社会派推理小説というブームを巻き起こした「松本清張」。巧みな構成と読みやすい文章が魅力です。作品のジャンルにかかわらず、財産・名声・貧困・差別など普遍的なテーマを描いているのが特徴。時代を超えて多くの人々に愛されている作家です。

そこで今回は、松本清張のおすすめ小説をご紹介します。映画化・ドラマ化された人気作品もピックアップ。松本清張作品の特徴も解説するので、ぜひチェックしてみてください。

※商品PRを含む記事です。当メディアはAmazonアソシエイト、楽天アフィリエイトを始めとした各種アフィリエイトプログラムに参加しています。当サービスの記事で紹介している商品を購入すると、売上の一部が弊社に還元されます。

日本ミステリー界を代表する作家「松本清張」とは?

松本清張は、1909年生まれ、福岡県出身の作家です。さまざまな職を経たのち、朝日新聞西部本社に入社。1951年に『西郷札』が直木賞候補作に選出され、当時としては異例の42歳で作家デビューを果たします。

1953年には『或る「小倉日記」伝』で第28回芥川賞を受賞。専業作家になってからの1958年に発表した『点と線』『眼の壁』がともにベストセラーになり、「社会派推理小説」という新たなジャンルを確立させました。

推理小説以外にも、歴史小説・ノンフィクション・純文学などさまざまなジャンルの作品を手掛け、それぞれの分野で名作を輩出。日本ジャーナリスト会議賞・吉川英治文学賞・菊池寛賞など、数々の名誉ある賞に輝きました。

1992年に亡くなるまで精力的に執筆活動を続け、長編・短編を合わせた総作品数は1000編におよびます。戦後の”日本文学界の巨人”とも称された人気作家の1人です。

松本清張作品の魅力

日本ミステリー界を代表する作家である松本清張。多くの読者に”社会派”と評価された松本清張の推理小説は、意外性のあるトリックだけでなく、犯罪に至るまでの動機や関係者の内面がていねいに描かれます。現代においても共感できる心の機微に触れられるのが魅力です。

世界観も、リアリティを感じられるような日常的な設定のモノや、当時の社会的な背景を取り入れたモノが多くを占めています。日常に潜む犯罪や、誰もが経験しうる危機を題材にしているのがポイント。巧みな文章構成とリズミカルな文体で読みやすいのも特徴です。

小説以外に手掛けたノンフィクション・古代史論などは、綿密な取材と資料分析をもとに、当時の社会問題や歴史観に独自の見解を投げかけています。どの作品にも人間の欲望や貧困、差別などの普遍的なテーマ性を感じられるのが、松本清張作品が長く読み継がれる理由のひとつです。

松本清張のおすすめ小説

ガラスの城 新装版

講談社 著者:松本清張

ガラスの城 新装版

とある企業で起こった殺人事件の真相と、その裏に隠された人間の欲望を明らかにしていく長編推理小説の名作。たびたび映像化されており、2024年にも新作ドラマが放送されました。

社員旅行の夜に、エリートコースの販売部課長が行方不明に。のちに惨殺死体となって発見され、社内に動揺が走ります。そんななかで、ある女性社員は執拗に課長の死の謎を追いかけていました。課長殺害の疑惑に浮かんできた社員たちには、それぞれ意外な素顔があり……。

都心の高層ビルに勤める一流会社員たちの内側に渦巻く人間の欲望を、殺人事件と絡めながら鮮やかに描いた1作。事件を追う女性社員の手記という形式で物語が進んでいく構成にも注目しながら読みたい、おすすめの松本清張作品です。

顔・白い闇

KADOKAWA 著者:松本清張

顔・白い闇

松本清張が1956年に発表した短編推理小説『顔』を含む短編集です。同作品は第10回日本探偵作家クラブ賞を受賞。2024年に新作としてドラマ化もされています。

人気とは裏腹に、破滅へと進んでいく役者の過去の秘密を暴いていく『顔』。出張先から帰らない夫と、その裏に隠された思いがけない裏切りと罠を描いた『白い闇』。平凡な日常生活の陰に潜む人間の罪と罰を巧みに表現した、全5編が収録されています。

表題作のほか、松本清張の”推理小説の出発点”とも評される人気作『張込み』が併録されているのもポイント。罪を犯した人間の深層心理をリアルに捉えた、スリリングな推理小説を読みたい方におすすめの作品集です。

