革新的な警察小説を発表し続けている小説家「横山秀夫」。ミステリーにリアリティ溢れる人間ドラマを交えた作風で、警察小説の可能性を広げた日本を代表する作家の1人です。
そこで今回は、横山秀夫が手掛けた小説からおすすめの作品をピックアップ。映像化された傑作から、人気の短編集まで幅広く紹介します。おすすめのポイントや横山秀夫作品の魅力もあわせて解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
※商品PRを含む記事です。当メディアはAmazonアソシエイト、楽天アフィリエイトを始めとした各種アフィリエイトプログラムに参加しています。当サービスの記事で紹介している商品を購入すると、売上の一部が弊社に還元されます。
警察小説で人気の作家「横山秀夫」とは?
横山秀夫は、1957年東京都生まれの小説家です。国際商科大学(現:東京国際大学)を卒業後、群馬県の地方新聞社に入社。12年間、記者として勤務していました。
1991年『ルパンの消息』が、サントリーミステリー大賞の佳作を受賞し、新聞社を退社。しかし、同作はその時点で刊行には至らず、フリーライターとして漫画原作などを手掛けます。1998年に『陰の季節』で松本清張賞を受賞し、作家デビューしました。
その後、デビュー2作目の『動機』でも、2000年に日本推理作家協会賞短編部門を受賞。同作や『半落ち』は、直木賞の候補作にも選出されています。複数の作品が映画化やドラマ化もされました。
さらに、『64』が英国推理作家協会賞インターナショナル・ダガー賞の最終候補にノミネートされるなど、日本の警察小説の名手として、海外でも高い評価を受ける小説家の1人です。
横山秀夫作品の魅力
“警察小説の第一人者”として高い評価を集める警察小説はもちろん、感動の長編ミステリーなど、多彩な世界観の作品を発表している横山秀夫。巧みな伏線で描かれる物語のミステリー性と、リアリティのある人間ドラマが横山秀夫作品の魅力です。
横山秀夫はデビュー作『陰の季節』で、“警察小説ジャンルに新風を吹き込んだ”といわれています。刑事部の活躍が主流だったそれまでの警察小説において、裏方にあたる警務部の人物を主役にした斬新な視点は、高く評価されました。
そして、事件の解決のみを目的とせず、組織における複雑な心理戦などをあわせて描いているところも、横山秀夫の警察小説の特徴。記者時代に県警取材を担当していた同氏の経歴がうかがえる、説得力と迫力のある描写が見どころになっています。
本格ミステリーと職業小説の両方を楽しみたい方、読み応えのある短編集などを探している方に、おすすめの小説家です。
横山秀夫のおすすめ小説
半落ち
講談社 著者:横山秀夫
2004年に映画化もされた、横山秀夫の代表作。実直な刑事が起こした、嘱託殺人事件の真相に迫る犯罪ミステリーです。「このミステリーがすごい!」「週刊文春ミステリーベスト10」などで1位を獲得し、直木賞の候補作にも選出されました。
病を患う妻を殺害し、自首してきた現職警察官・梶聡一郎。動機も経過も明らかにする梶でしたが、殺害から自首までの2日間の行動だけは語ろうとしません。容疑について完全に自供してはいない「半落ち」状態の梶が、口を閉ざす理由は一体何なのでしょうか。
捜査官や検察官、裁判官など、捜査に関連する6人の視点からリレーのように事件を描いているのが特徴。深みのある人間ドラマに感動する読者も多い、おすすめの横山秀夫作品です。
64 上
文藝春秋 著者:横山秀夫
累計発行部数150万部を突破し、ドラマ化・映画化もされた横山秀夫のベストセラー小説。10年以上をかけて完成させたという本作品は、海外でも翻訳出版され、ドイツ・ミステリー大賞海外部門1位に輝くなど、国際的にも評価された警察小説です。
