社会派推理小説というブームを巻き起こした「松本清張」。巧みな構成と読みやすい文章が魅力です。作品のジャンルにかかわらず、財産・名声・貧困・差別など普遍的なテーマを描いているのがポイント。時代を超えて多くの人々に愛されている作家です。

そこで今回は、松本清張のおすすめ小説をご紹介します。映画化・ドラマ化された人気作品もピックアップ。松本清張作品の特徴も解説するので、ぜひチェックしてみてください。

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「松本清張」とは?

松本清張は、1909年福岡県生まれの小説家です。尋常高等小学校卒業後は給仕や印刷所の見習いなどを行い、34歳のときに朝日新聞九州支社に正社員として入社しました。

1950年、懸賞小説に応募した『西郷札』が入選し、直木賞候補に選出。1953年には『或る「小倉日記」伝』で第28回芥川賞を受賞しています。作家活動に専念してからは、社会派推理小説や独自の史観で考察を深めた古代史、近現代史の闇に迫るノンフィクションなどを精力的に執筆しているのが特徴です。

吉川英治文学賞や菊池寛賞、NHK放送文化賞など数々の賞を受賞。1992年に82歳で亡くなるまで、長編や短編を合わせて1000編におよぶ作品を生み出しました。代表作に『点と線』『ゼロの焦点』『砂の器』『日本の黒い霧』などがあり、今もなお多くの作品が映像化されています。

松本清張作品の特徴

松本清張は「社会派推理小説」というジャンルで人気の高い作家です。社会性のある事件をテーマに、事件が起きた背景や問題点を明らかにするのが特徴。男女の恋愛や愛憎劇も多く描かれていますが、いやらしく感じることはなく品格の漂う表現であることも魅力のひとつです。

また、小説にとどまらず、ノンフィクション・評伝・古代史・現代史など、さまざまな分野で独自の作風を築きました。巧みなストーリー構成とわかりやすく読みやすい文章が魅力です。

どの分野でも一貫しているのは、ごく普通の人々を描くことで歴史や社会の闇に迫ろうと試みた点。社会が抱える問題を個人のレベルに落とし込み、多くの人々の共感を得ています。松本清張作品の根底には、財産・名声・貧困・差別など、普遍的なテーマがあるのも時代を超えて愛される理由です。

松本清張のおすすめ小説

わるいやつら 上

新潮社 著者:松本清張


わるいやつら 上

病院を舞台にしたサスペンスミステリー。上下巻からなる長編小説です。1980年に映画化されたほか、4度にわたってドラマ化されています。

医学界の重鎮だった亡き父の後を継ぎ、病院長となった戸谷信一。熱心に患者を診るわけでも、経営に専心しているわけでもありません。病院の経営は苦しく、赤字は増えるばかり。しかし、戸谷は苦にしませんでした。なぜなら、穴埋めの金は女からしぼり取ればよいと考えているからです…。

色欲のために病院の中で計画される、恐るべき完全犯罪を描いた作品。物語の展開スピードが速く、どんどん読み進めたくなる1冊。主人公の思考や心理が冷静に描写されています。

黒い福音

新潮社 著者:松本清張


黒い福音

実際に起きた「BOACスチュワーデス殺人事件」をモデルに、推理と解決を提示した作品です。1984年と2014年にはドラマ化もされています。

救援物資の横流しや麻薬の密輸など、「神の名」のもとに行われた犯罪の数々。そんななか、外国人神父による日本人スチュワーデス殺人事件が発生します。

実際の事件では、日本の国際的立場が弱かったことから、核心に迫りながらも逮捕には至りませんでした。本作品は、事件の顛末に強い疑問と怒りを抱いた松本清張氏が、綿密な調査を重ねて書き上げています。実録物の小説が好きな方におすすめの長編推理小説です。

ゼロの焦点

新潮社 著者:松本清張


ゼロの焦点

松本清張の代表作とされる長編小説です。1961年、2009年と2度にわたって映画化されました。また、ドラマ化も複数回されている人気作品です。

仕事の引き継ぎに行ってくると出かけたまま、新婚1週間で失踪した夫・鵜原憲一。夫の行方を求めて、妻である禎子は北陸の街を尋ね歩きます。ようやく手がかりをつかんだものの、自殺として処理されていた夫の姓は「鵜原」ではなく…。夫の陰の生活が明らかになるにつれ、関係者が次々と殺されていきます。

太平洋戦争直後の混乱に端を発する悲劇を描いた作品。風景や人物が目に浮かぶような描写が魅力です。テンポのよい文章で読みやすく、一気に引き込まれる方が多いのもポイント。松本清張作品を初めて読む方にもおすすめです。

