幻想的な作品を数多く執筆した「夢野久作」。夢と現実の境目があいまいになる不可思議な作風が特徴です。独特な世界観によって、一度読むと虜になってしまう方も少なくありません。
そこで今回は、夢野久作のおすすめ小説をご紹介します。難解といわれている代表作から、はじめて読む方にも向いている短編集までピックアップしました。ぜひ参考にしてみてください。
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幻想的な作風で人気の「夢野久作」とは?
夢野久作は1889年生まれの作家。出身地は福岡県で、本名は杉山泰道です。陸軍少尉や禅僧などを経験したあと、1926年に雑誌『新青年』に投稿した『あやかしの鼓』が入選。37歳で探偵小説作家としてデビューしました。
1935年、10年の構想を経て書き上げた『ドグラ・マグラ』は高評価を得て代表作に。幻想的な作品を多数執筆し、1936年に47歳で死去しました。
夢野久作作品の魅力
夢野久作作品の特徴は、独特の世界観が広がっている点です。「怪奇幻想小説の奇才」と称えられ、夢と現実の境目があいまいな作品を得意としています。
長編・短編を含め、多くの作品を残しているのも夢野久作の魅力。全集も刊行されており、余すことなく作品を楽しみたい方にはおすすめです。
なお、代表作の『ドグラ・マグラ』は「奇書」とも称され、夢野久作作品を読み慣れていない方には難解な作品。一方で、数ある短編はひきつけられる作品が多いのも特徴です。はじめて夢野久作作品に触れる方は、短編にも注目してみてください。
夢野久作のおすすめ小説
ドグラ・マグラ 上
KADOKAWA 著者:夢野久作
1935年1月に書き下ろし、自費出版された夢野久作の代表作です。1988年には実写映画化されています。「日本一幻魔怪奇の本格探偵小説」とうたわれた、歴史的一大奇書の1冊です。
精神医学や心理学の取材で頻繁に通っていた九州大学医学部の精神科が舞台。記憶喪失の主人公は、記憶を取り戻そうとしますが…。
狂人の書いた推理小説という舞台設定のなかで、著者の思想・知識がいかんなく発揮されています。独特な世界観なので、短編を中心に夢野久作作品をひと通り読んだ方におすすめです。
人間腸詰
KADOKAWA 著者:夢野久作
鳥肌が立つような恐怖世界を描き出す、夢野久作の短編集です。タイトルからして刺激的な作品。幻想的で猟奇的な作品が8編収録された作品です。
明治時代末期、大工・治吉はセントルイスで開催される大博覧会における仕事のため、アメリカへ旅立ちます。ある夜、美しい中国人女性に誘われた治吉は、不気味な地下室に連れ込まれてしまい…。
表題作は、女性に誘われた先で治吉が目にした衝撃の告白が見どころです。夢野久作の世界観を堪能できる作品。著者の作品にはじめて読む方にもおすすめです。
瓶詰の地獄
KADOKAWA 著者:夢野久作
読者を魔境へと誘う、夢野久作の世界観が楽しめる作品。『瓶詰の地獄』『死後の恋』など、全7編を収録した短編集です。
海難事故によって遭難し、南国の小島に流れ着いてしまう2人の兄妹を描いた表題作。兄妹は、一見すると楽園のような島で、世にも恐ろしい地獄に遭遇します。地獄の内容は、彼らの手によって流され、3つの瓶に収められた紙片に記されていました。
どの作品も、著者特有の狂気を垣間見られるのが特徴。現実と空想が入り混じったかのような雰囲気を味わいたい方におすすめです。
空を飛ぶパラソル
KADOKAWA 著者:夢野久作
著者らしい幻想世界を堪能できる作品。『空を飛ぶパラソル』『復讐』『いなか、の、じけん』など、インパクトのある全8編を収録した短編集です。
表題作では、新聞記者である「私」は、美しい女性が機関車にひかれる様子を目撃します。死体の身元を確かめようとすると、驚くべき事実が明らかになっていくのでした。
終始不気味な作風ながら、不思議と引き込まれてしまう夢野久作ワールドを堪能したい方におすすめです。
押絵の奇蹟
KADOKAWA 著者:夢野久作
夢野久作の中編小説を3本収録した作品集。表題作の『押絵の奇蹟』は、江戸川乱歩が「グッと惹きつけられてしまった…私は読みながら度々ため息をついた」と評価したことで知られる名作です。
