『徳川家康』をはじめとする、数多くの長編歴史小説を手掛けた小説家「山岡荘八」。紫綬褒章を受章した、日本史に残る作家の1人です。

そこで今回は、山岡荘八のおすすめ小説を厳選してご紹介。長編から1巻で読みきれる作品まで、さまざまな偉人たちを題材にした名作小説をピックアップしました。山岡荘八作品が好きな方はもちろん、これから山岡荘八の歴史小説を手に取るという方も、ぜひ参考にしてみてください。

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小説家「山岡荘八」とは?

山岡荘八は、1907年新潟県出身の小説家です。印刷所の文選工や雑誌編集者を経験し、1938年『約束』でサンデー毎日大衆文芸に入選。そして、翌年『からゆき軍歌』で単行本デビューを果たしました。

デビュー後、長谷川伸が主催の勉強会「新鷹会」に参加し、門下生に。戦時中は従軍記者として活動しました。戦後に公職追放とされますが、作家復帰の1950年から連載した『徳川家康』で一躍、国民的作家として注目を集めます。

文庫本26巻に及ぶ大長編『徳川家康』は、1967年に長谷川伸賞、1968年に吉川英治文学賞を受賞。中国をはじめ、海外でも愛されるベストセラーになります。

数々の文化的功績から1973年に紫綬褒章を受章。1978年には従四位勲二等瑞宝章を追贈されました。同年71歳で生涯を終えるまで、日本文化の発展に尽力した歴史小説家です。

山岡荘八作品の魅力

山岡荘八作品は『徳川家康』をはじめ、巻数のある長編の歴史小説が多いのが特徴。戦国時代だけでなく、幕末や鎌倉時代、太平洋戦争時などを舞台にした作品もあり、さまざまな時代や人物を題材にした、スケールの大きな歴史小説を楽しめます。

また、劇作家でもあった長谷川伸に師事した経緯から、山岡荘八作品は軽快な語り口でテンポ良く物語が展開されるのもポイント。人物の個性もはっきりとしているので、登場人物が多くなりがちな歴史小説でも、人物間の関係性が理解しやすい作品が多いのが魅力です。

さらに、山岡荘八は『春の坂道』『独眼竜政宗』など、大河ドラマ原作の常連作家でもあります。歴史になじみがない方や、歴史小説を読み慣れないという方の、入門書としてもおすすめの小説家です。

山岡荘八のおすすめ小説

徳川家康 1 出世乱離の巻

講談社 著者:山岡荘八

徳川家康 1 出世乱離の巻

17年もの間、新聞で連載されていた山岡荘八の代表作です。文庫本は全26巻におよび、「世界最長の小説」としてギネスブックに認定されたことも。第2回吉川英治文学賞を受賞し、大河ドラマなど、多数のメディアミックスもされています。

信玄・謙信・信長など、数々の英傑たちが天下制覇を夢見る戦国時代。動乱の時代真っ只中に生まれた竹千代(家康)は、弱小だった松平家にとって希望の星でした。強い意志と智略で泰平の世を拓いた徳川家康、その生涯を追いかけます。

徳川家康の出生前から亡くなるまでを描いた本作品。家康の生涯とともに、同時期に生きた武将や大名が大勢登場するので、戦国の世の流れを網羅できます。中学生ごろからでも読みやすい、おすすめの長編歴史小説です。

織田信長 1 無門三略の巻

講談社 著者:山岡荘八

織田信長 1 無門三略の巻

戦国時代を生きた英傑のひとり、織田信長を主人公にした山岡荘八の人気作。テレビドラマ化もされました。全5巻で、少年期から本能寺の変までの信長の活躍を描いています。

吉法師(信長)は、破天荒な振るまいで家中のひんしゅくを買う“うつけ者”。しかし、人並み以上に才覚溢れる彼は、手始めに尾張織田の統一を大志に抱きます。濃姫を妻に迎えた信長は、アンチ信長派の筆頭である弟の殺害を決意し…。

