感受性の豊かさと繊細な表現力が印象的な「川端康成」。美しい文章によって執筆された作品はどれも魅力的です。当時の日本文学に新しい風を巻き起こした作家です。
そこで今回は、川端康成のおすすめ小説をご紹介。教科書に採用された不朽の作品から、ノーベル賞を受賞した作品まで幅広く解説します。ぜひチェックしてみてください。
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日本文学を代表する作家「川端康成」とは?
川端康成は1899年に大阪で生まれ、東京帝国大学国文学科を卒業しています。1918年の秋に伊豆へ旅行したことをきっかけに、以降約10年間にわたって毎年伊豆湯ケ島に長期滞在をしました。
1921年には菊池寛の許しを得て、第6次『新思潮』を発刊。新感覚派の作家として個性的な作風を展開します。さらに、1968年にはノーベル文学賞を受賞。1972年4月16日、逗子にある書斎で自殺し、72歳で生涯を閉じました。
川端康成作品の魅力
川端康成の作品は、豊かな感受性と繊細な表現が特徴。日本人の心の精髄を海外の方にも理解できるように表現しており、ノーベル文学賞も受賞しました。
ときに高度な表現が難解な印象を与えることもあります。しかし、総じて表現の美しさを感じられるのが魅力のひとつです。新感覚派とも呼ばれる作風は、美や心理に対する感覚的な追求を重要視し、文学の世界に新しい道筋を生み出しました。美しい言葉で紡がれる作品を読みたい方は、ぜひチェックしてみてください。
川端康成のおすすめ小説
雪国
新潮社 著者:川端康成
哀しさのなかに、どこか美しさをたずさえた作品。川端康成が、才能を遺憾なく発揮して描き出した不朽の名作とうたわれています。2022年に実写ドラマ化されました。
親から譲り受けた財産によって自由気ままな生活を送っている島村。あるとき、雪深い温泉町で芸者・駒子に出会います。島村は婚約者のために働く駒子にひかれていきますが、必要以上に愛情を示すことはせず…。
冷たく澄んだ島村の心を通して映し出される駒子の強い想いが印象的な作品。川端康成作品を堪能したい方におすすめです。
山の音
新潮社 著者:川端康成
家族の姿を、父親の視点を通して描き出した川端康成の小説。日本特有な家族のあり方を捉えた、戦後文学の傑作ともうたわれています。
62歳の尾形信吾は、体力や記憶力の低下に老化を実感する日々。昔の恋人の面影がある息子の嫁・菊子に心が癒やされることもあった信吾でしたが、息子には愛人がいました。さらに、結婚して家を出ていった娘は孫を連れて実家に帰ってきます。
昭和の家族観が克明に映し出されているのがポイント。死・老化・不倫・離婚など、現代にも通じる家族や生の問題が描かれています。戦後間もない頃の、家族のありようを感じてみたい方にもおすすめです。
少年
新潮社 著者:川端康成
川端康成の原点を垣間見られるとして評価されている作品。著者の没後50年を記念して初めて文庫化されました。
青春時代の悩みを、50歳の川端が追想し書き進めることで物語は進行していきます。旧制中学の美しい後輩・清野少年に恋をしていた。お互いの体を許し合った震えるような時間を過ごしていくなか、突然の別れが訪れます。
自分はおかしいと考えていた著者が過ごした、かけがえのない日々を記している点が見どころ。より深く川端康成作品を理解したい方におすすめです。
伊豆の踊子
新潮社 著者:川端康成
主人公が過ごした青春の1ページを描いた、おすすめの作品。旧制高校生である主人公が孤独に悩み、伊豆へと旅立つことから物語は始まります。
旅の途中で旅芸人の一団と出会った主人公。団員のひとりである踊子に心をひかれていきます。清純無垢な踊子への想いを強くしていくなか、孤独にさいなまれていた主人公の心は、少しずつほぐれていき…。
著者の代表作として数えられる表題作は、川端康成作品を語るうえで欠かせない作品のひとつ。ほか、『禽獣』など3編を収録しています。
みずうみ
新潮社 著者:川端康成
