医師でありながら、作家としても多くの名作を生み出してきた「海堂尊」。医師としての豊富な経験に基づくリアリティに溢れた医療シリーズを中心に、数多くの作品を手掛けています。

今回は、海堂尊氏の世界観を構成する数ある小説から、まず手に取りたいおすすめの作品をご紹介。海堂尊作品の魅力と楽しみ方も併せて解説しているので、おすすめの作品とともに参考にしてみてください。

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医師でありながら小説作家「海堂尊」作品の魅力

外科医と病理医を経験し、医学博士でもある海堂尊氏。2005年『チーム・バチスタの崩壊』(後に『チーム・バチスタの栄光』に改題)でこのミステリーがすごい!大賞を受賞し、作家デビューしました。

医師として現場を体験してきた経験を活かし、医療ミステリーに収まらない、現代日本の医療問題に焦点を当てたリアリティのある作品を多く発表しています。

また、海堂尊作品の多くはシリーズや出版社をまたいで世界観を共有しており、登場人物なども各作品でリンクしているのが特徴。通称「桜宮サーガ」と呼ばれる1つの作品群を形成しています。

それぞれの作品は単体としても読めますが、作品ごとの繋がりを意識して読むと、思わぬ伏線の発見を楽しめるのも海堂尊作品の魅力です。

海堂尊のおすすめ小説

チーム・バチスタの栄光

宝島社 著者:海堂尊

チーム・バチスタの栄光

第4回このミステリーがすごい!で大賞を受賞した、海堂尊氏の代表作。大学病院を舞台にした医療ミステリー「バチスタシリーズ」の1作目です。2008年には映画化とともにテレビドラマ化もされました。

東城大学医学部付属病院で結成されたバチスタ手術専門の天才外科チームで、原因不明の連続術中死が発生します。院長はこの不可解な出来事について、不定愁訴外来の医師・田口に病院内の内部調査を依頼することにしました。

田口の調査が難航するなか、厚生労働省からやってきた役人・白鳥も調査に加わり、事態が進み始めます。

人気シリーズの原点であり、海堂尊氏の作品に登場する人物や世界観の多くは本作品がベース。海堂尊氏が生み出す世界観の入口として、最初に読むのにおすすめの名作です。

ブラックペアン1988 新装版

講談社 著者:海堂尊

ブラックペアン1988 新装版

1988年のバブル時代を舞台とし、『チーム・バチスタの栄光』の過去編とされる海堂尊作品。2018年に連続テレビドラマも放送され、第21回の山本周五郎賞候補作にも選出されました。

東城大学医学部の外科教室に、世良は研修医として入局します。「神の手」といわれる教授・佐伯や、医療機器のエキスパート・高階など、外科教室の個性的な猛者たちに翻弄される世良。大学病院と最先端医療機器、数々の荒波に世良はどう立ち向かうのでしょうか。

各登場人物の人間性がたくみに描かれており、複雑に絡み合う医療現場の人間関係が臨場感に溢れています。研修医・世良の成長とともに医師とは何かを問う、爽快感のあるおすすめの海堂尊作品です。

ジェネラル・ルージュの凱旋 新装版

宝島社 著者:海堂尊

ジェネラル・ルージュの凱旋 新装版

「バチスタシリーズ」の3作目とされる海堂尊作品。2009年に実写映画も公開されています。より個性豊かになった登場人物たちが織りなすエンターテインメント性は、シリーズ中でも評価が高い人気作です。

東城大学医学部付属病院で勤務する田口の元に届いたのは、匿名の内部告発文書。救命救急センター部長の速水が“特定業者と癒着している”という告発の内容を受け、田口は事実の調査に乗り出しました。

しかし、倫理問題審査委員会の介入や、新人看護師・姫宮、厚生労働省役員・白鳥の登場によって事態は混迷を極めます。

シリーズ2作目の『ナイチンゲールの沈黙』と同軸で起こった出来事を書いているので、合わせて読むのもおすすめ。救急医療をテーマに、手に汗握る緊迫感のある展開の数々がドラマチックな1作です。

螺鈿迷宮 新装版

KADOKAWA 著者:海堂尊

螺鈿迷宮 新装版

「バチスタシリーズ」の舞台である東城大学医学部の学生と、終末医療をテーマにした医療ミステリー。『チーム・バチスタの栄光』から1年半後の物語です。

医学生の天馬は、幼なじみの記者・別宮から“碧翠院桜宮病院に潜入してほしい”と依頼を受けます。終末医療の先端施設として、メディアからも注目を集める噂の病院に潜入する天馬。しかし、この病院で患者が次々と不自然な死を遂げていきます。

終末医療をきっかけに、死に向き合う医療のあるべき形とは何かを考えさせられる小説。ちりばめられた伏線が回収される驚きも味わえます。シリーズのなかでも特に重厚感のあるストーリーを読みたい方におすすめの海堂尊作品です。

ジーン・ワルツ

新潮社 著者:海堂尊

ジーン・ワルツ

産婦人科医療をテーマにした医療小説で、2011年に実写映画化されました。本作品と対となっている『マドンナ・ヴェルデ』は、第23回山本周五郎賞の候補作に選出されています。

東城大学医学部を卒業後、東京の帝華大学医学部に入局した産婦人科医・曾根崎理恵。顕微鏡下人工授精のエキスパートである曾根崎は、閉院間近のクリニックでそれぞれに事情を抱えた5人の妊婦を受け持っています。

