多彩な作風が魅力の芥川賞作家・吉田修一。人間の生々しさを描く犯罪小説や、爽やかで心あたたまる青春小説、独特の言い回しが光る純文学など、ジャンルにとらわれず多くの作品を生み出しています。
そこで今回は、吉田修一のおすすめ小説をご紹介。同氏の代表作である『国宝』や『悪人』、『怒り』をはじめ、デビュー作の『最後の息子』など、読んでおきたい作品をピックアップしました。ぜひチェックしてみてください。
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人気小説家「吉田修一」とは?

吉田修一は1968年長崎県生まれの小説家です。法政大学経営学部を卒業後、1997年に『最後の息子』で文学界新人賞を受賞しデビューしました。2002年には『パレード』で山本周五郎賞を、『パーク・ライフ』で芥川賞をダブル受賞。純文学とエンターテインメント小説の文学賞をあわせて受賞し話題を集めました。
2007年には、朝日新聞に連載していた『悪人』で毎日出版文化賞と大佛次郎賞を受賞。また、2010年に出版した『横道世之介』で柴田錬三郎賞を受賞するなど、多くの文学賞を受賞しています。『怒り』や『パレード』など、映画化された作品が多いのも特徴です。
作家生活20周年の節目に発表した『国宝』では、芸術選奨文部科学大臣賞と中央公論文芸賞を受賞し、2025年公開の実写映画の興行収入は、実写邦画歴代1位になるなど話題を呼びました。
このように、デビューから現在まで数々の名作を生み出し続けている作家です。2016年からは芥川賞選考委員も務めており、若手の育成にも注力しています。
吉田修一作品の魅力