D県警広報官・三上義信は、一人娘が失踪中の元刑事。三上ら広報室が加害者の匿名問題で記者クラブと対立するなかで、時効が迫る重要未解決事件「64」の、警察庁長官視察が決定します。
昭和64年に起きた、”D県警史上最悪”といわれる児童誘拐殺人事件をめぐり、真っ向から対立する警務部と刑事部。その裏には数々の思惑が潜んでいたのでした。
組織との間でせめぎ合う個人の心情も緻密に描かれた、読み応えのある展開が見どころ。ミステリーとしてはもちろん、警察小説としても“最高峰”と謳われる、おすすめの人気作です。
クライマーズ・ハイ
文藝春秋 著者:横山秀夫
1985年の日航機墜落事故をベースに、当時、実際に記者として現場を取材していた横山秀夫が描く壮大なフィクション長編作。ドラマ化のほか、2008年には映画化もされました。
御巣鷹山で日航機が墜落。その日、同僚の安西とともに谷川岳に登る予定だった北関東新聞の記者・悠木は、事故の取材から出稿までを取り仕切る、全権デスクに任命されます。
取材で同行できなくなった悠木を置いて、1人で山に向かったはずの安西。しかし、彼はなぜか歓楽街で意識不明に陥っていたのです。地方新聞を直撃した未曾有の大事故に翻弄されながら、悠木は安西が何をしていたのかを知るのでした。
事故発生からの緊迫した7日間を、地方紙の記者の立場から描いているのが特徴の本作品。元記者である横山秀夫ならではの臨場感と、記者たちの葛藤などがリアルな描写で味わえます。濃密な職業小説として読みたい、おすすめの横山秀夫作品です。
第三の時効
集英社 著者:横山秀夫
2012年に「この警察小説がすごい! ALL THE BEST」で1位に輝いた、横山秀夫の連作短編集。ドラマ化もされた「F県警強行犯シリーズ」の第1作目にあたり、50万部を突破しています。
15年が経ち、ある殺人事件に迫る時効。しかし、事件後に容疑者が海外に滞在したため、7日間のタイムラグが生じていました。F県警の田畑たちは、この間に容疑者を追い詰めようと奮闘します。
捜査一課のエリートたちを主軸に、さまざまな事件を解決していく6編を収録。事件のミステリー性だけでなく、個性的な班長3人の活躍や派閥争いなども魅力的に描かれています。読み応えのある短編集を探している方におすすめの警察小説です。
ルパンの消息
光文社 著者:横山秀夫
横山秀夫がデビュー前に書いたという、幻の長編処女作。1991年にサントリーミステリー大賞で佳作賞に入選し、2005年に刊行されました。ドラマ化もされた、おすすめのサスペンス小説です。
警視庁に、“15年前、自殺とされた女性教師の墜落死は実は殺人”だという1本のタレ込みが入ります。当時、期末テストの奪取を計画した高校生3人が、校舎に忍び込んでいたのです。
捜査陣が2つの事件の結びつきを辿ると、戦後最大の謎までもが捜査線に浮上。時効まで24時間と迫るなか、警察は事件の解決に執念を燃やすのでした。
時効成立というタイムリミットがあるなかでの、緊迫した捜査模様が見どころ。巧みに張られた伏線によって、予想もつかない展開を楽しめます。数々の警察小説を手がけてきた、横山秀夫の原点として読みたい1作です。
陰の季節
文藝春秋 著者:横山秀夫
横山秀夫のデビュー作にあたる、4編の連作短編集。表題作『陰の季節』は1998年に松本清張賞を受賞し、直木賞の候補作にも選出されています。『64』につながる、「D県警シリーズ」の第1作目としてドラマ化もされました。
D県警警務部の二渡真治は、人事担当として天下り先のポストに固執する大物OB・尾坂部の説得にあたりますが、拒否されてしまいます。しかし、尾坂部の周囲を探っているうちに浮かび上がってきたのは、ある未解決事件の存在だったのです。