1巻では、周囲から“うつけ者”と呼ばれながらも、智略で状況を切り拓いていく信長の姿に痛快さや爽快さを味わえます。また、各人物像には個性が溢れており、軽妙な掛け合いなども魅力。人間味溢れる織田信長の英雄譚を読みたい方におすすめの、山岡荘八作品です。

伊達政宗 1 朝明けの巻

講談社 著者:山岡荘八

伊達政宗 1 朝明けの巻

山岡荘八が、全8巻で伊達政宗の生涯を描いた長編歴史小説。1987年放送の大河ドラマ、『独眼竜政宗』の原作としても人気がある作品です。

永禄10年、奥羽米沢城に生を受けた伊達政宗。戦国時代も英雄・織田信長によって終わりに近づいていました。しかし、奥羽はまさに戦国動乱の真っ只中。激動の時代を生きた英傑・独眼竜政宗、その波乱の生涯が幕を開けます。

天才・伊達政宗を、策士ながらへそ曲がりな部分もある人物として魅力的に描いている本作品。政宗の人生を通して、数々の処世術も学べるおすすめの作品です。

小説太平洋戦争 1

講談社 著者:山岡荘八

小説太平洋戦争 1

報道班員として従軍した山岡荘八が、戦後、太平洋戦争を主題に書いた全9巻の歴史小説。太平洋戦争の全史を描いた唯一の大河小説とされ、資料としても読み応えのある作品です。

日独伊三国同盟を受け、日米が最悪な関係に陥っていた昭和16年。和平のため、首相・東条英機が交渉に奔走するも、大統領・ルーズベルトは対日戦争開戦を視野に入れていました。

開戦か和平か混乱する中央。そして、山本五十六は連合艦隊司令長官就任の祝賀会の席で、“天命を待つのみでは祖国の安泰は期しがたい”と発言します。

当時の世界情勢を踏まえた、太平洋戦争の意義を理解できる本作品。開戦前の政治的な駆け引きを含め、戦争に突入する緊迫感や当時の状況を、巧みな筆致によってリアルに感じられます。戦争経験者である山岡荘八ならではの、おすすめの長編作です。

高杉晋作 1

講談社 著者:山岡荘八

高杉晋作 1

奇兵隊を結成し、尊王攘夷を掲げる幕末の長州藩で活躍した高杉晋作。明治維新に影響を与えた高杉晋作の人生を、山岡荘八が全3巻でつづった歴史小説です。

黒船を率いてペリーが浦賀に来航した1853年。開国佐幕派と倒幕勤皇攘夷派、民意が2分した国内は混乱を極めていました。そんななか、革新を叫ぶ吉田松陰が刑死し、松下村塾の塾生たちにも動揺がはしります。

師の志を活かすべく、日本国再興について苦悶する高杉晋作。黒船来航から始まる1巻では、まだ幼さの残る晋作が、吉田松陰の死に触れて成長していく様が魅力的に描かれています。

高杉晋作をはじめ、登場人物たちの丁寧な心情描写に胸が熱くなる読者も。幕末の歴史小説が好きな方におすすめの山岡荘八作品です。

吉田松陰 1

講談社 著者:山岡荘八

吉田松陰 1

幕末動乱の時代、松下村塾で多くの志士を育てた吉田松陰。その29歳という短い生涯を、軽快な表現で楽しめる全2巻の山岡荘八作品です。

長州藩きっての俊才として、吉田大治郎(松陰)の将来は明るいと思われました。しかし、時代の嵐を察知する松陰の目は、藩から外へと向けられていきます。

九州遊学中に出会った宮部鼎蔵らの、尊皇攘夷への熱量を目の当たりにした松陰。さらに、数多くの黒船や外国人の姿を平戸で目にし、松陰は開国への圧力の高まりを、身をもって知ることになるのです。

吉田松陰を取り巻いていた環境が、詳細に描かれているのがポイント。松陰の人となりや、明治維新へのつながりが理解しやすくなっています。吉田松陰の歴史小説を読んだことがない方にもおすすめの1作です。