砂の器 上

新潮社 著者:松本清張

砂の器 上

松本清張作品の金字塔ともいえる名作。上下巻で構成された長編です。1961年に初版を刊行。映画化、ドラマ化もされている人気作品です。

東京・蒲田駅の操車場で男性の死体が発見されました。被害者の東北訛りと「カメダ」という言葉が唯一の手がかりでしたが、必死の捜査もむなしく捜査本部は解散。しかし、老練刑事の今西は仕事の合間をぬって事件を追い続けていました。少しずつ事実が判明し始めた頃、新たな殺人事件が発生します。

映画やテレビドラマなどでヒットした社会派ミステリー。本格的な長編推理小説を楽しみたい方におすすめの作品です。

黒革の手帖 上

新潮社 著者:松本清張

黒革の手帖 上

累計150万部を超えたベストセラー長編小説。上下巻で構成されています。ドラマ化だけでなく、舞台化もされている作品です。

7500万円の横領金を元に、銀座のママに転身した女子銀行員・原口元子。店のホステス・波子のパトロンである産婦人科病院長・楢林の隠し預金を調べ上げ、5000万円を出させるのに成功します。さらに、医大専門予備校の理事長・橋田を利用すべく誘いに応じる元子でしたが…。

夜の紳士たちを獲物に欲望を広げていく女性を描いた作品です。刊行から40年以上経ってもなお、読み継がれている名作。夜の世界に生きる悪女の物語が気になる方におすすめの松本清張作品です。

けものみち 上

新潮社 著者:松本清張

けものみち 上

松本清張による社会派サスペンスの代表作です。上下巻で構成された長編小説。1965年に映画化され、ドラマ化もされています。

難病で回復の見込みがない夫・寛次を養うために割烹旅館で働く成沢民子。民子は赤坂のホテル支配人・小滝にそそのかされ夫を焼殺し、行方を絶ってしまいます。刑事・久恒は直感で民子を疑い、行方を追ううちに政財界の黒幕・鬼頭の女になっていることを突き止めるのですが…。

人の道をはずれ「けものみち」に踏み入った人の行く末を描いています。色と欲にまみれた人間の姿を覗き見てみたい方におすすめの作品です。

点と線

文藝春秋 著者:松本清張

点と線

松本清張の記念碑的作品とされるトラベルミステリー。風間完画伯の挿画入りです。

博多・香椎海岸で発見された某省の課長補佐と女性の死体。心中事件のように思われましたが、事件の裏には汚職をめぐる恐るべきワナが隠されていました。「空白の4分間」に隠された秘密とは一体何なのでしょうか。

「社会派推理小説」という新しいジャンルを確立したといわれる作品です。時刻表を駆使した綿密なトリックと、アリバイ崩しを楽しめるのが魅力。鉄道や旅が好きな方にもおすすめです。

球形の荒野 上

文藝春秋 著者:松本清張

球形の荒野 上

松本清張が描く、戦争から帰還した「亡霊」が引き起こす謎の殺人事件をテーマにした作品。上下巻で構成された長編ミステリーです。1975年に映画化。複数回にわたってドラマ化もされています。

芦村節子は旅で訪れた奈良・唐招提寺の芳名帳に、外交官だった叔父・野上顕一郎の筆跡を発見します。大戦末期に某中立国で亡くなったとされている野上。“よもや…?”という思いが節子の胸をよぎります。誰もが節子の話を取り合わないなか、野上の娘の恋人・添田彰一はある疑念を抱くのでした…。

終戦工作で存在を消された外交官の娘に対する愛、人間の内面にひそむ悪と闇を暴いた作品。ミステリーとしてはもちろん、人間ドラマとしても楽しめるのが魅力の松本清張作品です。

或る「小倉日記」伝 傑作短編集 一

新潮社 著者:松本清張

或る「小倉日記」伝 傑作短編集 一

全6巻からなる「松本清張傑作短編集シリーズ」の1作品目。本作品は現代小説の第1集です。第28回芥川賞受賞作の『或る「小倉日記」伝』をはじめ、12編の小説を収録。表題作は1993年に松本清張1周忌特別企画としてドラマ化もされています。

身体が不自由で孤独な青年が、小倉在住時代の森鴎外を追求する様子を描いた『或る「小倉日記」伝』。旧石器時代の人骨を発見した中学教師が業績を横取りされてしまう『石の骨』、大学教授が悪女にひっかかり転落していく『笛壺』などを収録しています。

