宗教・テクノロジー・芸術など多様なテーマを取り上げる作家「篠田節子」。作品ごとに綿密な取材を行い執筆しています。サスペンスやホラー、コメディなどさまざまな要素を取り入れたエンターテインメント性の強い幅広い作風がポイントです。

今回は篠田節子のおすすめ小説をご紹介。文学賞を受賞した作品も多数ピックアップしました。篠田節子作品の魅力についても触れています。ぜひ参考にしてみてください。

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さまざまなジャンルを執筆する作家「篠田節子」とは?

篠田節子は1955年、東京生まれの小説家です。東京学芸大学を卒業後、東京都八王子市役所の勤務を経て1990年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞したことをきっかけに作家デビューしました。

1996年『神の座 ゴサインタン』で山本周五郎賞、1997年『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、2019年には『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。2020年には芸術文化分野などにおいて優れた業績を挙げた方にのみ授与される紫綬褒章を受章しています。

篠田節子作品の魅力

篠田節子は、多様なテーマで描かれたエンターテインメント性の高い作品を多く執筆しています。宗教・テクノロジー・民族・過疎化・芸術など、奥行きのある話題に対して、ていねいな取材を行っていくのも特徴です。

また、重いテーマを取り扱った作品でも、ホラーやミステリーなどのエンターテインメント性の強いエッセンスが入ることで、親しみやすい作風に仕上がっている作品も少なくありません。作品の数も多いので、楽しめる作品を探しやすい点も魅力のひとつです。

篠田節子のおすすめ小説

絹の変容

集英社 著者:篠田節子

絹の変容

篠田節子のミステリータッチで描かれた本格SF小説です。第3回小説すばる新人賞受賞作。著者の記念すべきデビュー作です。

不思議な糸を吐く野生の蚕を発見した長谷康貴。バイオ・テクノロジー技術者・有田芳乃と協力して蚕を繁殖させようとします。事業は順調に進んでいきましたが、やがて想定外の事件が巻き起こって…。

バイオ・テクノロジーが引き起こす恐怖が見どころ。生み出した技術を扱いきれずにパニックになってしまう、人間の無力さも痛感させられます。作品においてたびたび生物と人間のかかわりを取り上げる著者の、原点ともいえる作品に興味がある方にもおすすめです。

女たちのジハード

集英社 著者:篠田節子

女たちのジハード

男性が有利な社会で、自分たちの人生を切り開いていこうとする女性たちを描いた篠田節子の小説。第117回直木賞受賞作でもあります。中堅保険会社に勤める5人のOLが織りなす物語です。

条件のよい結婚をモノにしようと画策する美人のリサ。一方で紀子は、家事ができずに結婚に失敗してしまいます。仕事ができる有能なOL・みどりは会社を辞めざるをえなくなり、康子は自分の城を持つことに一生懸命。英語が得意な沙織は、スキルを活かして自立しようとしますが…。

表題の「ジハード」とは、イスラム教で自分たちの信念を守るための戦いを意味します。登場人物たちの「ジハード」の行く末から目が離せない作品。現代の働く女性とその生き方をテーマにした作品を読みたい方におすすめです。

鏡の背面

集英社 著者:篠田節子

鏡の背面

疑念が渦巻く女の園で巻き起こった事件を描いた長編サスペンスです。第53回吉川英治文学賞を受賞しています。筆者の洞察力が遺憾なく発揮されることで、人間の持つ本質に鋭く迫った作品です。

薬物や性暴力によってトラウマを持つ女性たちが集う「新アグネス寮」で火事が起こります。取り残された薬物中毒の女性と赤ちゃんを救うために死亡した女性「先生」こと小野尚子。しかし、死亡した女性は小野尚子ではないことが判明し…。

「先生」はいったい誰だったのでしょうか。さらに、先生を失ったことで崩れ始める新アグネス寮の行く末にも注目です。

神鳥イビス

集英社 著者:篠田節子

神鳥イビス

篠田節子が贈る、異色のホラー長編小説。とある絵に関する秘密を探るべく旅立った2人の男女が主人公の物語です。

27歳で謎の死を遂げた明治の日本画家・河野珠枝の「朱鷺飛来図」は、作者が死の直前に描いたとされる幻想画。絵に惹きつけられた女性イラストレーターとバイオレンス作家の男性は、作者の歩んだ道をたどることで絵に隠された秘密を探ろうとします。しかし、2人を待ち受けていたのは、地獄絵のような恐怖世界だったのです。