多くのヒット作を生み出している吉田修一。「毎回別人が書いていると思わせたい」と話しており、ジャンルの垣根を超えてさまざまな小説を執筆しています。純文学とエンターテインメント小説、2つの文化賞を同時に受賞した経歴があるなど、作品ごとに異なる楽しみ方ができるのが魅力です。
特に犯罪を扱った作品に定評があり、映画やドラマ化された小説が多いのも特徴。豪華俳優陣や有名監督により映画化された『悪人』は、国際映画祭などでも高く評価されています。英語や韓国語に翻訳されている作品も多く、世界中で人気のある小説家です。
吉田修一のおすすめ小説
国宝 上 青春篇
| 出版社 | 朝日新聞出版 | ページ | 407 |
|---|---|---|---|
| ジャンル | 芸道・大河 | こんな人におすすめ | ・芸能や伝統文化に興味がある人 ・青春群像劇や大河小説が好きな人 |
歌舞伎界を舞台に、血縁と才能に翻弄される男たちの激動の人生を描いた芸道小説の傑作。芸術選奨文部科学大臣賞と中央公論文芸賞をダブル受賞し、ミリオンセラーを突破した吉田修一の代表作です。2025年には吉沢亮と横浜流星主演で映画化され、大きな話題を呼んでいます。
1964年元旦、長崎の任侠の家に生まれた立花喜久雄は、父を抗争で失い、上方歌舞伎の名門・花井家に引き取られます。そこで血縁の御曹司・大垣俊介と出会い、兄弟のように育ちました。
この世ならざる美貌と才能を持つ喜久雄と、俊介は切磋琢磨しながら歌舞伎の道を歩みますが、血縁と実力の違いに葛藤していきます。1960年代から現代まで、芸の世界での孤独と情熱、愛と裏切りが交錯する壮大な人間ドラマが展開されるのです。
歌舞伎という伝統芸能を題材にしながらも、決して敷居の高い作品ではありません。芸術と人間の本質を深く掘り下げた、重厚な文学作品を読みたい方におすすめです。
怒り 上
| 出版社 | 中央公論新社 | ページ | 320 |
|---|---|---|---|
| ジャンル | 群像ミステリー・サスペンス | こんな人におすすめ | ・社会派の要素がある文学が好きな人 ・重厚な群像劇を楽しみたい人 |
殺人犯の容疑をかけられた3人の男たちと、関わり合いになった人間たちの複雑な思いや行動を描いた長編小説です。上・下巻の2部構成。映画化もされています。
若い夫婦が惨殺された事件。山神一也という名前と年齢は判明したものの、その行方がつかめず、捜査は行き詰っていました。
そして、事件から1年が経った夏、千葉の港町で暮らす愛子、東京の広告会社に勤める優馬、沖縄の離島に引っ越した和泉の前に、それぞれ身元不明の男が現れます。3人はそれぞれの男に対し、信頼と愛情を寄せていくのですが……。
生々しい人間模様は、読み手の心を強く揺さぶります。信じることの難しさを改めて考えさせられる作品。吉田修一が描く「衝撃のラスト」を堪能したい方はチェックしてみてください。
悪人 新装版
| 出版社 | 朝日新聞出版 | ページ | 480 |
|---|---|---|---|
| ジャンル | 社会派サスペンス・恋愛文学 | こんな人におすすめ | ・人間の善悪や「悪」の本質に興味がある人 ・濃厚な心理描写や社会批評性を味わいたい人 |
毎日出版文化賞と大佛次郎賞を受賞した、吉田修一の代表作のひとつ。映画されており、モントリオール世界映画祭「ワールド・コンペティション部門」に出品されるなど高い評価を得ています。
出会い系サイトで知り合った土木作業員に殺害された保険外交員・石橋佳乃。一方、佐賀市内に双子の妹と暮らす馬込光代は、アクセスした携帯サイトで出会った男を運命の相手と確信します。
ところが、男は殺人を犯していました。光代は自首しようとする男を引き止め、一緒にいたいと強く願いますが……。
加害者と被害者、それぞれの家族たちの思いはどこへ向かうのでしょうか。「本当の悪人」とは誰なのかを考えさせられる作品。読み応えのある吉田修一作品を探している方におすすめです。
パレード
| 出版社 | 幻冬舎 | ページ | 309 |
|---|---|---|---|
| ジャンル | 青春・サスペンス | こんな人におすすめ | ・都会の若者のリアルな空気感を感じたい人 ・青春小説が好きだが、ただ明るい話では物足りない人 |
発売直後から各紙誌で賞賛された作品。山本周五郎賞を受賞し、映画化もされています。舞台となるのは都内の2LDKマンション。若者たちの奇妙な共同生活を描いた青春小説です。
4人の男女はそれぞれ不安や焦燥感にかられながらも、「本当の自分」を演じることで優しくも怠惰な共同生活を続けていました。
そこに加わったのが、いわゆる「夜のお仕事」をするサトル。ある事件をきっかけに、緩やかに続くはずだった共同生活は少しずつ崩れ始めます……。
穏やかな青春群像劇のラストに待つ衝撃の展開が見どころ。読み終わった後にもう一度読み返したくなる、おすすめの小説です。
横道世之介
| 出版社 | 文藝春秋 | ページ | 480 |
|---|---|---|---|
| ジャンル | 青春・成長 | こんな人におすすめ | ・心あたたまる青春小説を読みたい人 ・1980年代の学生文化や空気感に触れたい人 |
大学生の横道世之介を描いた青春小説です。第7回本屋大賞第3位に選出され、柴田錬三郎賞を受賞。2013年には映画化もされています。
大学進学のために長崎から上京した主人公・横道世之介。押しの弱い性格や隠された芯の強さは多くの人を惹き付け、さまざまな出会いと笑いをもたらします。
友人の結婚や出産、学園祭、お嬢様との恋模様、カメラとの出会い。20年後の友人たちの目に、世之介はどう映っていたのでしょうか……。
清々しく心あたたまる読後感が魅力。笑って泣ける爽やかな吉田修一作品を楽しんでみたい方におすすめです。
最後の息子
| 出版社 | 文藝春秋 | ページ | 245 |
|---|---|---|---|
| ジャンル | 青春小説・短編集 | こんな人におすすめ | ・吉田修一作品の原点を知りたい人 ・日常の繊細な心理描写が好きな人 |
第84回文学界新人賞を受賞した吉田修一のデビュー作です。表題作のほか、高校水泳部員たちを爽やかに描いた『Water』や、長崎を舞台にした短編『破片』も収録しています。
新宿でゲイバーを経営する「閻魔ちゃん」と同棲しながら、気楽でモラトリアムな日々を過ごす「ぼく」。昼過ぎに起きて好きなことをして過ごすヒモ生活を送りながら、ビデオカメラで日々の暮らしを撮影するようになります。
しかし、ある事件をきっかけに思い悩むぼく。自分がどうしたいのかわからないまま、ビデオ日記を見返していくのですが……。
爽快感や清々しさを感じさせる物語を楽しめる一方、『破片』は吉田修一の代表作『悪人』や『怒り』を彷彿とさせる作品。吉田修一の原点に触れてみたい方におすすめの小説です。
パーク・ライフ

| 出版社 | 文藝春秋 | ページ | 192 |
|---|---|---|---|
| ジャンル | 恋愛・都会小説 | こんな人におすすめ | ・純文学に初めて触れる人 ・都会の人間関係や孤独を描く静かな文学を味わいたい人 |
吉田修一が第127回芥川賞を受賞した傑作で、日比谷公園を舞台に、男女の恋をリアルに描いた物語です。表題作のほかに、上京した夫婦が夫の職場の先輩に振り回される『flowers』を同時収録しています。
別居している先輩夫婦の家で、なぜかひとり暮らしをしている「ぼく」。仕事がある日は職場近くの日比谷公園、休日は自宅近くの駒沢公園でひと息つく生活を送っていました。
ある日、ぼくは地下鉄の車内で知らない女性に話しかけてしまいます。数日後、昼休みの日比谷公園で再会した女性に話しかけられ……。吉田修一が描く純文学を読んでみたい方におすすめです。独特の表現や言い回しにも注目してみてください。
路

