笑いあり涙ありの作品を手掛け、ドラマ化・映画化もされる人気作も数多く世に出している作家「浅田次郎」。家族愛や人情を描いた作品だけでなく、時代小説、歴史小説も人気があります。

そこで今回は、浅田次郎のおすすめ小説をご紹介。浅田次郎作品の魅力や作風についても解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

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泣ける作品を多く手掛ける作家「浅田次郎」とは?

浅田次郎は1951年東京都生まれです。“小説を書いて生きていきたい”と子供の頃から決めていたほど、小説を読むのも書くのも好きだったといいます。

高校卒業後は、自衛隊に入隊。その後はアパレル会社の営業として働き、自営業も経験しています。働きながら小説を書き続け、40歳でデビュー。1995年に『地下鉄に乗って』で吉川英治文学新人賞を受賞して以来、多くの賞を受賞しています。

1997年『鉄道員』で直木賞、2000年『壬生義士伝』で柴田錬三郎賞、2006年『お腹召しませ』で中央公論文芸賞と司馬遼太郎賞を獲得。

ほかにも、「蒼穹の昴シリーズ」をはじめとする文学界への貢献で2015年に紫綬褒章を受章、2019年には菊池寛賞も受賞しています。

浅田次郎作品の特徴や魅力

浅田次郎作品の魅力は、心あたたまるストーリー。涙なしには読めないという声の多いものから、コメディタッチで思わず笑ってしまうような筆致の作品まで、さまざまな小説が出版されました。

ドラマ化・映画化された作品は、多くがヒット作となっています。『鉄道員』は1999年に映画化され、第23回日本アカデミー賞を受賞、『壬生義士伝』は2003年に映画化され、第27回日本アカデミー賞を受賞しました。

ふだん小説をあまり読まない方も、楽しんで読める作品が多い作家です。

浅田次郎のおすすめ小説

お腹召しませ 新装版

中央公論新社 著者:浅田次郎


お腹召しませ 新装版

司馬遼太郎賞・中央公論文芸賞を受賞した作品。表題作を含めた時代小説6編が収められた短編集です。

婿養子に公金を持ち出されてしまった高津又兵衛。不祥事の責任をとり、お家を守るために妻子や部下に“お腹召しませ”と切腹を求められます。武士の本義が薄れた幕末期。仕事と家庭と世の中とに翻弄される又兵衛が、戦う男の本分を問い直します。

男の悩みを乗り越える侍たちの葛藤。男女問わずおすすめの、笑いあり、涙ありの浅田次郎作品です。

壬生義士伝 上

文藝春秋 著者:浅田次郎


壬生義士伝 上

浅田次郎初の時代小説です。2000年に第13回柴田錬三郎賞を受賞し、2002年にドラマ化、2003年に映画化もされています。

主人公は、盛岡南部藩の脱藩浪士で新選組隊士の吉村貫一郎です。小雪の舞う1月の夜更け、大阪・南部藩蔵屋敷に満身創痍でたどり着いた貫一郎。貧しさに喘いで脱藩し、壬生浪と蔑称された新選組へと入ったのでした。

妻子への仕送りのために守銭奴と呼ばれようと、“人斬り貫一”と恐れられようと、飢えている人には握り飯を施す庶民の心をもった男。その非業の生涯を描きます。

日本人の「義」とは何かを問う、“浅田次郎版新撰組”とも呼ばれる1冊。家族への愛、友との愛のために生きる貫一郎の姿に、心を打たれます。時代小説ファンの方以外にもおすすめの浅田次郎作品です。

終わらざる夏 上

集英社 著者:浅田次郎


終わらざる夏 上

戦争をモチーフにした、浅田次郎の長編小説。第64回毎日出版文化賞受賞作です。

1945年、敗戦も濃厚な夏のある日。すでに沖縄は陥落しているなかでの本土決戦用の大規模な動員計画を前に、国民は疲弊していました。

そんな状況下で、3人の男たちのもとに召集令状が舞い込みます。45歳の兵役年限直前に赤紙を受け取った片岡。妻と息子と、アメリカへ移住する夢を抱いていた片岡。片岡とその家族を中心に、日本とソ連の兵士達や市民たちの様子が描かれます。