絵に隠されていた秘密に衝撃を受ける作品。ストーリーに魅了される篠田節子作品を読みたい方におすすめです。

弥勒

集英社 著者:篠田節子

弥勒

救済の意味を問いかける篠田節子の小説。恐怖と戦慄の世界を臨場感豊かに描き出した大作です。

新聞社に勤務する永岡は、妻の持っている櫛(くし)がヒマラヤの国パスキムの破壊された仏像の一部だと気づきます。じつは、仏像は5年前に1度目にし、感銘を受けたモノだったのです。政変のため寺院が崩壊したと聞いて、密入国を試みる永岡。僧侶たちは虐殺され都市は壊滅状態でした。やがて、彼も革命軍に捕らえられてしまい…。

古い慣習を捨て、理想郷を求めた人間たちがもたらした惨劇に注目。長編ですが、筆者の筆力によって最後まで一気に読めてしまう作品です。

レクイエム

文藝春秋 著者:篠田節子

レクイエム

現代人の抱える心の闇に迫る幻想世界を描き出した篠田節子の小説。6編の短編を収録した作品集です。

「腕を一本、芋の根元に埋めてくれ」という不可解な遺言を遺した伯父。謎の答えは遠い国の自然のなかに隠されていました。衝撃な事実に迫った表題作『レクイエム』。また、『コンクリートの巣』では幼児虐待の不気味さが描かれています。

短編はいずれも終始物悲しい雰囲気が漂う篠田節子作品を読みたい方におすすめです。

神の座 ゴサインタン

文藝春秋 著者:篠田節子

神の座 ゴサインタン

現代人の心の奥底と魂の再生をテーマにした篠田節子の小説です。著者の圧倒的な筆力を体感できる作品。第10回山本周五郎賞受賞作でもあります。

豪農の跡取り・結木輝和は、ネパール人のカルバナと結婚。しかし、両親が亡くなり、妻の奇妙な行動によって全財産すらも失ってしまうのでした。怒りや悲しみにさいなまれ、さまよいながらも失踪した妻を探して神の山ゴサインタンのふもとに辿り着き…。

長い旅路の末に訪れるラストシーンに注目です。

肖像彫刻家

新潮社 著者:篠田節子

肖像彫刻家

バツイチの彫刻家が起こす奇跡を描いた篠田節子の小説。彫刻に関する不可思議な出来事が巻き起こす人間模様を、ユーモラスに仕立てた作品です。

芸術家の道を諦めた中年男性・正道は、気持ちを切り替えるために八ケ岳山麓(さんろく)に移住。しかし、注文を受け彫刻した女神像は思わぬ場所に置かれてしまいます。それでも心をこめて彫像を掘り続ける正道でしたが、あるとき自分の造った像が喋りだすという話を聞いて…。

それぞれの特徴的な彫像を通して、珍現象がつぎつぎと起きていくのが見どころ。ほかの作品にはない雰囲気もあり、著者の作風の幅を実感できます。コメディ要素の強い篠田節子作品を読んでみたい方におすすめです。

仮想儀礼 上

新潮社 著者:篠田節子

仮想儀礼 上

教団を立ち上げた2人の男の物語を描いた篠田節子の作品。21世紀の黙示録的長編サスペンスと謳われています。第22回柴田錬三郎賞の受賞作です。

夢を追いかけて職を失った男・正彦と同じく職を失った・矢口は、金儲けのために教団「聖泉真法会」を創設。悩める女性たちの拠りどころに過ぎなかった集団は、インターネットを通して勢力を拡大します。やがて営利や売名を目論む人間たちの介入によって、さまざまなトラブルに巻き込まれていくのでした。

上下巻にわたる長編。信仰心のない人間が教祖と名乗った教団の行く末に注目してみてください。

ロズウェルなんか知らない

講談社 著者:篠田節子

ロズウェルなんか知らない

過疎化する地方の現実に直面した人々の奮闘を描く篠田節子の長編小説。故郷を救うために元若者たちが策をめぐらせていく様子が印象的な作品です。

温泉もなければ、ほかに観光名所があるわけでもない町・駒木野。女性が嫁いでくるわけでもなく、観光客も途絶えることで過疎化は進むばかりです。町の青年クラブのメンバーたちは、町の再生と同時に自分たちの人生にも希望を見出そうとしますが…。

「日本の四次元地帯」として町を再生しようとする登場人物たちの行く末に注目。自分自身の故郷と重ね合わせることで、より共感して読める作品です。