警察の管理部門を舞台に、濃密な心理サスペンスを味わえる横山秀夫作品。企業小説としてもおすすめの1作です。“警察小説の新たな面白さを見事に達成してみせた”といわれる横山秀夫の傑作短編集を、ぜひ堪能してみてください。
ノースライト
新潮社 著者:横山秀夫
“横山ミステリー史上、最も美しい謎”と謳われる、長編ミステリー小説。数々の国内主要ミステリーランキングで上位に輝き、2020年の本屋大賞にノミネートされました。ドラマ化もされています。
主人公は一級建築士・青瀬稔。信濃追分のY邸は、かつて依頼者の希望で青瀬が設計した最高傑作の家です。しかし、青瀬がY邸を訪れたところ、引き渡し以降一度も住まれた形跡がありません。
家には、伝説の建築家・タウトがデザインしたと思われる、一脚の椅子だけが残されていました。青瀬は建築家として、失踪した一家の行方と謎を追いかけます。
さまざまな出来事や謎が並行して展開されながら、胸を打つ人間模様が織り込まれた濃密な1作。殺人の起こらないミステリーが好きな方にもおすすめの職業小説です。
出口のない海
講談社 著者:横山秀夫
第二次世界大戦時に特攻兵として生きた青年たちを描く、横山秀夫の戦争青春小説。2006年に映画化されたほか、マンガ化もされました。
太平洋戦争末期、ひじの故障のために大学野球を棒に振った甲子園優勝投手・並木浩二は、人間魚雷「回天」への搭乗を決意します。発射と同時に死を約束される極秘作戦に、自ら命を預けた青年の意志とは何だったのでしょうか。
若者としての素顔を描きつつ、死と向き合わざるを得ない特攻兵たちの、苦悩や葛藤が切に伝わる本作品。戦争や人の尊厳について深く考えさせられます。高校生にもおすすめの横山秀夫作品です。
臨場
光文社 著者:横山秀夫
横山秀夫作品の連作短編集のひとつ。事件現場に臨み、初動捜査に当たる検視官を主人公にした、8編が収録されています。ドラマ化やマンガ化だけでなく、2012年には映画化もされました。
死者からのメッセージを的確に掴み取る捜査一課調査官・倉石義男。誰もが自殺や病死と疑わない事件を殺人と見破り、殺人の見立てを「事件性なし」と覆してきた凄腕の検視官です。「終身検死官」の異名を持つ男の、ストイックな生き様を描きます。
検視官として鋭い洞察力で、次々と難事件の真相を見抜いていく倉石の活躍に引き込まれる本作品。己の信念を貫く彼の姿勢に読者からの好感度も高く、ハードボイルドな警察小説が好きな方にも、おすすめの横山秀夫作品です。
動機
文藝春秋 著者:横山秀夫
2000年に日本推理作家協会賞短編部門を受賞した表題作を含む、横山秀夫のデビュー2作目にあたる短編集。『陰の季節2・動機』として、2001年にドラマ化もされています。
署内で一括保管されていた、30冊の警察手帳が紛失。犯人は一体誰なのか、県警本部警務課の企画調査官・貝瀬は1人で捜査を開始しますが…。
警察手帳紛失事件を描いた『動機』のほか、女子高生殺しの前科を持つ男が、匿名の殺人依頼電話に苦悩する『逆転の夏』や、公判中の居眠りで失脚する裁判官を描いた『密室の人』など、密度の高い4編の物語が収録されています。
刑事だけでなく記者や裁判官、元受刑者など、さまざまな立場の人々を主軸に、緊迫感溢れる展開が繰り広げられる横山秀夫作品。リアリティのある心情描写に、息が詰まるような読み心地を味わえる、おすすめの1作です。
横山秀夫の小説の売れ筋ランキングをチェック
横山秀夫の小説のランキングをチェックしたい方はこちら。
横山秀夫作品は物語の巧みな構成にくわえて、濃密な人間ドラマも見どころ。映像化された『半落ち』『64』や、読み応えのある物語が詰まった『第三の時効』などの、短編集から読むのがおすすめです。ぜひ本記事を参考に、横山秀夫の描く世界観に触れてみてください。