女性心理を鋭く突いた作風で、読者からの高い共感を集める小説家「柚木麻子」。山本周五郎賞を受賞した『ナイルパーチの女子会』のほか、『BUTTER』など数多くの作品が直木賞候補作に選出されています。

今回は、柚木麻子の小説からおすすめの作品をご紹介。幅広い世代が楽しめる、多彩な人気作をピックアップしたので、ぜひ参考にしてみてください。

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女性人気が高い女性作家「柚木麻子」とは?

柚木麻子は、1981年東京都生まれの小説家です。立教大学文学部フランス文学科を卒業し、洋菓子メーカー勤務などを経験。2008年に短編『フォーゲットミー、ノットブルー』でオール讀物新人賞を受賞し、作家デビューします。

『ナイルパーチの女子会』では、2014年度の山本周五郎賞、2015年度の高校生直木賞を受賞。2022年までに『本屋さんのダイアナ』や『BUTTER』など、5作品が直木賞の候補作に選出されています。

数多くのアンソロジーへの寄稿や、エッセイなども執筆。女性心理を的確にとらえた作風で、女性からの高い人気を集める女性作家の1人です。

柚木麻子作品の魅力

同性に対する嫉妬や羨望など、女性の複雑でさまざまな感情を鮮烈に描いているのが柚木麻子作品の特徴。柚木麻子自身が中高一貫の女子校に進学した経緯もあり、女子校を舞台にした作品や、女性同士の関係性に焦点を当てた作品を多数発表しています。

人物同士のリアリティのある関係性や心情描写に、共感する読者も多い柚木麻子作品。自分の秘めた感情を抉られるような読書体験も味わえます。

さらに、柚木麻子は高校生まで料理研究家を目指していたこともあり、料理にも造詣が深いのが特徴です。料理を物語の主軸にした作品も多く、思わず食べたくなるほど濃密な料理の描写も魅力。

女性同士の濃密な関係性に触れたい方、グルメ小説が好きな方におすすめの小説家です。

柚木麻子のおすすめ小説

BUTTER

新潮社 著者:柚木麻子


BUTTER

実際の事件と犯人をモチーフに描いた社会派長編小説の傑作であり、柚木麻子の代表作のひとつ。各紙誌で絶賛され、2017年の直木賞候補作にも選出されたおすすめの1作です。

結婚詐欺の末、男性3人を殺害した容疑で逮捕された梶井真奈子。週刊誌記者・町田里佳は、親友・伶子の助言を元に、梶井への面会取材を取り付けます。

取材を重ねるうちに、欲望に忠実な梶井の言動に翻弄されていく里佳。次第に、里佳の内面や外見も変貌していき…。

登場人物を通して、現代社会のさまざまな偏見やしがらみを認識させられます。濃厚なバターを思う存分味わいたくなるような、料理の描写も特に見どころの柚木麻子作品です。

ランチのアッコちゃん

双葉社 著者:柚木麻子


ランチのアッコちゃん

発行部数12万部を超えた、柚木麻子の人気作のひとつ。3作発表されている「アッコちゃんシリーズ」の第1作目にあたる短編集です。2017年の本屋大賞にもノミネートされました。

彼氏にフラれて落ち込み、食欲もなかった派遣社員・澤田三智子。そんな三智子に声を掛けたのは、通称“アッコ女史”こと上司の黒田敦子でした。“一週間、ランチを取り替えっこしましょう”と、彼女は三智子に持ちかけます。

提案に気乗りしない三智子。しかし、アッコ女史の風変わりなランチコースを巡るうちに、活力が湧いている自分に気が付きます。

表題作の『ランチのアッコちゃん』をはじめ、食とともに元気が湧いてくるような4編が収録。“読むとどんどん元気が出るスペシャルビタミン小説”と評される、おすすめの1作です。

本屋さんのダイアナ

新潮社 著者:柚木麻子


本屋さんのダイアナ

柚木麻子が描く、ガール・ミーツ・ガール小説。2014年に静岡書店大賞を受賞し、直木賞や本屋大賞にもノミネートされた人気作です。

矢島大穴(ダイアナ)は、名前や外見がコンプレックスで、幼い頃から肩身の狭い思いをしていました。しかし、小学3年生のときに出会った彩子と、本が好きという共通点で2人は唯一無二の親友になります。

中学校が離れて疎遠になってしまったダイアナと彩子。そんな2人が、少女から大人になる十余年の物語です。

生まれも育ちも正反対な少女たちが、互いに波乱を乗り越えながら、たくましく成長していく姿に注目。中高生にもおすすめの柚木麻子作品です。

あまからカルテット

文藝春秋 著者:柚木麻子

あまからカルテット

“美味しい探偵小説”と称される、柚木麻子のコメディタッチな連作短編集。性格も職種も違う女性たちの友情を、柚木麻子らしい美味しそうな料理とともに描いています。

女子高時代から仲のよい4人は、全員が30歳目前という人生節目のとき。恋も仕事も、それぞれに悩みを抱える彼女たちは、稲荷寿司やおせちなど料理をヒントにして、互いのトラブルを乗り越えていきます。

それぞれの短編ごとに、テーマの食べ物があるのが特徴の本作品。ちょっとしたミステリーを、4人の個性と友情で解決していく様は爽快感も味わえます。ハートフルな小説を読みたい方におすすめの短編集です。

