著者:森博嗣

黒猫の三角

“森博嗣の新境地を拓く”と評された、全10作からなる「Vシリーズ」の第1作目。マンガ化されたほか、ドラマ化もされています。

1年に1度、決まった法則に従って殺人事件が発生。小田原静江にも、ターゲットと思わせる脅迫めいた手紙が届きます。依頼を受け、探偵・保呂草が阿漕荘に暮らす人々と桜鳴六画邸を監視するものの、衆人環視の密室で静江は殺されてしまうのでした。

密室殺人にまつわる謎解きの面白さはもちろん、個性的な登場人物たちが織りなす会話劇も見どころ。レトロな雰囲気が漂うミステリー小説が好きな方に、おすすめのシリーズです。

そして二人だけになった Until Death Do Us Part

講談社 著者:森博嗣

そして二人だけになった Until Death Do Us Part

密室で起きる連続殺人を描いた、森博嗣の傑作長編ミステリー。シリーズではない単独作品のなかでも、人気が高い森博嗣作品です。

途方もなく大きな橋の支柱にあたる、巨大なコンクリートの塊の中に、国家機密とされるシェルターがありました。この密室に滞在することになった6人の男女。密室で1人ずつ殺害されていくという痺れるような緊張感のなか、最後に2人が残りますが…。

テンポ良く進むハラハラドキドキとした展開に、読む手が止まらなかったという読者も多いミステリー小説。クローズドサークルものが好きな方におすすめです。ぜひ結末を予想しながら読んでみてください。

女王の百年密室 GOD SAVE THE QUEEN

講談社 著者:森博嗣

女王の百年密室 GOD SAVE THE QUEEN

科学技術が進んだ2113年の近未来を舞台に繰り広げられる、SFミステリー小説。3部作になっている「百年シリーズ」の第1作目にあたります。“森ミステリィの金字塔”として、マンガ化やラジオドラマ化もされました。

旅の途中で道に迷ったサエバ・ミチルと、ヒューマノイドのロイディは、高い城壁に囲まれ、100年閉ざされてきた街に辿り着きます。そこは、完璧な美しさを持つ女王によって統治される、楽園のような小都市でした。しかし、祝夜に殺人事件が発生し…。

独特の文化や死生観を持つ箱庭のような街という、ファンタジックな世界観が魅力的な本作品。二転三転する展開のなかで、生死や人間の尊厳など、倫理的な問いについても考えさせられます。森博嗣の哲学を味わえる、おすすめの小説です。

ヴォイド・シェイパ The Void Shaper

講談社 著者:森博嗣

ヴォイド・シェイパ The Void Shaper

全5作からなる「ヴォイド・シェイパシリーズ」の第1作目。山で育った純真な侍の青年が、旅のなかで成長していく様を描いた森博嗣の剣豪小説です。

親も知らず、理由も分からないまま山奥で育てられた青年・ゼン。師匠のカシュウが死に、ゼンは彼から譲り受けた1本の剣だけを持って旅に出ます。修行の旅路のなかで、ゼンは出会いと別れを重ねながら多くの学びを得ていくのでした。

初めて社会に触れる無垢なゼンと人々たちの、禅問答のようなやり取りを通して、気づきを得られるような読書体験を味わえる1作。時代小説に馴染みのない方にもおすすめのシリーズです。

喜嶋先生の静かな世界 The Silent World of Dr.Kishima

講談社 著者:森博嗣

喜嶋先生の静かな世界 The Silent World of Dr.Kishima

森博嗣の自伝的小説とされる、シリーズ外の長編作。学生が大学教授とともに研究に打ち込んだ日々とその後の人生を、淡々とした美しく静かな筆致で描いてます。

主人公は、文字を読むことが不得意で、勉強が大嫌いだった青年。彼の人生を変えたのは、大学4年生の時に配属された喜嶋研究室での出会いでした。学問の深みと研究の純粋さを描き、深く静かな感動に包まれる傑作です。

理系の学部における研究の道と現実を、覗き見るような感覚で楽しめるのがポイント。登場人物の人柄や学問に向かう姿勢に胸を打たれる読者も多く、青春小説として学生にもおすすめの森博嗣作品です。

探偵伯爵と僕 His name is Earl

講談社 著者:森博嗣

探偵伯爵と僕 His name is Earl

小学生の主人公が、少し不思議な大人・探偵伯爵とともに、行方不明事件を追跡する長編ミステリー小説。2004年に、児童向け小説として刊行された森博嗣作品です。

夏休み直前、公園で真っ黒な服を着た探偵伯爵と出会った新太。彼に興味津々の新太でしたが、夏祭りの夜に親友・ハリィが行方不明になってしまいます。その数日後には別の友達も失踪。さらには新太にも、犯人の影が忍び寄るのでした。

新太の平易な言葉で語られるひと夏の冒険譚ながら、ゾワゾワとした感覚も味わえる重厚感のある1作。子どもだけでなく、大人にもおすすめの小説です。

彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone?

講談社 著者:森博嗣

彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone?

「百年シリーズ」にも登場する人工生命体「ウォーカロン」を物語の主軸にした、SFファンタジー小説。全10作からなる「Wシリーズ」の第1作目です。

人工細胞で作られた生命体・ウォーカロン。“単独歩行者”とも呼ばれる彼らと人間との差はほとんどなく、簡単にその違いは識別できないものでした。ある日、ウォーカロンと人間を識別する研究に取り組む研究者・ハギリは、何者かに命を狙われます。

科学技術の発展により、生物としての人間の常識が覆されるようになった近未来を描いている本作品。未来を予見させるテーマ性もありつつ、ミステリー仕立てで読みやすい構成になっています。SFサスペンスが好きな方にもおすすめの森博嗣作品です。

少し変わった子あります

文藝春秋 著者:森博嗣

少し変わった子あります

不思議なレストランでの出来事を、上品な筆致で描いた連作小説。森博嗣が“今まで書いたもののなかでは、一番文学っぽい感じ”と評する、味わい深い1作です。

後輩が通っていたレストランを訪れる大学教授・小山。予約のたびに場所が変わり、店員は女将が1人だけという一風変わったその店は、なぜか毎回違う女性が食事に相伴してくれるのです。小山は戸惑いながらも、次第にその店に惹かれていきます。

一期一会の女性たちと食事していくという、単純な物語構成が特徴の森博嗣作品。しかし、主人公とともにのめり込んでいくような、幻想的な奥深さを感じられます。ぞくりとするような不思議な余韻に包まれる、おすすめの小説です。

まどろみ消去

講談社 著者:森博嗣

まどろみ消去

上品なユーモアと知的な謎を楽しめる、11の物語を収録した短編集。森博嗣の短編集としては第1作目にあたります。

大学のミステリィ研究会が企画した「ミステリィツアー」で、参加者は屋上で踊る30人のインディアンを目撃します。しかし、現場に行ってみると、そこには誰もいません。屋上への出入り口に立てられた見張りは、“何も見なかった”と証言しますが…。

「S&Mシリーズ」のスピンオフを含む、多彩で不思議な物語を集めた1作。森博嗣の斬新な世界観を存分に味わえます。シリーズ作品を読んだ方はもちろん、読んでいない方にもおすすめの短編集です。

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