終戦後直後の知られざる戦いを舞台に、戦争の理不尽さを描く1冊。歴史小説が好きな方にもおすすめの浅田次郎作品です。

蒼穹の昴 1

講談社 著者:浅田次郎

蒼穹の昴 1

日中合同でテレビドラマ化もされた歴史小説。「蒼穹の昴シリーズ」の1巻目にあたります。続編として『珍妃の井戸』『中原の虹』『マンチュリアン・リポート』『天子蒙塵』が出版されているシリーズもので、累計450万部を突破している作品です。

極貧の少年・春児は、“汝は必ずや、あまねく天下の財宝を手中に収むるであろう”と、占い師から予言を与えられます。同じ村の地主の息子・文秀が科挙試験のために上京することになると、文秀を兄のように慕う春児は一緒に都に行くことになりました。それぞれの志を胸に、文秀は難関の試験に臨み、春児は自らの生き方を探します。

幼馴染2人の運命から目が離せない人気シリーズ。中国史や歴史が好きな方にもおすすめの浅田次郎作品です。

一路 上

中央公論新社 著者:浅田次郎

一路 上

第3回本屋が選ぶ時代小説大賞を受賞した作品です。テレビドラマ化だけでなく、作中で舞台となった地を巡る紀行番組『浅田次郎と歩く小説「一路」の世界』も放送されました。

19歳の小野寺一路は、失火で父が不慮の死を遂げたのをきっかけに江戸から西美濃の田名部郡に帰参します。初めて訪れた故郷で与えられたのは、小野寺家代々の御役目である参勤道中御供頭の役職でした。

一路は、差配に不手際があれば家名断絶という危機的状況のなか、家伝・行軍録を手にします。行軍録を頼りに、江戸見参の道中へと向かうのでした。時代小説ファンの方だけでなく、旅行好きな方にもおすすめの作品です。

プリズンホテル 1 夏

集英社 著者:浅田次郎

プリズンホテル 1 夏

「プリズンホテルシリーズ」の1作目で、浅田次郎による任侠物作品です。本作品以外にも、四季を冠したシリーズが出版されています。

極道小説を手掛けて売れっ子になった木戸孝之介。幸之介の身内でヤクザの大親分・仲蔵が、温泉リゾートホテルのオーナーになることに。しかし、そのホテルは任侠団体専用の施設だったのです…。

「プリズンホテル」と呼ばれるホテルの中で交錯するのは、奇妙な人々が繰り広げる人間関係。笑いあり、涙ありで展開していくストーリーがおすすめの浅田次郎作品です。

活動寫眞の女 新装版

双葉社 著者:浅田次郎

活動寫眞の女 新装版

京都の街やイベントが細かに描写されている1冊。京都大学に通う主人公「僕」が映画撮影所のアルバイトをするところから物語は始まります。

大の日本映画ファンの「僕」は友人・清家忠昭の紹介で、映画の都・太秦の撮影所でアルバイトをすることになります。ある日、清家は撮影現場で出会った絶世の美女に恋に落ちました。しかし、彼女の正体は、30年前に自殺した大女優の幽霊だったのでした…。

恋愛小説が好きな方はもちろん、京都が好きな方にもおすすめの浅田次郎作品です。

地下鉄に乗って 新装版

講談社 著者:浅田次郎

地下鉄に乗って 新装版

吉川英治文学新人賞を受賞し、映画化・舞台化もされた人気作品。すべての地下鉄通勤者に捧ぐ愛と冒険の傑作ファンタジーです。

永田町の地下鉄駅の階段を上がると、そこは30年前。高校生で自殺をした兄の命日でした。家族と暮らした懐かしい風景が広がる街中で、兄の姿を見つけた真次は運命を変えようと動き出します。封印された過去に行った真次は、一体どうなってしまうのでしょうか。