表題作は、ある女性の出生に関する秘密の話。1902年、東京・丸の内演芸館で、美しいピアニスト・井ノ口トシ子が演奏中に血を吐いて倒れてしまいます。余命が短いことに気づいたトシ子は歌舞伎役者・中村半次郎に、自身の出生にまつわる秘密をつづった手紙を送りました。
表題作のほか、『氷の涯』『あやかしの鼓』を収録しています。推理・ホラー小説に精通した作家さえも感服させた作品を読んでみたい方におすすめです。
犬神博士
KADOKAWA 著者:夢野久作
世にも奇妙な冒険を描く夢野久作の作品です。計算されていながらも躍動感にあふれた筆致で、著者の傑作に数えられています。
舞台は北九州。踊りの名手で大道芸人の美少年・チイは逮捕されますが、うまく逃げ出します。さらに、賭博のいかさまを見破ったり、炭田の利権をめぐる抗争にも介入したりと動き回りました。
体制の支配に抵抗する民衆のエネルギーを描いている点が見どころ。大人たちを手玉に取るチイの活躍を通して、痛快な気分になれる作品でもあります。読んでいて気持ちのよくなる夢野久作作品を探している方におすすめです。
死後の恋 夢野久作傑作選
新潮社 著者:夢野久作
奇才・夢野久作が描く甘美と狂気を描いた作品。独特の世界観を有する著者の作品から厳選した短編集です。
ロシア革命直後のウラジオストックで、怪しい男がロマノフ王家の宝石に関する不思議な体験談を話す表題作の『死後の恋』。鼓作りの男性が好きな女性に贈った鼓によって引き起こされた事件がテーマの『あやかしの鼓』など、全10編を収録しています。
夢か現実か分からなくなる、夢野久作らしい世界観を堪能できるのが魅力。特徴的な世界観を描くイラストレーター・近藤聡乃が手がけた表紙にも注目してみてください。
日本探偵小説全集 4 夢野久作集
東京創元社 著者:夢野久作
夢野久作を代表する作品を収めた作品集。作家・森博嗣が「再読のときに、ある仮説を立てて読み進んだのですが、結末近くで躰が震えました」とコメントしています。
収録内容は、多くの読者が感嘆する『瓶詰の地獄』やラストシーンに定評のある『氷の涯』。著者の代表的長編である『ドグラ・マグラ』が1冊に収まっているのもポイントです。
夢野久作の世界観を存分に堪能できる3作品を収録している点が魅力。まずは著者を代表する作品から読みたい方におすすめです。
夢Q夢魔物語 夢野久作怪異小品集
平凡社 著者:夢野久作
夢野久作が描いた文豪怪異作品を独自の視点で編さんした小品集。「魔」「魅」「夢」「冥」「妄」に章立てされた内容構成で、さまざまな作品を楽しめるのが魅力です。
不安や恐怖を覚えつつも、夢うつつの感覚を体験できる夢野久作作品。「ある時は無垢なものに恐れをなし、ある時は他人事のような冷たさすら感じさせる」と評された、自分を見失ってしまうかのようなアンソロジーです。
さまざまな作品を残した夢野久作。テーマに沿って編集された作品を読みたい方におすすめです。
定本 夢野久作全集 1
国書刊行会 著者:夢野久作
没後80年記念出版で出版された夢野久作の作品。大量の新資料もあわせて収録した決定版の全集です。第1巻は初期作品に加え、1917年から1931年までの小説を楽しめます。
収録作品は、ほかの作品でも収録される代表作『瓶詰の地獄』『押絵の奇蹟』をはじめ、『或夜の夢』『人の顔』『月蝕』『死後の恋』『鉄鎚』『侏儒』など、全35編です。
ほかの作品集では、なかなか見かけない希少な作品も網羅している点が魅力。なお、本全集は全7巻構成です。夢野久作の作品をすみずみまで堪能したい方はチェックしてみてください。
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夢野久作作品は、幻想的な作風が魅力です。短編や中編も多く、各出版社が編さんした作品集も多数あります。はじめて挑戦する方は短編集、難解な作品に腰を据えて挑戦してみたい方には代表作の『ドグラ・マグラ』もおすすめ。夢野久作のすべてをすみずみまで楽しみたいなら、全集もチェックしてみてください。