日本を代表するSF作家「筒井康隆」。ドラマやアニメなどの原作として扱われることも多いのが特徴です。小説のみならず、自身も芸術分野に大きく貢献したことをたたえられ、フランス芸術文化勲章シュバリエや紫綬褒章を受章しています。

そこで今回は、筒井康隆氏のおすすめ小説をご紹介。ドラマ・アニメ化された作品も多数紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

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日本三大SF作家「筒井康隆」とは?

筒井康隆氏は1934年大阪府生まれの小説家です。同志社大学卒業。SF小説を得意とし、小松左京氏・星新一氏とともに「日本SF御三家」と呼ばれています。

1960年に弟3人とSF同人誌『NULL』を創刊し、作家・江戸川乱歩の目に留まりました。1965年には、初めての作品集となる『東海道戦争』を刊行。2000年『わたしのグランパ』で読売文学賞を受賞しています。

筒井康隆氏自身は1997年にフランス芸術文化勲章シュバリエ、2002年には紫綬褒章を受章。多くの作品が映像化・舞台化されており、作品を目にする機会が多い作家のひとりです。

筒井康隆作品の魅力

筒井康隆氏は日本を代表するSF作家で、日本のSF小説に大きな影響を与えた作家ともいわれています。世相を鋭く皮肉ったブラックユーモアのあふれる作品が多く、喫煙問題など身近な社会問題を取り上げることも少なくありません。

パロディを得意としているのも特徴。同じSF作家・小松左京の『日本沈没』をパロディ化した『日本以外全部沈没』や、文壇をテーマに実在の作家を彷彿とさせるキャラクターが登場して話題になった『大いなる助走』などは、元ネタがわかるとより楽しめる作品です。

筒井康隆のおすすめ小説

時をかける少女 新装版

KADOKAWA 著者:筒井康隆


時をかける少女

世代を超えて愛され続ける筒井康隆氏のSF青春小説。2006年に公開された細田守氏によるアニメ映画をはじめ、何度も映像化してきた名作です。

放課後、誰もいないはずの理科室で人の気配を感じた芳山和子は、割れた試験管とかすかにただよう、どこかで嗅いだことのある甘い香りに気付きます。不思議な出来事を体験しながら、甘く切ない想いが描かれていく作品です。

細田守氏の映画作品とは異なる部分もあるので、アニメ映画を観たことがある方にもおすすめ。小説を起点に、さまざまなメディアミックス作品も楽しめる作品です。

パプリカ

新潮社 著者:筒井康隆


パプリカ

『パプリカ』は、夢と現実、ふたつの世界を舞台に繰り広げられる超電脳サイコサスペンス小説。1995年と2008年の2回にわたり漫画化、2006年にはアニメ映画化した作品です。

夢に介入できるようになった世界が舞台。精神医学研究所に勤めるノーベル賞級の研究者でありサイコセラピストでもある千葉敦子には、他人の夢の世界に侵入する「夢探偵パプリカ」という裏の顔がありました。最新型精神治療テクノロジー「DCミニ」の盗難をきっかけに、さまざまな事件が起きていきます。

物語が進むにつれ、夢と現実の境目が曖昧になっていく様子が印象的。体験したことのない不思議な世界観を楽しみたい方におすすめです。

家族八景

新潮社 著者:筒井康隆


家族八景

シリーズ化もした筒井康隆氏の長編SF小説。続編に『七瀬ふたたび』『エディプスの恋人』があります。2012年にはドラマ化。登場人物の心象風景を細かく描くことで、人間の愚かさや恐ろしさを浮き彫りにしている作品です。

生まれながらに人の心を読む超能力を持っているテレパス・火田七瀬。家政婦として8つの家庭の間を転々と移り住んでいくなかで、各家族の持つさまざまな問題を暴いていく物語です。