美女に執着する元教師の狂気じみた愛を描いた川端康成の小説。優れた描写力によって描かれた不朽の名作です。
美しい少女を見ると、あとをつけてしまう男・桃井銀平。教え子と恋愛事件を起こしていますが、教師を辞めても美女への執着はなくなりませんでした。つけられることに快感すら覚える女の魔性と、罪悪感を覚えない男の欲望が交わった先に、どのような結末が待っているのでしょうか。
ストーカーを題材にした問題作ながら、共感を覚えると評価されています。著者の執筆力が人間の奥底に眠る変態性を明らかにしていく、おすすめの作品です。
古都
新潮社 著者:川端康成
川端康成作品において名作に数えられる長編小説。古都の深い面影や、移ろう四季の景色に浮かび上がる由緒ある場所を織り込み、美しい筆致で描いています。
捨て子であった千重子は、京の商家の一人娘として美しく成長。しかしある日、祇園祭の夜に自分とそっくりな村娘・苗子に出会い、胸が騒ぎます。2人は双子であることが判明しますが、環境の違いから一緒には暮らせませんでした。
運命に翻弄される双子や京都で暮らす人々の姿が描かれた作品。著者の豊かな表現力を味わいたい方におすすめです。
愛する人達
新潮社 著者:川端康成
さまざまな愛の形を川端康成の筆致で描き出した作品。円熟期の著者が、人生に対する限りない愛情を紡いだ9編からなる短編集です。
『母の初恋』では、主人公の雪子が母の死後、母の初恋の人・佐山に引きとられます。佐山を秘かに慕いながら、別の男・若杉のもとへ嫁いでいく雪子の切ない恋を描いている作品です。また、『夜のさいころ』では、サイコロを振る浅草の踊り子の姿を下町の風情のなかに描写しています。
ほかにも、『女の夢』『燕の童女』『ほくろの手紙』『夫唱婦和』などを収録。著者が嫌う男性をあえて登場させることで、作品中の女性の美しさを強調したといわれているおすすめの作品です。
女であること
新潮社 著者:川端康成
女性が女性を知る恐怖や、孤独と自負などを描いたおすすめの川端康成作品。女性の命の生々しさと美を克明に映し出しています。
女性としての理想像に近い弁護士夫人・市子や、市子を同性愛のように慕いつつも、それぞれの恋愛に熱中する若い女性たち。登場人物たちの、女性であるがゆえの行動や心理的葛藤を通して、女性の妖しさや哀しさが浮かび上がってきます。
女性の心理を繊細に描き出すことに定評のある川端康成の魅力が堪能できる点に注目。女性を主題にした作品を読みたい方におすすめです。
眠れる美女
新潮社 著者:川端康成
川端康成のエロティシズムが発揮された作品です。第16回毎日出版文化賞 文学・芸術部門を受賞。2007年に『眠れる美女』、2011年に『スリーピング ビューティー~禁断の悦び~』、2019年には『葬式の名人』として映画化されています。
表題作の舞台は、老人たちの逸楽をむさぼるためにある海辺の宿です。真紅のカーテンをめぐらせた部屋には、前後不覚に眠らされた裸形の若い女性。そして、若い女性の肉体を通して、訪れつつある死の相を凝視しようとする老人がいました。
ほかにも、『片腕』『散りぬるを』の計3編を収録。デカダンス文学の名作を楽しみたい方におすすめです。
掌の小説
新潮社 著者:川端康成
川端康成が40年にわたって書き留めた、短編を収録した作品集。122編を楽しめます。川端康成の世界観を凝縮している作品です。
自伝的要素を含む『骨拾い』は、両親を幼くして失った私が、祖父をひとりで介護しています。私が16歳になると祖父が亡くなり、火葬されますが…。
ほかにも、謎めいた少女が馬車を追いかける『夏の靴』や、『伊豆の踊子』の原型とも呼ばれている『指環』を収録。短くとも神秘的な作品を楽しみたい方におすすめです。
川端康成は、ノーベル文学賞を受賞した日本を代表する作家のひとりです。美しい筆致によって紡がれる繊細で感覚的な作風が特徴。教科書にも取り上げられるような不朽の名作から、あまり知られていない作品まで、多種多様な作品を執筆しています。情緒がある作品を読みたい方におすすめです。