人生という奇跡に触れる、心あたたまる1冊。鉄道が好きな方などにもおすすめの作品です。

日輪の遺産 新装版

講談社 著者:浅田次郎

日輪の遺産 新装版

戦争をモチーフにした浅田次郎作品。2011年に映画化された、人気の高い歴史小説です。

終戦間際の1945年、軍人たちに下されたのはとある密命。帝国陸軍がマッカーサーから奪った時価200兆円もの財宝を、陸軍工場へ移送し隠匿せよとのことだったのです。

戦争は、日本人に何を残したのかを現代を生きる人間に問いかける名作。日本の歴史に詳しくない方にもおすすめの1冊です。

鉄道員(ぽっぽ屋)

集英社 著者:浅田次郎

鉄道員(ぽっぽ屋)

第117回直木賞を受賞した短編集。表題作『鉄道員』は映画化・コミック化もされている人気作品です。

『鉄道員』は、かつては炭鉱の町として栄えたけれど、今はさびれたローカル線の終点となった幌舞駅を舞台とした作品。娘を亡くした日も、妻を亡くした日も、駅に立ち続けた駅長に訪れた奇跡を描いています。

そのほか、『ラブ・レター』『角筈にて』『うらぼんえ』『オリヲン座からの招待状』など8作品を収録しています。心あたたまる作品を探している方はチェックしてみてください。

椿山課長の七日間

集英社 著者:浅田次郎

椿山課長の七日間

死後の世界をめぐるファンタジー小説。2006年に映画化、2009年にはテレビドラマ化もされた人気作品です。

主人公・椿山和昭はふと気付けばあの世の入り口にいました。7日間で戻ること、復讐をしないこと、正体を明かさないことを条件に美女の姿で現世に戻った椿山課長は、無事に疑いを晴らし、遺り残した想いを遂げられるのでしょうか。

山あり谷あり、くすっと笑える浅田次郎作品が読みたい方におすすめの作品です。

憑神

新潮社 著者:浅田次郎

憑神

幕末の江戸を舞台とした、浅田次郎による長編時代小説。2007年に映画化もされています。

御家人・別所彦四郎は、文武両道の優れた武士でありながら出世の道をしくじってしまいます。彦四郎は、夜鳴きそば1杯の小遣いもままならないような貧乏生活を送っていました。ある夜、酔った勢いで小さな祠で神頼みをしてみると、なんと神様が現れます。しかし、この神様は貧乏神だったのです…。

いわくつきの祠に手を合わせたばかりに、災いを招く神に取り憑かれた彦四郎の生き様に注目。スカッとする作品が読みたい方におすすめの浅田次郎作品です。

帰郷

集英社 著者:浅田次郎

帰郷

“もう二度と帰れない、遠きふるさと”という言葉が添えられている、浅田次郎による反戦小説集です。第43回大佛次郎賞を受賞しています。

戦争は、人々の生活を大きく変えてしまいました。戦争に巻き込まれ、生き方全てを変えられてしまった市井の人々によって語られます。

“いまこそ読んでほしい”との覚悟を持って書いたと謳われている1冊です。

大名倒産 上

文藝春秋社 著者:浅田次郎

大名倒産 上

江戸とお国を股にかけたエンターテイメント、浅田次郎の長編小説。現代にも身につまされるお金をめぐる物語を描いています。

丹生山松平家を継いだばかりの若き殿様は江戸城で脂汗を垂らしていました。親の世代から残された200年分の借金は、奇跡でも起こらない限り返しようもない額。父はこの状況を見越して、4男庶子の小四郎に家督を継がせていました。父祖から受け継いだお家を潰すまい、領地の民を路頭に迷わせまいと、小次郎は奮戦します。

現代にも通じるところも多い、政治とお金をモチーフにしたストーリーに注目してみてください。

天国までの百マイル 新装版

朝日新聞出版 著者:浅田次郎

天国までの百マイル 新装版

映画化・ドラマ化・舞台化もされている人気の作品。著者自らの体験をもとに描かれているストーリーです。

事業に失敗して会社を潰し、妻子と別れ家庭も失った40歳の城所安男。心臓病を患う老母の命を救うため、天才外科医のいる病院を目指した旅に出ます。

親子の絆と男女の悲しい恋を描く1冊。人の心のあたたかさ、優しさに触れたい方にもおすすめの浅田次郎作品です。

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