一見すると平凡な一般家庭の抱える心の闇を、コミカルに描きながら、読み終えたあとにもの悲しい気持ちを残す作品。人間心理の複雑さを体感したい方におすすめです。

七瀬ふたたび

新潮社 著者:筒井康隆

七瀬ふたたび

第7回星雲賞の日本長編部門を受賞したSF小説です。2008年にテレビドラマ化、2010年に映画化もした作品です。

主人公のテレパス・火田七瀬は、超能力者であることがばれるのを避けるために旅へ。旅のさなかに、初めて自分以外の超能力者の存在を知った七瀬は、次第に超能力者をこの世から滅ぼそうとする組織との争いに身を投じていきます。

前作の『家族八景』とは打って変わって、バトルシーンが盛りだくさんの展開が印象的。ぜひシリーズを通して読んでみてください。

最後の喫煙者 自選ドタバタ傑作集 1

新潮社 著者:筒井康隆

最後の喫煙者 自選ドタバタ傑作集 1

筒井康隆氏自らが厳選した短編集です。読んで笑えるテーマをセレクト。1995年の『世にも奇妙な物語』において、表題作がテレビドラマ化されています。

喫煙者が虐げられる世のなかのありさまを、最後の喫煙者になってしまった小説家の視点から描く『最後の喫煙者』。スプラッターコメディとしてブラックユーモアが飛び交う『問題外科』などを収録しています。

現代社会の抱える諸問題をユーモアで風刺するナンセンスな作風を堪能できる作品。筒井康隆氏の世界観を味わいたい方におすすめです。

富豪刑事

新潮社 著者:筒井康隆

富豪刑事

SFの鬼才と呼ばれる筒井康隆氏が、ミステリーに挑戦した小説。2020年に舞台化、テレビアニメ化されています。地道な聞き込みで事件を解決に導くという従来の常識を打ち破る捜査方法が印象的な作品です。

キャデラックに乗り、高級なハバナシガーをふかしながら富豪刑事・神戸大助が、迷宮入り寸前の難事件を解決します。お金を湯水のごとく使いながら事件と向き合う破天荒な刑事は、どのようにしてさまざまなトリックを解決するのでしょうか…。

テンポのよい物語と魅力的なキャラクターによって、急速に物語へ引き込まれます。ひと味違ったミステリーを読みたい方におすすめです。

ロートレック荘事件

新潮社 著者:筒井康隆

ロートレック荘事件

推理小説史上初のトリックが読み手を戸惑わせる筒井康隆氏の作品。誰も踏み入れたことのないメタ・ミステリー小説です。

郊外にあるおしゃれな洋館に、将来を約束された若者たちが集まりました。ロートレックの作品に囲まれて素敵なバカンスが始まったと思った矢先、2発の銃声が事件の幕開けに。ひとり、またひとりと女性たちが殺されていきます。

動機や犯人を推理しながら読みたい作品。衝撃の仕掛けが施されているので、先入観を持たずに読むのがおすすめです。

ジャックポット

新潮社 著者:筒井康隆

ジャックポット

14編の短編を収録した、筒井康隆氏の私小説的側面を持ち合わせる短編集です。激しい言葉を用いて息子の死などを書き出しています。

亡き息子との再会をテーマにした感動の話題作『川のほとり』や、コロナ禍の社会を描いた表題作『ジャックポット』。戦後の死にまつわる生々しい記憶を、ラジオDJ風に書き上げた『ダークナイト・ミッドナイト』などを収録しています。

筒井康隆氏らしいパワフルな語り口で世相を風刺する作品が楽しめる本作品。筆者が紡いだ現代社会へのメッセージを読み解いてみてください。

旅のラゴス

新潮社 著者:筒井康隆

旅のラゴス

異なる空間と異なる時間が交錯する世界観で、人生や文明の栄枯盛衰を描いた筒井康隆氏の長編小説。1994年に文庫版が刊行されてから親しまれ続けているロングセラー作品です。

文明を失った代わりに人々が超能力を獲得した世界でひたすら旅を続ける主人公・ラゴス。さまざまな体験をするなかで、それでも旅を続けようとするラゴスの目的とは何なのでしょうか…。

