記録文学の第一人者として活躍した「吉村昭」。太宰治賞をはじめとして数多くの文学賞を受賞しており、人間のさまざまな感情をリアルに伝える作風が特徴です。証言と史実を周到に取材した綿密な構成に定評があり、ノンフィクション小説や歴史小説を数多く執筆しています。
今回は、吉村昭のおすすめ作品をご紹介。文学賞の受賞作品はもちろん、テレビドラマ化された作品もピックアップしました。ぜひチェックしてみてください。
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ノンフィクション作品を多く手がける「吉村昭」とは?
吉村昭は1927年東京日暮里生まれの小説家です。配偶者は小説家の津村節子。1951年に三島由紀夫が携わっていた同人誌『赤絵』を引き継いでいます。
学習院在学中に執筆活動を開始し、1966年に『星への旅』で太宰治賞を受賞。1973年に『戦艦武蔵』で菊池寛賞、1979年に『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞を受賞しました。
さらに、『破獄』で読売文学賞および芸術選奨文部大臣賞を受賞。2006年7月31日に、尊厳死というかたちで人生の終わりを迎えています。
吉村昭作品の魅力
吉村昭は記録文学のパイオニアとして活躍した作家です。現場や証言、史料などを徹底した取材と細かく計算された構成に定評があり、記録文学や歴史文学を次々と発表しています。
1998年には『闇にきらめく』が今村昌平監督により『うなぎ』として映画化され、ベネチア国際グランプリで賞を受賞しています。「死とはなにか、生とはなにか」を主題に人間の本質を探求し、数多くの短編と長編を執筆しているのが吉村昭作品の魅力です。
吉村昭のおすすめ小説
関東大震災 新装版
文藝春秋 著者:吉村昭
菊池寛賞を受賞した吉村昭の小説。膨大な史料と体験談をもとに、20万人の命を奪った大災害を丹念に描いている名作です。
大正12年9月1日の午前11時58分、関東地方で大地震が発生しました。建物は崩壊し、直後に発生した大火災は東京・横浜を包囲。おびただしい死者を出した災害は、人々の混乱を呼び、次々に深刻な社会事件を引き起こしていきます。
震災の影響によって理性を失った人々の様子が、生々しく描かれている点がみどころ。過去に実際に起きた出来事を教訓にしたい方におすすめの1冊です。
漂流
新潮社 著者:吉村昭
江戸時代の史料にも残る出来事を元に書き下ろした長編。生存の秘密と壮絶な生きざまを描いた感動作です。
江戸時代、シケに遭い黒潮に乗ってしまった男たちは絶海の無人島に漂着。水もなく生活の手段がない島で仲間は次々に倒れていきます。そんななか、土佐の船乗り・長平だけは生き残り、12年の苦闘の末に生還するのでした。
自然の力は強大で、人間ひとりの力など小さなモノでしかないと突きつけられる作品。実話を元にしていると信じられなくなる壮絶な展開がポイント。最後まで緊張感のある作品で、飽きずに読める吉村昭の作品を探している方におすすめです。
高熱隧道
新潮社 著者:吉村昭
黒部第三発電所の建設をテーマにした吉村昭の長編ノンフィクション作品。険しい黒部渓谷に発電所を作るために、物資を運ぶためのトンネルを掘り進める作業員の姿をリアルに描いた記録文学です。
昭和11年8月着工、昭和15年11月完工した黒部第三発電所の建設。黒部渓谷の岩盤は最高温度が165度に達する高熱地帯でした。トンネルを開通させる難工事に犠牲者は300名を超えていて…。
吉村昭が綿密な取材と調査を経て執筆したノンフィクションのなかでも、特に描写の忠実性が高い作品。極限状況における人間の姿に興味がある方におすすめの吉村昭作品です。
破獄
新潮社 著者:吉村昭
犯罪史上に名を残す無期刑囚を描いた吉村昭の記録文学。第36回読売文学賞と第35回芸術選奨文部大臣賞を受賞した作品です。1985年・2017年にドラマ化もされています。
昭和11年に青森刑務所、昭和17年に秋田刑務所、昭和19年に網走刑務所、そして昭和22年に札幌刑務所を脱獄した無期刑囚・佐久間清太郎。犯罪史上類を見ない4度の脱獄を実行した佐久間の手口は、どのようなモノだったのでしょうか。
獄房で厳重な監視を受ける佐久間と、彼を閉じこめた男たちの息詰る闘いが描かれています。緊張感のあるストーリーを楽しみたい方におすすめの1冊です。
ポーツマスの旗
新潮社 著者:吉村昭
大国との条約終結に成功した小村寿太郎の姿を描く長編作品です。個人と国家の関係をテーマに近代日本史を描写。1981年にNHKでドラマ化され放送されました。
日本の命運を賭けた日露戦争。外相の小村寿太郎は、全権を持ってポーツマス講和会議に臨みました。ロシアとの緊迫した駆け引きの結果、講和が成立。しかし、樺太北部と賠償金の放棄は国民の怒りを買い、大暴動へと発展するのでした。
