警察・刑事小説で人気の「今野敏」。締め切りが多い作家といわれるほどさまざまなシリーズを執筆しており、映像化されている作品も多数存在します。
そこで今回は、今野敏のおすすめ小説をご紹介。数々の賞を受賞している「隠蔽捜査シリーズ」から、今野敏作品の原点ともいえる「安積班シリーズ」、任侠や武道をテーマにしたモノまで、さまざまな作品をピックアップしました。ぜひチェックしてみてください。
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警察・刑事小説で人気の「今野敏」とは?
今野敏は1955年北海道生まれの小説家です。上智大学在学中の1978年に『怪物が街にやってくる』で問題小説新人賞を受賞。レコード会社での勤務を経て、専業作家の道に入りました。
デビュー後はアクション小説やSF小説を中心に執筆し、10年程経った頃にかねてより書いてみたかったという警察小説に挑戦。「安積班シリーズ」として刊行されている『東京ベイエリア分署』を発表しました。
2006年に『隠蔽捜査』で吉川英治文学新人賞を受賞し、2008年に続編である『果断 隠蔽捜査2』で山本周五郎賞と日本推理作家協会賞を受賞。さらに、2017年には「隠蔽捜査シリーズ」で吉川英治文庫賞を受賞しています。
現在は執筆の傍ら、一般社団法人日本推理作家協会の代表理事を務めており、角川春樹小説賞・江戸川乱歩賞・大藪春彦賞の選考委員などを担当。若手の育成にも力を注いでいます。
今野敏作品の魅力
これまでに刊行した著書数は200冊に迫り、累計発行部数は1500万部を超えるといわれている今野敏作品。警察小説の第一人者ですが、武道やSFなどさまざまなジャンルの小説も執筆しています。
今野敏作品の魅力は、爽やかな読後感。インタビューでは、読者に元気になってもらうことを意識していると発言しており、多くの著書がハッピーエンドで締めくくられているのが特徴です。
2018年にはデビュー40周年を迎え、自身の執筆活動を「職人としての40年」と振り返っています。向上心を持ちながら執筆することにこだわり続け、エンターテインメント性の高い小説を今もなお執筆し続けている小説家です。
今野敏のおすすめ小説
隠蔽捜査
新潮社 著者:今野敏
吉川英治文学新人賞を受賞した作品。スピンオフ短編を含めて10作品以上を出版している「隠蔽捜査シリーズ」の第1作目です。隠蔽捜査シリーズは吉川英治文庫賞を受賞しており、ドラマ化もされています。
警察官僚である竜崎伸也。頑固で愛想がなく、周囲からは「変人」と呼ばれています。一方で、“エリートは、国家を守るため、身を捧げるべきだ。私はそれに従って生きているにすぎない”と考える人物。警察組織を揺るがす連続殺人事件に、竜崎は真正面から対決していきます。
信念を持って職務に取り組む竜崎や、竜崎を支える妻など個性豊かな登場人物たちも魅力。累計300万部を突破した人気シリーズの始まりを読んでみたい方におすすめです。
リオ 警視庁強行犯係・樋口顕
新潮社 著者:今野敏
警視庁捜査一課強行犯第三係を率いる樋口警部補が主人公の「警視庁強行犯係・樋口顕シリーズ」第1作目。ドラマ化もされている本格警察小説です。
物語の始まりは荻窪で起きた殺人事件。目撃されたのは、殺害現場から逃げ去る美少女でした。続いて起こる殺人現場でも彼女の姿が目撃されていることから、捜査本部は少女=リオに容疑をかけます。しかし、樋口は“彼女が容疑者とは思えない”と疑い始め…。
わかりやすい心理描写が上手く盛り込まれているのがポイント。警察小説を初めて読む方にもおすすめの小説です。
新装版 虚構の殺人者 東京ベイエリア分署
角川春樹事務所 著者:今野敏
「安積班シリーズ」の第2作目。コリン・ウィルコックスの「ヘイスティングス警部シリーズ」やエド・マクベインの「87分署シリーズ」など、海外の警察小説の影響を受けて書かれたシリーズです。新装版第2弾には、押井守監督との巻末付録特別対談が収録されています。
東京湾臨海署・通称ベイエリア分署の管内で発見された落下死体。その人物は、テレビ局プロデューサーでした。安積警部補たちは、現場の状況から他殺と断定。被害者の利害関係から容疑者が浮かび上がります。ところが、その人物には鉄壁のアリバイがありました。
登場人物の丁寧な心理描写や、クスリと笑える安積警部補の心の声もポイントです。爽やかな読後感を味わいたい方にぴったり。今野敏作品の原点に触れてみたい方におすすめの小説です。
暮鐘 東京湾臨海署安積班
角川春樹事務所 著者:今野敏
シリーズ累計144万部を突破している「安積班シリーズ」のうち、2021年に出版された作品です。安積班シリーズは『隠蔽捜査』に並ぶ今野敏の代表作。本作品は、安積班の刑事たちが正義の眼差しでさまざまな事件を解決していく短編集です。
2話目に収録されている『暮鐘』は、江東区有明で発生した強盗事件から始まります。強行犯第一係の安積班によって本格的な捜査が始まろうとしている矢先に、犯人が自首。ところが、納得がいかない須田は、事件の真相を追いかけます。