| 出版社 | 文藝春秋 | ページ | 475 |
|---|---|---|---|
| ジャンル | 社会派ヒューマンドラマ | こんな人におすすめ | ・国際交流や異文化理解に関心がある人 ・硬すぎない社会派文学を求める人 |
「国境を越える絆を描く傑作」などと賞賛された長編小説。台湾新幹線を走らせるまでの壮大な事業に携わった人々のドラマを追った、感動の物語です。2020年にはドラマ化もされています。
台湾に日本の新幹線を走らせるプロジェクトチームに抜擢された多田春香。春香は大学時代に台湾を訪れたとき、1日だけ観光案内をしてもらったエリックという青年を忘れられませんでした。
台湾で再会を果たす春香とエリック。ほかにも、さまざまな人生の物語が交錯しながら、国家的事業は進められていきます。台湾の季節感やにおいまで、色鮮やかに描いた作品。読み終わると台湾に行きたくなるようなおすすめの小説です。
太陽は動かない
| 出版社 | 幻冬舎 | ページ | 522 |
|---|---|---|---|
| ジャンル | スパイ・サスペンス | こんな人におすすめ | ・緊迫感あふれるハードボイルドやスパイ小説が好きな人 ・国際的な舞台や社会問題に興味がある人 |
産業スパイ『鷹野一彦シリーズ』の第1作目。全3部作のシリーズ小説です。映画化やドラマ化もされています。
油田開発の利権争いが激化する渦中で起きた射殺事件。「AN通信」の産業スパイ・鷹野一彦は、機密情報を高値で売り飛ばすため、部下の田岡と事件の背後関係を探っていました。ウイグル過激派による爆破計画もささやかれるなか、田岡が何者かに拉致されてしまい……。
謀略・誘惑・疑念・野心・裏切りが渦巻くなか、タイムリミットが迫ります。目に見えない攻防戦の末、巨万の富を得るのは誰なのでしょうか。世界をまたにかける壮大なストーリーがみどころ。吉田修一が描く、ハードボイルドな作品を読んでみたい方におすすめの小説です。
犯罪小説集

| 出版社 | KADOKAWA | ページ | 336 |
|---|---|---|---|
| ジャンル | サスペンス・犯罪 | こんな人におすすめ | ・心理サスペンスや犯罪心理に興味がある人 ・社会派・ヒューマンドラマ系の吉田修一作品が好きな人 |
2019年に公開された映画『楽園』の原作。「人はなぜ、罪を犯すのか?」をキャッチコピーに、人間の真実をあぶり出す短編集です。
『青田Y字路』は、田園に続く一本道が分かれるY字路で1人の少女が行方不明になるところから始まります。
犯人が見つからないまま10年が経ち、少女の祖父・五郎や直前まで一緒にいた紡は、罪悪感を抱えたまま過ごしていました。ところが、当初から疑われていた無職の男・豪士がきっかけとなり、関係者たちを少しずつ狂わせていきます…。
実際の事件からインスピレーションを受けて書かれた作品。心にモヤが残るような重々しいストーリーですが、日常が少しずつ歪んでいく怖さを感じられる読み応えのある小説です。
さよなら渓谷
| 出版社 | 新潮社 | ページ | 245 |
|---|---|---|---|
| ジャンル | サスペンス・社会派ヒューマンドラマ | こんな人におすすめ | ・重厚で心理描写の濃い吉田修一作品を読みたい人 ・善悪や人間の本質を考えたい人 |
幼児殺害事件をきっかけに、隣家の夫婦が抱える衝撃的な秘密が明かされる重厚な人間ドラマ。吉田修一が人間の業と複雑な心理を描いた話題作です。2013年には大森立嗣監督により映画化され、モスクワ国際映画祭で審査員特別賞を受賞しています。
桂川渓谷近くの団地で4歳の幼児の遺体が発見される事件が発生。被害児童の母親・立花里美が容疑者として逮捕されました。しかし、隣家に住む尾崎俊介と妻かなこに、事件を追う週刊誌記者・渡辺の視線が向けられます。
やがて、渡辺は俊介に集団レイプの加害者としての過去があることをつかみました。そして、俊介とかなこ夫婦が抱える過去の秘密が徐々に浮かび上がり……。
単なるミステリーではなく、人間の深層心理や社会の闇を描いた文学作品。映画でも国際的評価を受けた、完成度の高い作品を読みたい方におすすめです。
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さまざまなジャンルの作品を発表している吉田修一。同氏の作品の真骨頂を堪能したい方は『国宝』『怒り』『悪人』がぴったりです。読後感が爽やかな小説を読みたい方は『路』や『横道世之介』をチェックしてみてください。映像化されている作品も多くあるので、映画を観てから小説を読むのもおすすめです。