感情描写を抑えた客観的な視点と簡潔な文体が特徴的なハードボイルド小説。犯罪や暴力が渦巻くハードな世界観の作品が多い一方で、自分の信念を貫く登場人物たちの活躍ぶりやかっこいい名言の数々が、多くの読者を魅了しています。

今回は、ハードボイルド小説のおすすめをご紹介。世代を超えて支持を集める名作から、メディア化もされたシリーズ作品まで厳選しました。ぜひハードボイルドな世界を覗いてみてください。

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ハードボイルド小説とは?

ハードボイルド小説とは、登場人物の感情描写を抑え、客観的な視点と簡潔な文体で物語を綴っていく創作手法で書かれた作品のことを指します。硬派かつ冷静な筆致が特徴で、アメリカ文学から世界へ広がっていったとされる小説ジャンルのひとつです。

アーネスト・ヘミングウェイの文体が、ハードボイルドに影響を与えたといわれており、ダシール・ハメットやレイモンド・チャンドラーがハードボイルドのジャンルを確立したとされています。

犯罪小説やミステリー小説などの一ジャンルとされることが多いハードボイルド小説。犯罪や暴力が渦巻く冷酷非情な状況を前に、自分の信念を貫き続ける登場人物たちのクールな活躍ぶりや、かっこいいセリフ回しが見どころのひとつです。

ハードボイルド小説のおすすめ

ロング・グッドバイ

早川書房 著者:レイモンド・チャンドラー

ロング・グッドバイ

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“ハードボイルドミステリの最高峰”と評される、傑作ハードボイルド小説。1954年にアメリカ探偵作家クラブ最優秀長篇賞を受賞しています。本作品は『長いお別れ』のタイトルで邦訳出版された作品を、村上春樹が改めて翻訳した1作です。

私立探偵のフィリップ・マーロウはある日、億万長者の娘と結婚しながらも暗い陰を背負ったテリー・レノックスと知り合います。やがて2人の間に友情が芽生えはじめた頃、レノックスに妻殺しの容疑が浮上。さらに、彼は自殺してしまい……。

レノックスの殺害容疑と自殺の裏に隠された真相を、マーロウの1人称視点で追いかけていくのが特徴。”ハードボイルドの代名詞的存在”と称されるマーロウのクールな言動の数々が世界中の読者を魅了した、おすすめのハードボイルド小説です。

新宿鮫1 新装版

光文社 著者:大沢在昌

新宿鮫1 新装版

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「新宿鮫」と呼ばれる、ハードボイルドな刑事の活躍を描いたハードボイルド小説です。「新宿鮫シリーズ」として続編が複数刊行されており、シリーズ累計部数は800万部を記録する大ヒット作。第12回吉川英治文学新人賞をはじめ、数々の文学賞を受賞しています。

新宿署に属する刑事・鮫島は、さまざまな事情から警察組織内で孤立。しかし、単独でも犯人に対して容赦のない執念深さを持つことから、暴力団からも避けられていました。ある日、歌舞伎町を中心に、警官の連続射殺事件が発生するのです。

ほかの署員たちが犯人逮捕に躍起になるなか、鮫島はたった1人で銃密造の大元を執拗に追いかけます。鮫島の一匹狼なキャラクター性と、手に汗握るスピーディーな展開が多くの読者から人気を集めている、おすすめのシリーズです。

孤狼の血

KADOKAWA 著者:柚月裕子

孤狼の血

暴力団絡みの事件を担当するマル暴刑事と極道の、容赦ない攻防を描いたハードボイルド小説です。2016年に第69回日本推理作家協会賞を受賞し、実写映画化もされました。全3部作として完結しています。

時は昭和63年。広島で捜査二課に配属された新人刑事・日岡は、ヤクザとの関連が噂される一匹狼な刑事・大上の下につくことになります。2人が暴力団系列の金融会社で発生した社員失踪事件を追っていくうちに、事件は暴力団同士の抗争に発展し……。

新人・日岡とアウトローな悪徳刑事・大上の2人を軸に展開される本シリーズ。殺人事件の真相を追うミステリー要素に暴力団や警察の思惑が絡み合う、濃密なストーリーが展開されます。驚きの結末まで一気読みしたくなる、おすすめのハードボイルド小説です。

マルタの鷹 新訳版

東京創元社 著者:ダシール・ハメット

マルタの鷹 新訳版

ダシール・ハメットが1930年に発表したハードボイルド小説の不朽の名作。非情を貫く私立探偵サム・スペードが、謎の女と黄金の鷹の像をめぐる謎に挑む物語です。”ハードボイルドの原点にして完成形”と評され、複数回にわたって映画化もされました。

私立探偵・スペードの事務所に、駆け落ちした妹を連れ戻してほしいという依頼が持ち込まれます。しかし、駆け落ち相手だとされていた男を尾行していた、スペードの相棒が死亡。尾行対象の男もなぜか殺されてしまうのです。

依頼主の女性が隠していた意図を探るなかで、スペードは金と欲望にまみれた争いに巻き込まれていくことになります。のちの多くの作家にも影響を与えたハードボイルド小説の古典としてチェックしておきたい、おすすめの傑作です。

テロリストのパラソル

KADOKAWA 著者:藤原伊織

テロリストのパラソル

江戸川乱歩賞と直木賞のW受賞を達成して話題を呼んだ、ハードボイルド小説の傑作。爆弾テロ事件の容疑者として巻き込まれたアルコール中毒のバーテンダーが、事件の真相に迫っていく様を追いかけます。