生きることの意味を問いかけてくる作品。旅が主題なので、旅に出たい方にもおすすめです。

東海道戦争

中央公論新社 著者:筒井康隆

東海道戦争

筒井康隆氏の初作品集です。斬新な視点で現代を風刺する著者らしさのあふれる短編作品が収められています。

表題作『東海道戦争』では、ある日突然、東京と大阪の戦争が勃発。町中を兵士や自衛隊が行きかい、戦闘機や装甲車も投入され、戦闘は次第に激化します。その目的は、オリンピック後の刺激を求めるマスコミと大衆のためでした。

小説家として長いキャリアを持つ著者の原点とも呼べる作品が楽しめるのが魅力。テンポのよい短編が続くので、気軽に読みたい方にもおすすめの作品です。

残像に口紅を

中央公論新社 著者:筒井康隆

残像に口紅を

1989年に発表、1995年に刊行された筒井康隆氏が贈る実験的長編小説。魅力的でキャッチーな設定も手伝って、時代を超えて愛され続けている作品です。

物語が進むにつれて、ひとつひとつ言葉が消えてゆく世界。「あ」が消えれば、「愛」や「あなた」という言葉もなくなっていきます。言葉のない世界で執筆し、飲食し、人と交わる小説家は何を感じ何を書き残そうとするのでしょうか…。

設定が斬新で秀逸なのが特徴の作品。言葉が消えた世界を想像し、感情移入しながら読むと切なさもひとしおです。

農協月へ行く

KADOKAWA 著者:筒井康隆

農協月へ行く

ユーモアと風刺がふんだんに盛り込まれた、筒井康隆氏が描く短編小説の金字塔です。表題作『農協月へ行く』をはじめ、2006年に実写映画化された『日本以外全部沈没』や1997年の『世にも奇妙な物語 』で放送された『自殺悲願』など全7編を収録しています。

『農協月へ行く』では、旅行代金ひとり6,000万円の月を目指す宇宙船で大騒ぎし、到着した月でも異星人と接触することで国際問題に発展。シニカルな笑いが炸裂します。

どの作品も筒井康隆氏らしいナンセンスな雰囲気を携えているのが魅力。疾走感があり、テンポよく読める作品も多いので気軽に読みたい方にもおすすめです。

わたしのグランパ

文藝春秋 著者:筒井康隆

わたしのグランパ

『時をかける少女』と並ぶ、筒井康隆氏を代表するジュブナイル小説です。第51回「読売文学賞」の小説賞を受賞。2003年には実写映画化もされています。

中学生・珠子の前に、突如として姿を現した祖父・謙三は刑務所から出所したばかりでした。情に厚いグランパは、町の人からも慕われており、珠子の周りで起きる問題も解決していきます。

どの時代でも尽きることのない若者の苦悩を、懐の深いグランパが寄り添い包み込んでいく姿が印象的。孫娘と祖父の交流に心があたたまる、おすすめの筒井康隆作品です。

文学部唯野教授

岩波書店 著者:筒井康隆

文学部唯野教授

大学をパロディー化した珍しい切り口が話題となり、ベストセラーにもなった作品です。

大学にばれないように小説を書いている文学部の教授・唯野先生。講義では、印象批評からポスト構造主義まで壮観な文学理論を教えつつ、一方で日常に起こるさまざまな問題を乗り切りながら過ごしていますが…。

作中では実際に唯野先生の語り口調による文学講義が展開されており、大学の授業に出席しているような気持ちにもなるおすすめの筒井康隆作品。本作品のほかに、筆者自ら『文学部唯野教授のサブ・テキスト』という解説本も出版しています。

大いなる助走

文藝春秋 著者:筒井康隆

大いなる助走

同人誌作家が文学賞を目指して奮闘する姿を描いた筒井康隆氏の小説です。文学の世界とそこに巣食う人たちをパロディ化したことで、出版業界を揺るがした問題作といわれています。

同人誌『焼畑文芸』に掲載された初めての作品が「直廾賞候補」に選ばれた作家・市谷京二。周囲からの羨望と揶揄にさらされながら、受賞にかかわるいざこざに巻き込まれていきます。陰謀の末に悲劇が待っていて…。

文学の世界にはびこる狂気や虚偽がつまびらかにされる風刺作。なかには、実在の人物がモデルといわれている登場人物もいて、推察しながら読むとより一層楽しめる作品です。