上司の清川は、そんな曾根崎による代理母出産の噂を聞きつけ、真相を追い始めるのでした。

生命の誕生について、医療と神の領域の境界を考えさせられる海堂尊作品。『マドンナ・ヴェルデ』に先立って手に取りたいおすすめの小説です。

医学のたまご

KADOKAWA 著者:海堂尊

医学のたまご

海堂尊氏が中高生向けに書いた医学×青春小説。ファンタジー要素もありつつ、医学研究の現状にも触れているため読み応えがあり、大人にもおすすめの作品です。

ごく普通の中学生だった薫は、ひょんなことから「日本一の天才少年」となり、飛び級で東城大学医学部で研究をすることに。そんな薫が研究中に思いもよらぬ大発見をしたことで、教授も研究室も大騒ぎになります。

薫は個性的な仲間たちと事態を乗り切ろうとしますが、薫たちが直面したのは大学病院と医学研究の不正という現実でした。

『ジーン・ワルツ』で誕生した曾根崎薫が中学生になり、本作品の主人公として活躍します。中学生の賑やかでコミカルな奮闘とともに、怒涛の逆転劇が爽快な海堂尊作品です。

ブレイズメス1990

講談社 著者:海堂尊

ブレイズメス1990

『ブラックペアン1988』から連なるシリーズ、通称「バブル三部作」の2作目にあたる海堂尊作品。第32回吉川英治文学新人賞の候補作にも選ばれました。

東城大学医学部の外科教授・佐伯に極秘ミッションを言い渡された世良。その内容とは、この世でただ一人しかできない心臓手術をやってのける天才外科医・天城をモナコから日本に連れて帰ることでした。

カジノの掛け金を治療費として取り立てるような放埒な天城。しかし、彼の言葉の数々が日本の医療と金の問題点を徹底的に浮き彫りにします。

現実的なテーマを織り交ぜつつ、医療エンターテインメントとしても成立している本作品。海堂尊氏の生み出す個性的な登場人物を思う存分味わいたい方にもおすすめです。

極北クレイマー

講談社 著者:海堂尊

極北クレイマー

海堂尊氏が描く「桜宮サーガ」のなかでも、極北市という架空の地方都市を舞台にした作品。新旧の登場人物らが地方医療の過酷な現状に向き合います。

今中が極北大から派遣されたのは、財政難で存続も危ういと囁かれる極北市の市民病院。新任の非常勤外科部長として慣れない病院でのローカル・ルールに今中が翻弄されるなか、病院に医療事故疑惑というさらなる追い討ちがかけられます。

医療過誤や公立病院の経営、地方都市の財政難など、地方医療をテーマに現実にもあり得る問題点に切り込んでいるのがポイント。組織や人のマネジメントについて、反面教師としても読み応えのあるおすすめの海堂尊作品です。

ナニワ・モンスター

新潮社 著者:海堂尊

ナニワ・モンスター

海堂尊氏の作品に登場する架空都市に、本作品では新たに浪速府という舞台が加わりました。近未来を予見するような、ウイルスに関する医療サスペンスであり、2011年に書籍化されたとは思えないほどリアリティに溢れています。

新型インフルエンザ「キャメル」が浪速府で発生。致死率の低いウイルスにもかかわらず、過熱する報道を受けて政府はナニワの経済封鎖を決定してしまいます。この封鎖により、関西圏は壊滅的な打撃を受けますが、その裏には政府が絡む巨大な陰謀があり…。

パンデミックから巻き起こる政治の問題点に対する、医療の向き合い方に焦点を当てた、海堂尊氏の知見を垣間見られるおすすめ小説です。

コロナ黙示録

宝島社 著者:海堂尊

コロナ黙示録

世界初の新型コロナウイルスを題材とした小説ともいわれる作品。日本で初めて新型コロナウイルスが発見された2020年、その7月に物語として出版するという驚異的なスピードで読者を驚かせました。

舞台は「バチスタシリーズ」と同じ桜宮市。東城大学医学部付属病院は、豪華クルーズ船で発生した新型コロナウイルス患者の受け入れを要請されます。当院で勤務する田口は、新型コロナウイルス対策本部の責任者としてその任にあたることに。

北海道の救命救急センターでセンター長を務める速水や、厚生労働省の白鳥らも登場し、海堂尊作品の歴代登場人物らが勢揃いします。

「桜宮サーガ」の1作として楽しめるのはもちろん、医師である海堂尊氏の目線から、リアルな世界の現状に対する問題点を浮き彫りにしたと読める点でも興味深い作品です。

氷獄

KADOKAWA 著者:海堂尊

氷獄

『チーム・バチスタの栄光』のその後を描いた表題作を含む、4編からなる短編集。表題作の『氷獄』は、医療ミステリーを書いてきた海堂尊氏が検察組織へも正義のメスを入れた、司法×医療エンタメと題される1作です。

手術室での連続殺人事件、通称「バチスタ・スキャンダル」を担当することになった新任弁護士の日高。被疑者は弁護すら拒否し、事件に関して黙秘を続けていました。そんな被疑者に、日高はある提案を持ちかけます。

この『氷獄』以外の3編でも、海堂尊氏の他作品に登場した多くの人物や出来事が絡み合う番外編的な構成に。純粋な短編集として物語を楽しむことはもちろん、これまでの海堂尊作品を客観的で新たな視点から味わえるおすすめ小説です。

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