ある過去を隠しながら、新宿でひっそりとバーテンダーとして働いてきた中年男性・島村。ある日、そんな島村の前で19人もの犠牲者を出す爆弾テロ事件が発生します。現場から逃げ出したものの、置き忘れていたウイスキー瓶に彼の指紋が残っており……。

命懸けでテロ事件の真相解明に挑みながら、島村は自分の過去と対峙していくことになります。ハードボイルド小説らしい、おしゃれでユーモアに満ちたセリフ回しも魅力のひとつ。サスペンスミステリー好きの方におすすめの人気作です。

野獣死すべし 伊達邦彦全集 1

光文社 著者:大藪春彦

野獣死すべし 伊達邦彦全集 1

日本におけるハードボイルド小説の先駆とされる表題作『野獣死すべし』にはじまる作品集です。本書では大藪春彦のデビュー作である正編のほか、続編にあたる「復讐篇」と文庫初収録の「渡米篇」も併録されています。

戦時中、非人間的かつ屈辱的な扱いを受けてきた伊達邦彦は、敗戦を機に日本へと帰国。大学生の頃には完全犯罪を夢見るようになります。そして、大学の入学金の強奪計画を実行に移してしまうのです。

戦後社会に対する強い憎悪を抱く非情な男・伊達邦彦の行末を描いた1作。冴え渡る頭脳と肉体と金を武器に、殺戮を繰り返すダークヒーロー像が多くの読者を惹きつけました。爽快さも感じさせるバイオレンスなハードボイルド小説が読みたい方におすすめです。

そして夜は甦る

早川書房 著者:原尞

そして夜は甦る

第2作が直木賞を受賞したハードボイルド小説シリーズ「私立探偵・沢崎シリーズ」の、記念すべき第1作目。西新宿に事務所を構える私立探偵・沢崎が、依頼人からもたらされるさまざまな事件を調査していく、おすすめのシリーズ作品です。

依頼を受け、沢崎は失踪したルポライター・佐伯の調査に乗り出すことになります。裕福な妻との離婚を前に行方不明になったという佐伯。沢崎の調査によって、佐伯が直前まで取材していたと思われる、過去の東京都知事狙撃事件の全貌が浮かび上がってくるのです。

レイモンド・チャンドラーの影響を強く受けているという著者ならではの、硬派な語り口が特徴的な本作品。緻密に練られた構成と軽妙な会話劇に注目しながら読みたい、正統派な日本のハードボイルド小説です。

さらば、荒野 ブラディ・ドール 1

角川春樹事務所 著者:北方謙三

さらば、荒野 ブラディ・ドール 1

日本における”ハードボイルド小説の最高峰”と謳われる人気作「ブラディ・ドールシリーズ」の第1作目。港町にある酒場「ブラディ・ドール」のオーナー・川中良一を軸に展開される本格派のハードボイルド小説です。

市長・稲村からある提案を持ちかけられた主人公・川中。その直後、弟の新司が行方不明になっていると知り、事情と行方を追いはじめます。調査を進めていくと、女と失踪したと見られる新司は勤務先から機密事項を持ち出していたことが判明し……。

弟が機密事項を持ち出した目的やその中身、さらには裏の黒幕へと迫っていく川中。日本人が共感しやすい感性で表現される、筋の通ったクールな人間ドラマが魅力です。じっくりハードボイルドな世界に浸れる長編シリーズとして、ぜひチェックしてみてください。

グラスホッパー

KADOKAWA 著者:伊坂幸太郎

グラスホッパー

個性的な殺し屋たちが日常の裏側で交錯する、エンターテインメント性あふれるハードボイルド小説です。ハリウッドにて実写映画化された『マリアビートル』へとつながる「殺し屋シリーズ」の、第1作目にあたります。本作品も2015年に実写映画化されました。

妻が轢き殺され、復讐のために非合法組織に入った元教師の鈴木。しかし、「押し屋」と呼ばれる殺し屋の仕業で、復讐するはずだった男が車で轢かれる瞬間を目撃してしまいます。復讐を横取りされたとして、鈴木は「押し屋」の正体を探ろうと動きはじめるのでした。

さらに、自殺専門の殺し屋やナイフ使いの天才も「押し屋」を追い求める事態に。それぞれの殺し屋の思惑が絡み合う復讐劇が、伏線を交えながら予想もつかない方向へと展開されます。初心者の方も読みやすいおすすめの1作です。

ナイトホークス 上

扶桑社 著者:マイクル・コナリー

ナイトホークス 上

刑事ドラマ『BOSCH ボッシュ』の原作にあたる、海外の人気ハードボイルド小説。「ハリー・ボッシュシリーズ」の第1作目であり、アメリカの作家マイクル・コナリーの処女作として知られています。1993年にMWA賞最優秀新人賞を受賞しました。

主人公はベトナム戦争から帰還し、不眠に悩まされるアウトローな刑事・ボッシュ。ある日、かつての戦友・メドーズがパイプの中から死体の姿で発見されます。事件は事故死として処理されますが、納得がいかないボッシュは1人で捜査を強行するのでした。

捜査を進めるうちに、メドーズは未解決だった銀行強盗事件の有力容疑者として挙げられていることが発覚します。ボッシュによる孤立無援の捜査模様と、哀愁漂う意外な真相がクールな筆致で描かれた、おすすめのハードボイルド小説です。