けものみち 上

新潮社 著者:松本清張

けものみち 上

人間の倫理を踏み外した者たちの、色欲にまみれた人間ドラマを描いた長編小説。松本清張が手掛けた社会派サスペンスの代表作として知られています。複数回にわたってドラマ化もされている人気作の1つです。

物語の中心は、難病の夫を養う31歳の女性・成沢民子。割烹旅館で働く彼女は、夫に人生を縛られる暮らしに不満を抱えていました。果てには、赤坂のホテル支配人にそそのかされて夫を焼殺し、民子は行方をくらませることになります。

民子を犯人だと疑い、執拗に追い続ける刑事・久恒。やがて、彼女が政財界の黒幕・鬼頭の側にいることを突き止めますが……。

さまざまな顔を使い分ける民子の姿を追いながら、その裏で複雑に絡み合う日本の権力機構の闇の一面を明らかにしていきます。悪に手を染めていく人々の緊迫したドラマを楽しめる、おすすめの松本清張作品です。

影の車 松本清張プレミアム・ミステリー

光文社 著者:松本清張

影の車 松本清張プレミアム・ミステリー

人間の心理に潜む影を浮き彫りにした、松本清張の傑作短編集です。全7編の短編を収録。サスペンスとしてドラマ化されたほか、第1話『潜在光景』は1970年に映画化もされました。

浜島幸雄は帰宅途中に偶然、20年ぶりに同郷の女性・小磯泰子と再会を果たします。妻がいるものの関係は冷えており、4年前に夫に先立たれた泰子の元へ頻繁に通うようになる浜島。しかし、泰子には6歳の息子・健一がいたのです。

健一の存在に気味の悪さを覚えた浜島が、突拍子もない妄想に取り憑かれていく様が描かれる『潜在光景』。そのほかにも、普遍的な人間の業や悪事に手を出す人間の心理を巧みに表現した珠玉の短編が揃っている、おすすめの作品集です。

共犯者

新潮社 著者:松本清張

共犯者

過去に犯した罪の完全犯罪をもくろむ男の自滅を描いた『共犯者』をはじめとする、10編の短編を収めた松本清張の作品集です。表題作は映画化および複数回ドラマ化もされています。

かつて、銀行を襲って得た金を仲間と山分けにした内堀彦介。その金で立ち上げた事業で成功を収めたものの、共犯した仲間の手によって真相が明らかになるのではと疑心暗鬼になってしまいます。やがて、5年前に別れた共犯者を監視するようになりますが……。

表題作のほか、たび重なる人生の失敗と欲求不満が引き起こす殺人衝動を捉えた『発作』や『恐喝者』『愛と空白の共謀』などの骨太な短編を収録。日常と隣り合わせの不穏な出来事と印象的な心理描写の数々に引き込まれた読者も多い、おすすめの短編集です。

砂の器 上

新潮社 著者:松本清張

砂の器 上

“松本清張の不朽の名作”と名高い長編ミステリー小説の傑作です。累計部数は460万部を記録。1974年に公開された映画は高い評価を集め、ドラマ化のたびに話題を呼んだ松本清張の代表作のひとつです。

物語は、東京・蒲田駅の操車場で男の死体が発見されるところからスタート。事件の手がかりは、被害者の東北訛りと「カメダ」という言葉のみでした。しかし、必死の捜査も虚しく、捜査本部は解散。その後も刑事・今西が事件を追い続けるなか、新たな殺人事件が発生し……。

1960年代当時の社会的背景とともに、刑事の地道な捜査で事件の裏側を明らかにしていく本格推理小説。松本清張の金字塔的名作としてチェックしておきたい、おすすめの1作です。

或る「小倉日記」伝 傑作短編集 一

新潮社 著者:松本清張

或る「小倉日記」伝 傑作短編集 一

1953年に芥川賞を受賞した表題作『或る「小倉日記」伝』を含む作品集です。松本清張が手掛けた現代小説の名作が、全9編収録されています。

身体が不自由な青年が、史実に残っていない小倉在住時代の森鴎外の足跡を、歳月をかけて追い求める『或る「小倉日記」伝』。旧石器時代の人骨の発見と研究に生涯を捧げた中学教師が、功績を横取りされてしまう『石の骨』など、多彩な短編を堪能できます。

表題作は、肉体的な生きづらさと激しい自意識を抱えながら、懸命に生きる青年の姿を描いた松本清張の出世作です。哀愁漂う純文学的な作品が多く収められた短編集を読みたい方は、ぜひ手に取ってみてください。