昭和初期の庶民の苦悩が描かれた短編集。どの物語にも物悲しい余韻が残ります。推理小説作家のイメージが強い松本清張ですが、純文学的な作品も魅力。文章が読みやすく、初めて松本清張作品を読む方にもおすすめです。

西郷札 傑作短編集 三

新潮社 著者:松本清張

西郷札 傑作短編集 三

「松本清張傑作短編集シリーズ」の3作品目。時代小説の第1集です。デビュー作である『西郷札』をはじめ、『くるま宿』『恋情』などを含む全12編を収録しています。表題作は、1991年に作家活動40周年記念としてドラマ化もされました。

西南戦争の際、薩軍が発行した軍票をもとに一攫千金の夢を見た男の破滅を描いた『西郷札』。そのほか、江藤新平の末路を実録的に描いた『梟示抄』、同じ日に生まれた大名・家老・軽輩の子供たちの運命をたどる『啾々吟』などを収録しています。

全編をとおして、嫉妬や憎悪、悲哀など人間の業を描いているのが特徴。歴史を題材にした物語が好きな方におすすめです。

張込み 傑作短編集 五

新潮社 著者:松本清張

張込み 傑作短編集 五

「松本清張傑作短編集シリーズ」の5作品目。推理小説の第1集です。全8編を収録。1958年に映画化されたほか、ドラマ化もされている『張込み』をはじめ、収録されている作品の多くが映像化されています。

表題作である『張込み』は殺人犯を張込み中の刑事の目に映った、平凡な主婦の隠された過去を描いた物語。「一事不再理」という刑法の条文にヒントを得た『一年半待て』のほか、『声』『鬼畜』『地方紙を買う女』などを収録しています。

傑作と称される短編推理小説が揃っているため、松本清張作品を初めて読む方にもおすすめ。短編集ながら内容が濃く、読み応えも十分です。

黒い画集

新潮社 著者:松本清張

黒い画集

7編の小説を収めた連作短編集です。『証言』『遭難』『寒流』の3編が映画化されており、『坂道の家』や『証言』などドラマ化も多数されています。

『証言』は安全と出世を願って平凡に生きる男の物語。あるとき、男の安定した生活に影がさしはじめます。絶対に人に知られてはならない、後ろ暗い女関係。部下であるOLとの情事を隠しとおすために、男は殺人容疑を受けた知人のアリバイを否定し続けます。

平凡な日常生活にひそむ深淵の恐ろしさを描いた短編集です。身近に起こりえるリアルな怖さを感じられるのが魅力。読み応えのある短編集を探している方におすすめです。

共犯者

新潮社 著者:松本清張

共犯者

スリリングな短編小説を10編収めた短編集。なかでも『共犯者』は1958年に映画化、ドラマ化もされている人気作品です。

表題作の『共犯者』は疑心暗鬼から自滅していく男の物語。主人公・内堀彦介は、銀行を襲って仲間と山分けにした金で商売を始めます。事業に成功した内堀は真相が明るみに出ることを恐れ、5年前に別れた共犯者の監視を開始しますが…。

そのほか、『発作』『恐喝者』『愛と空白の共謀』などを収録しています。バラエティに富んだ内容で飽きずに読みやすいのがポイントです。松本清張ならではの心理描写も魅力。人の心の奥底を覗き見るような小説が好きな方におすすめです。

日本の黒い霧 上 新装版

文藝春秋 著者:松本清張

日本の黒い霧 上 新装版

戦後の怪事件に切り込んだノンフィクション作品です。上下巻あわせて800ページを超える大作。昭和史に残る名作といわれています。

戦後の日本で起きた重大事件の背後には、当時日本を占領していた米国・GHQの陰謀が隠されていると考えた松本清張氏。名推理として知られる『下山国鉄総裁謀殺論』などを収録しています。

松本清張氏の視点で事件の真相に迫った作品。多くの資料と小説家ならではの考察に基づく推理を楽しみたい方におすすめです。

昭和史発掘 1 新装版

文藝春秋 著者:松本清張

昭和史発掘 1 新装版

日本現代史の埋もれた事実に目を向けた一作。全9巻のうちの第1巻にあたる作品です。

政界にからむ事件の捜査中に起きた『石田検事の怪死』、部落問題を取り上げた『北原二等卒の直訴』のほか、『芥川龍之介の死』『陸軍機密費問題』など全5編を収録しています。

膨大な未発表資料と綿密な取材をベースに、独自の歴史観を展開しているのが魅力。生々しくおもしろい昭和史が楽しめます。ノンフィクションが好きな方におすすめの作品です。

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