今野敏がライフワークと語っているほど思い入れのあるシリーズ。今野敏が描く警察小説を存分に楽しみたい方におすすめの小説です。
同期
講談社 著者:今野敏
警察組織の壁に抗い、友を救うために闘う刑事を描いた小説。警視庁捜査一課の宇田川が活躍する「同期シリーズ」の第1作目にあたる作品です。
現場で発砲された宇田川。助けたのは公安所属の同期・蘇我でした。ところが数日後、蘇我は懲戒免職となり消息不明に。宇田川は真相を探ろうとしますが、調べるにつれ謎は深まります。“教えてくれ。おまえはいったい何者なんだ”。組織の壁と謎に包まれた迷宮の闇のなか、汚名を背負い姿を消した「同期」を宇田川は救えるのでしょうか。
まっすぐな思いを貫く主人公や主人公を支える先輩たちなど、魅力的な登場人物にも注目。爽やかな読後感を味わいたい方や、読み応えのある今野敏の小説を探している方におすすめです。
ST 警視庁科学特捜班 青の調査ファイル
講談社 著者:今野敏
ドラマ化や映画化もされた人気の作品「ST」。ST(警視庁科学特捜班)の個性的なメンバーそれぞれに焦点を当てた「色シリーズ」の第1作目で、ST文書担当の青山翔が活躍する作品です。
物語は心霊テレビ番組の収録中、スタッフが首を骨折して死亡したところから始まります。事件が起こったのは密室。そのため、事故死と処理されかけていました。しかし、STは殺人の可能性を追いかけており…。
仲の悪いスタッフや霊能者、タレントらの人間関係が入り乱れる事件の真相とは。ドラマでも癖の強かったSTメンバーの活躍を読みたい方におすすめの小説です。
ヘッドライン
集英社 著者:今野敏
記者と刑事、異色のタッグを組んだ2人が事件の核心に迫るノンストップミステリー。吉川英治文庫賞を受賞し、シリーズ累計40万部を突破している作品です。
報道番組「ニュースイレブン」の記者・布施は、素行の悪さが目立ちながらも、独自の取材で多くのスクープを掴んできた敏腕記者。そんな布施が目を付けたのは、1年前の女子学生猟奇殺人事件でした。
再捜査中だった警視庁捜査一課特命捜査第二係・黒田は、閉塞した捜査を打開するため布施をマークして…。
ニュース番組の裏側で展開されている製作者のドラマやリアルな人間関係が描かれています。いつもとひと味違う刑事小説が読みたい方におすすめです。
任侠シネマ
中央公論新社 著者:今野敏
義理人情に厚いヤクザの親分・阿岐本雄蔵が率いる任侠団体・阿岐本組が活躍する「任侠シリーズ」の第5作目。第2作目の『任侠学園』が映画化された人気のシリーズです。
“心を入れるにはまず掃除”“素人を泣かすな!”など、一風変わったルールがある阿岐本組。出版社や学校の経営再建などに携わり、成功させた経歴を持つ異色の任侠団体です。今回の舞台は、北千住にある古い映画館。客足が落ち、存続の危機に陥った映画館を阿岐本組は守れるのでしょうか。
ただの任侠小説ではなく、コメディー要素があり、読みやすいのが本作品の魅力。読み終えると映画館に行きたくなる1冊です。親分の人情味あふれるセリフにも注目してみてください。
宗棍
集英社 著者:今野敏
幕末の時代、強さとは何たるかを追い求め、琉球空手の礎を築いた松村宗棍の生涯を描いた作品。空手有段者で、道場「空手道今野塾」を主宰している今野敏が描く長編小説です。
高名な武術家・照屋に才能を見出され弟子入りした宗棍は、元服して首里王府の役人となります。“他人に勝つことなど、どうでもいい。自分の中に、絶対の強さを培え”。国王との交流や「最強」の妻との出会い、強敵との決闘などを経て、宗棍は本当の強さを追求します。しかし、その一方で、琉球王国はゆっくりと崩壊に向かっているのでした。
琉球時代の雰囲気や、空手というスポーツについても知ることのできる1冊。武道に興味がない方でも読みやすいおすすめの小説です。
神々の遺品 新装版
双葉社 著者:今野敏
神話・宗教・古代遺跡など、超古代文明の謎に探偵が挑む「探偵・石神達彦シリーズ」の第1作目。宇宙と人類の歴史に関わる謎を解き明かす、超伝奇ミステリー小説です。
アメリカで超常現象研究チーム「セクションO」が失踪し、日本でも著名なUFOライターが殺される事件が発生。オーパーツと呼ばれる太古の文明が残した遺産が、事件の鍵を握っていました。
石神は壮大なスケールの事件の真相を突き止められるのでしょうか。いつもと違う今野敏作品を楽しみたい方におすすめの小説です。
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多彩なジャンルの作品を執筆している今野敏。警察・刑事小説は特に高い評価を得ており、映像化されている作品も多く存在します。今野敏の代表作を読みたい方は「隠蔽捜査シリーズ」、原点に触れてみたい方は「安積班シリーズ」がおすすめ。コメディー作品が好みの方は「任侠シリーズ」にも注目してみてください。