黒革の手帖 上

新潮社 著者:松本清張

黒革の手帖 上

欲望渦巻く夜の世界に生きる女性の野望をスリリングに描いた長編サスペンス小説。上下巻で累計180万部を突破した松本清張のヒット作です。テレビドラマはたびたびリメイク版が放送され、2006年には舞台化もされています。

元銀行員の原口元子は、職場で横領した7500万円を資本に銀座のクラブのママへと転身した稀代の悪女。店のホステスのパトロンに目をつけた元子は、彼の隠し預金から5000万円を出させることに成功します。さらに、次の獲物に狙いを定め、誘いに乗りますが……。

上巻では、松本清張作品の”最強の悪女”と謳われるヒロインが、夜の世界でさまざまな紳士たちを相手に成り上がっていく様が描かれます。ハラハラドキドキできる、ピカレスクサスペンスが好きな方におすすめの名作です。

点と線

新潮社 著者:松本清張

点と線

完璧な動機とアリバイのある事件の謎を解き明かしていく長編推理小説。本作品をきっかけに社会派推理小説というジャンルが新たに確立したとされ、”松本清張の最高傑作”とも評される名作です。

九州・福岡の海岸で男女の死体が発見されます。一見、単なる心中事件かと思われますが、その裏にはある汚職事件に絡んだ恐ろしい計略が張り巡らされていたのでした。殺害予想時刻に容疑者は北海道にいたというアリバイを前に、捜査陣はどのように立ち向かうのでしょうか。

列車の時刻表と「空白の4分間」の謎を軸に、本格的なアリバイ崩しを楽しめるのが魅力。汚職事件という社会的なテーマ性も織り交ぜられており、読みごたえがあります。松本清張の長編作品を初めて読む方にもおすすめの1作です。

ゼロの焦点

新潮社 著者:松本清張

ゼロの焦点

太平洋戦争直後の混乱期を背景に生じた悲劇を、サスペンスフルな事件のなかに描いた長編ミステリー小説。松本清張の代表作の1つに数えられ、映画化・ドラマ化もされた秀作です。

仕事の引き継ぎと称して出かけたまま、新婚1週間で失踪してしまった鵜原憲一。そんな夫の行方を追って、妻・禎子は北陸の地へ足を踏み入れます。ようやく手がかりを掴んだ彼女が知ったのは、自殺として処理されていた夫の姓が「鵜原」ではないという衝撃の事実でした。

夫に隠された陰の生活が明らかになるとともに、次々と関係者が殺されていきます。事件の背景にある悲しい人間ドラマと、巧みな心理描写も見どころ。スピード感のある展開で一気読みしたという読者も多い、おすすめの松本清張作品です。

日本の黒い霧 上

文藝春秋 著者:松本清張

日本の黒い霧 上

太平洋戦争後の日本で起きたさまざまな怪事件の真相を、松本清張が独自に収集した情報と推理で迫った連作ノンフィクションです。「黒い霧」という表現が流行語になるなど、大きな社会現象を巻き起こしました。

閉店直後の銀行で、12人が毒物によって殺害された『帝銀事件の謎』。現職だった国鉄総裁が失踪し、無惨な姿で発見された『下山国鉄総裁謀殺論』。GHQの占領下にあった日本で真相が解明されなかった不可思議な事件の数々に、松本清張がメスを入れていきます。

当時の怪事件の背後には権力の圧力があったと考えた、著者ならではの昭和史観を垣間見られる1作。戦後の混乱が伝わるような、生々しい筆致で綴られています。松本清張のノンフィクション作品の傑作を読んでみたい方におすすめです。

昭和史発掘 1

文藝春秋 著者:松本清張

昭和史発掘 1

昭和初期の日本現代史において、表舞台に出てこなかった事実に焦点を当てたノンフィクション作品。全9巻が刊行された大作であり、”松本清張のライフワーク”とも称される1作です。

政界絡みの事件を捜査している際に起こった『石田検事の怪死』。部落問題について真正面から切り込んだ『北原二等卒の直訴』。そのほか、1巻では『陸軍機密費問題』『朴烈大逆事件』『芥川龍之介の死』など、生々しく面白い昭和史の出来事が全5編収録されています。

当事者への取材を積み重ね、関連資料を膨大に収集した上で、松本清張独自の昭和史観を展開しているのがポイント。小説家ならではの視点で綴られるリアルな人物描写や物語性にも定評があります。社会派作家としての分析力を垣間見られるおすすめのシリーズ作品です。

松本清張の小説の売れ筋ランキングをチェック

松本清張の小説のランキングをチェックしたい方はこちら。