柳生宗矩 1 鷹と蛙の巻

講談社 著者:山岡荘八

柳生宗矩 1 鷹と蛙の巻

1971年に放送されたNHK大河ドラマ『春の坂道』の原作として、山岡荘八が書き下ろした長編小説。柳生新陰流を将軍家御流儀としての剣術に確立させた、柳生宗矩が主人公です。

文禄3年。父・石舟斎に入門したのは、かの徳川家康でした。家康のひたむきな姿を目にし、心から迷いが消えた柳生宗矩。この家康との出会いが、生涯をかけて剣禅一如をなし遂げた宗矩の、すべての始まりとなります。

徳川家康から3代にわたり、将軍家兵法指南役として活躍した柳生宗矩。その生涯を、全4巻で描いています。泰平の世を目指して成長し、苦労を重ねていく宗矩の生き様に、胸を打たれる読者も多いおすすめの山岡荘八作品です。

新太平記 1 笠置山の巻

講談社 著者:山岡荘八

新太平記 1 笠置山の巻

室町時代の軍記物語『太平記』を、山岡荘八ならではの筆致で味わえる歴史小説です。南北朝内乱期の重厚な歴史を、楠木正成や新田義貞の活躍などとともにドラマチックに描きました。

天皇親政を願い、ひそかに鎌倉幕府の倒幕を画策する後醍醐天皇。天皇のげきを受け、楠木正成は金剛山の小城・赤坂で挙兵します。正成の巧みな軍略により幕府軍を翻弄するも、笠置が陥落し、後醍醐天皇は隠岐に流されてしまうのでした。

楠木正成をはじめ、個性豊かで魅力的な人物描写がポイント。南北朝時代の雰囲気も感じ取れる、おすすめの全5巻です。

豊臣秀吉 1

講談社 著者:山岡荘八

豊臣秀吉 1

山岡荘八が『徳川家康』と並行して連載していた『異本太閤記』を、改題してまとめられた長編歴史小説。戦国時代を彩る英傑の1人、豊臣秀吉を主人公にした痛快なサクセスストーリーです。

負けん気の強い暴れん坊ではあるものの、心優しく頭もきれる尾張の少年・日吉(秀吉)。戦乱の世の中に苦しむ庶民を、農民として目の当たりにしてきた日吉は、“戦いのない日本を作ろう”と大志を抱きます。

自ら元服して木下藤吉郎と名乗りはじめる日吉でしたが、旅に出た彼に待ち受けるのは、数々の困難でした。

豊臣秀吉の少年時代から進む本作品は、山岡荘八らしいテンポの良い展開に、惹きつけられる読者も多いおすすめの1作。度胸と機転で世渡りをしていく秀吉像を、生き生きとしたリアリティとともに楽しめる山岡荘八作品です。

源頼朝 1

講談社 著者:山岡荘八

源頼朝 1

鎌倉幕府の初代将軍になった源頼朝を主人公にした、全3巻の歴史小説。源氏の悲劇から再興までを、山岡荘八の手腕で臨場感たっぷりに描いています。

平氏の横暴に立ち上がるも、平治の乱に敗戦した源氏一門。この乱で初陣を迎えた13歳の頼朝は、落武者となって吹雪のなかを敗走します。父・義朝は非業の死を遂げ、兄・義平も捕らわれ斬られてしまいました。残された頼朝も捕まり、京へ送られますが…。

1巻では、保元・平治の乱の凄まじい戦の様子を中心に物語が展開します。乱世に翻弄される頼朝らの切ない心情を含め、感情面に訴える多彩な描写が魅力。客観的な視点で頼朝を見つめ直せるという点でも、おすすめの山岡荘八作品です。

坂本龍馬 1 黒船の巻

講談社 著者:山岡荘八

坂本龍馬 1 黒船の巻

薩長同盟を仲介し、倒幕の立役者となった坂本龍馬。龍馬が志を立てるまでの青年期を、山岡荘八らしい躍動感のある表現で楽しめる全3巻の作品です。

物語は、坂本龍馬が19歳の頃からはじまります。ふるさとの土佐から江戸に渡った龍馬は、北辰一刀流の名門・千葉貞吉の道場で修業中の身。そんな折、1853年にペリーが来航し、江戸の町は大騒ぎになります。