ナイルパーチの女子会

文藝春秋 著者:柚木麻子

ナイルパーチの女子会

友達をめぐる大人の人間関係を描いた、柚木麻子の代表作。2014年度の山本周五郎賞受賞に続き、翌年には高校生直木賞を受賞しています。2021年にドラマ化もされました。

商社勤務の志村栄利子は、お気に入りの主婦ブロガー・丸尾翔子と出会って意気投合します。しかし、他人との距離感を上手くつかめない栄利子を、次第に拒否するようになる翔子。翔子に執着する栄利子は、同僚の男性に悩みを相談しますが…。

30歳同士で、同性の友達がいない女性たちを主人公に、こじれていく友人関係を巧みに描いているのがポイント。友情や他人との距離感に悩んだことのある方に、特におすすめの柚木麻子作品です。

終点のあの子

文藝春秋 著者:柚木麻子

終点のあの子

揺らぎやすい女子高生の友情を緻密に描いた、柚木麻子のデビュー作。2008年のオール讀物新人賞の受賞作『フォーゲットミー、ノットブルー』を含む、4編が収録された短編集です。

舞台はプロテスタント系の女子校。内部進学した希代子に入学式で声をかけてきたのは、高校から入学した奥沢朱里でした。海外暮らしが長く、風変わりな朱里が気になる希代子。しかし、一緒に昼ごはんを食べる仲になった矢先、希代子にある変化が訪れます。

憧れや嫉妬、見栄など、多感な女子高生の心理が的確に表現されており、共感する読者も多い柚木麻子作品。青春時代がよみがえるような読書体験がしたい方におすすめの青春小説です。

その手をにぎりたい

小学館 著者:柚木麻子

その手をにぎりたい

バブル期崩壊までの10年を舞台にした、柚木麻子の意欲作。高級鮨店の常連として通い詰めるため、東京で奮闘する女性が主人公の長編小説です。

25歳で会社を辞め、東京から栃木の実家へ帰る決意をした青子。しかし、送別会をかねて上司に連れられた銀座の高級鮨店で、青子はその店の味に衝撃を受けます。鮨店に自力で通うため、青子は一念発起して東京に残ることを決断するのでした。

女性としてしがらみの多いバブル期に、青子は仕事や恋に邁進しながら成長していきます。淡く切ない恋愛小説としても楽しめる、おすすめの柚木麻子作品です。ぜひ青子とともに、バブル期の空気感を味わってみてください。

嘆きの美女

朝日新聞出版 著者:柚木麻子

嘆きの美女

美醜をテーマに、女性たちの成長と友情を描いた柚木麻子の長編小説。2013年にドラマ化もされた、エンターテインメント性の高いおすすめの1作です。

引きこもり生活でネットに悪口ばかりを書き連ね、外見だけでなく性格もいわゆる“ブス”な耶居子。ある日、耶居子は美人ばかりがブログを公開している「嘆きの美女」というホームページを見つけます。

ある出来事をきっかけに、耶居子は「嘆きの美女」の美女たちと同居する羽目になり…。

美女を目の敵にしていた耶居子が、美女との同居を通して成長していく人間模様が見どころ。自分らしく生きていくことに自信や勇気をもらえる作品です。

王妃の帰還

実業之日本社 著者:柚木麻子

王妃の帰還

柚木麻子が、“はじめて中学生くらいの年代に向けて書いた”という長編ガールズ小説。2022年に舞台化もされています。

私立女子校中等部2年生の範子は、気の合う3人の仲間たちと、地味ながら楽しく平和な学園生活を送っていました。しかし、ある事件をきっかけにクラスカーストのトップ「姫グループ」から、王妃・滝沢さんが追われてしまいます。

成り行きでグループに滝沢さんを迎え入れるも、彼女の傍若無人な振る舞いに振り回される範子たち。平穏な日常を取り戻すため、範子たちはある計画を企てるのでした。

思春期の繊細な心情を味わえる本作品は、スクールカーストをめぐる騒動をフランス革命になぞらえているのが特徴。フランス文学科出身の柚木麻子らしさを楽しめる、大人にもおすすめのガールズ小説です。

さらさら流る

双葉社 著者:柚木麻子

さらさら流る

柚木麻子が“「性被害に遭った女の子がどう立ち直るか」というテーマを、じっくり書きたかった”という長編小説。被害者になった主人公が、自分の体と心を取り戻すべく奮闘する物語です。

かつての恋人に撮られた自分のヌード写真を、ネット上で偶然発見してしまった井出菫。親友や家族、弁護士に助けられながら、菫は写真を消去しようとします。同時に、菫は元恋人・光晴と過ごした日々や彼自身を思い出し…。

被害者の菫だけでなく、加害者である光晴の内面も描いているのが特徴の本作品。性被害を取り巻く現状や、問題点について深く考えさせられる点でもおすすめの小説です。

らんたん

小学館 著者:柚木麻子

らんたん

柚木麻子自身の母校、恵泉女学園の創立者・河井道をモデルにした、同氏初の大河小説。明治から昭和にかけて、女性教育の発展に尽力した河合道の生涯を、史実を元にフィクションとして描きました。

大正最後の年、天璋院篤姫が名付け親だという一色乕児は、渡辺ゆりにプロポーズします。しかし、ゆりは一色のプロポーズに対し、“シスターフッドの契りを結ぶ河井道と3人で暮らす”という、前代未聞の条件を提示するのでした。

河井道と一色、ゆりの歩みを主軸にしつつ、同時代を生きた多くの偉人たちが登場するのも見どころ。大正から昭和期の歴史が好きな方にも、おすすめの柚木麻子作品です。