日露戦争にスポットをあて、交渉妥結に命を懸けた小村寿太郎の姿を克明に記した力作です。日本の歴史における大きな転換点が描かれているのがみどころ。歴史上の偉人の話を読みたい方におすすめです。
三陸海岸大津波
文藝春秋 著者:吉村昭
自然災害をテーマにした吉村昭の作品です。体験者の証言をもとに、大津波による被害を再現しています。
明治29年、昭和8年、そして昭和35年の3度にわたり青森と岩手、宮城を襲った大津波。人々に悲劇をもたらした津波はどのようにやってきたのでしょうか。また、人々の生死を分けたモノとは…。
巨大津波の恐ろしさが描き出されているのがみどころです。一定の周期で発生している大津波の恐怖を学べる作品。日本で起こった津波災害の歴史が学べるおすすめの吉村昭作品です。
羆嵐
新潮社 著者:吉村昭
羆と人間の生死をかけた闘いを描く吉村昭のドキュメンタリー長編です。自然を前にして打つ手のない人間たちと、ただひとり羆に立ち向かう老練な猟師の姿を描いています。
大正4年12月、北海道天塩山の麓にある開拓村を突然恐怖の渦に巻き込んだのは1頭の羆でした。冬眠の時期を逃した羆は、わずか2日間で6人の男女を殺害します。猟師はどのように立ち向かうのでしょうか。
羆に襲われる人間の恐怖がリアルに描写されているのがみどころ。本の世界にひき込まれたい方におすすめです。
新装版 赤い人
講談社 著者:吉村昭
北海道開拓の暗部について描かれた長編歴史小説。敵意に満ちた極限ドラマが展開される作品です。
明治14年、赤い獄衣の男たちが北海道の石狩川上流へ移送されました。極寒の地で足袋も与えられず、強制的に労働を課せられる囚人たち。しだいに囚人と看守の間には敵意が満ちていきます。
苦しい労働に耐えられない囚人が野垂れ死にすることで、国の支出が軽減されると考えられていた時代が舞台。人権とは何なのかを改めて考えたい方におすすめの吉村昭作品です。
戦艦武蔵
新潮社 著者:吉村昭
記録文学の新境地を切り開いた吉村昭の作品。日本帝国海軍の夢と野望を賭けた戦艦「武蔵」の全容を明らかにした作品です。菊池寛賞を受賞しています。
戦争の神話的象徴である「武蔵」。人間が狂気的なエネルギーを注いだ戦争の本質とは何だったのでしょうか。
非倫理的な行動に走る人間の持つ奇怪さに迫る作品。戦争に対する虚しさや無情さを感じたい方におすすめです。
星への旅
新潮社 著者:吉村昭
ロマンチシズムと現実が交じり合う、死をめぐる吉村昭の短編集。表題作のほか、『鉄橋』『少女架刑』などの短編作品が全6編収録されています。1966年に太宰治賞を受賞した作品です。
『星への旅』は、平穏な日々のなかで生じる倦怠感や無力感から死への憧れが生まれ、集団自殺を企てる少年たちの物語。その常識はずれの遊戯性が基となっている死を、メルヘンチックに昇華しています。
いずれの作品も、死をテーマに書かれているのがポイント。死について真剣に考えたい方にはおすすめの作品です。
ふぉん・しいほるとの娘 上
新潮社 著者:吉村昭
吉村昭作品の代表作とも呼ばれている歴史小説です。吉川英治文学賞を受賞しており、上下巻で構成されています。
鎖国された日本の内情を調べることを祖国のオランダ政府から命じられていた軍医・シーボルト。遊女・其扇と結婚した直後、日本地図の国外持ち出しなどの計画が幕府に知られてしまうのでした。厳しい取り調べの結果、シーボルトは国外へ追放され、娘・お稲は日本に残されてしまいます。
シーボルトと其扇の間に生まれたお稲が送る波瀾万丈の生涯を描いた作品。吉村昭作品の代表作を読みたい方におすすめです。
遠い日の戦争
新潮社 著者:吉村昭
戦後日本の歪みを描いた吉村昭の力作。第二次世界大戦で敗戦した日本の姿が克明に描かれた作品です。
終戦の言葉が下った日のこと。福岡の西部軍司令部の防空情報主任・清原琢也は、米兵捕虜を処刑します。そのとき彼は、自分が無差別空襲により家族を失ったすべての日本人の代行者と錯覚していました。しかし、敗戦により今までの価値観が通じなくなってしまうのです。
戦犯として断罪された清原琢也の逃亡の日々を描いています。戦前と戦後の価値観が一変したことで、立場が変わってしまった主人公の姿に汗握る、おすすめの作品です。
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吉村昭は戦争や自然災害、歴史の偉人など、さまざまな題材をテーマにした作品を執筆しています。徹底した調査のもとに書かれているのが特徴。記録文学の新境地を切り開いた作家として知られているのもポイントです。日本の歴史や実際に過去にあった出来事に興味がある方は、ぜひ手にとってみてください。