黒船の撃退を叫ぶ仲間たちに対し、1人大らかに構える龍馬。しかし、ふるさとに帰った龍馬の身に起こった出来事が、今後の龍馬の人生を大きく変えることになるのです。

黒船の襲来から物語が進む本作品は、時代の転換期に苦悩し、葛藤する青年の成長譚としてもおすすめの1作。歴史小説が苦手な方も楽しみやすい山岡荘八作品です。

毛利元就 1

講談社 著者:山岡荘八

毛利元就 1

戦国時代、中国地方の10カ国120万石を支配した豪傑・毛利元就が主人公の歴史小説。全2巻で元就の幼少期からの半生が、山岡荘八の手腕で物語としてよみがえります。

応仁の乱から30年経ち、世はまさに乱世。中国地方もまた、山口は大内義興、出雲は尼子経久という2大勢力がそれぞれ牙を光らせていました。

2国に挟まれる小国、安芸の毛利家に生まれた元就。平和だった日々は、父・弘元の死によって終止符を打たれます。10歳でみなし児城主となった元就の軍命は、果たしてどうなるのでしょうか。

弱小豪族だった毛利元就が、卓越した智略と統率力で戦国の世に頭角を表していきます。全2巻と、山岡荘八作品のなかでは手に取りやすい長さなので、長編の歴史小説を読み慣れない方にもおすすめの作品です。

柳生石舟斎

講談社 著者:山岡荘八

柳生石舟斎

山岡荘八作品としては珍しい1巻完結の作品。柳生宗矩の父・柳生石舟斎の半生から、柳生新陰流の成立と思想を理解できる歴史小説です。

剣術の腕に絶対の自信があった柳生宗厳。しかし、神陰流の流祖・上泉伊勢守秀綱と立ち合った宗厳は、自分の慢心やうぬぼれに気がつきます。宗厳は自らを恥じ、即座に秀綱に入門。「無刀取り」を極めるべく、剣術の道に切磋琢磨することを誓います。

柳生新陰流成立の流れだけでなく、「無刀取り」の精神を会話やストーリーで丁寧に表現しているのが特徴。武道をたしなむ方にもおすすめの山岡荘八作品です。

徳川慶喜 1

講談社 著者:山岡荘八

徳川慶喜 1

江戸幕府最後の将軍である、徳川慶喜の半生を描いた全6巻の長編作。明治維新について改めて考えさせられるシリーズです。

黒船の来航は、長年鎖国を続けてきた日本を動揺の渦に巻き込みます。幕府内でも開国派と攘夷派の対立が深まり、将軍の跡取り問題も持ち上がって超非常事態を迎えることに。止まらない時の流れに、将軍・慶喜の胸中とは…。

慶喜が将軍に就く前から始まる物語は、慶喜の置かれていた状況なども詳しく明らかにされているのがポイント。幕末という激動の時代を、幕府側から見つめ直せるという点でも、おすすめの山岡荘八作品です。

日蓮

講談社 著者:山岡荘八

日蓮

鎌倉時代の仏教僧であり、法華経を日本に広めた日蓮の半生を、人間味溢れる描写で描いた小説。日蓮の幼少期から、立宗宣言までの物語です。

安房国の小湊の漁家に生まれた善日丸(日蓮)は、幼くして清澄山に入山します。情熱と信念を胸に、救国の道を求めて懸命に勉学に励む善日丸。腐敗した世の中へ、日蓮の魂の教えは届くのでしょうか。

一途に自分の信念を貫き、努力し続ける日蓮の姿に学びの多い山岡荘八作品。巧みな文章構成で読み応えがあり、一気読みしたという読者も。日蓮の人となりを知りたいという方に、おすすめの1作です。