サン=テグジュペリの『星の王子さま』など、世界的な名作を数多く輩出しているフランス文学。哲学的でドラマチックな物語は世界の文学界にたびたび衝撃を与え、世代を超えて読み継がれてきました。
今回は、フランス文学のおすすめ作品を近代と現代にわけてご紹介。映画化や舞台化もされた人気作から、ノーベル文学賞受賞者の代表作までピックアップしました。ぜひ選書の参考にしてみてください。
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フランス文学とは?

世界の歴史に残る名作を送り出してきたフランス文学。サン=テグジュペリの『星の王子さま』をはじめ、世界で今も読み継がれる傑作の多くがフランス文学作品です。ノーベル賞の受賞者もフランス文学の作家からたびたび選出されています。
ヴィクトル・ユゴーの『レ・ミゼラブル』やアレクサンドル・デュマの『モンテ・クリスト伯』など、数多くの小説や戯曲が舞台化や映画化されてきました。そのため、日本でも馴染み深い作品が多いのもフランス文学の特徴です。
フランスでもっとも権威ある文学賞・ゴンクール賞に選出された作品は、フランスのみならず世界各国で話題にのぼります。世界的な評価を集める文学作品を読んでみたい方は、まずフランス文学をチェックしてみるのがおすすめです。
フランス文学の特徴・魅力

18世紀のフランス革命を背景に、デカルトやルソーなどの著名な哲学者たちが社会で活躍してきたフランス。そのため、プルーストの『失われた時を求めて』に代表されるように、哲学的で読みごたえのある作品が多いのが特徴です。
「愛とは何か」「人間はどう生きるべきか」など、フランス文学を通して読者はさまざまな哲学的問いについて考えを深められます。フランス文学では特に人間の心理が巧みに描かれており、世界中の作家に影響を与えてきました。
一方で、情熱的でドラマチックな恋愛小説や、復讐劇を描いたエンターテインメント小説など、人気作品のジャンルの幅が広いのもフランス文学の魅力。難解な物語は苦手という方でも楽しめる作品も揃っています。
現代のフランス文学は、フランスだけでなく世界中から共感を集める名作が多数。フランスの時代背景に詳しくない方は、現代のフランス文学作品から手に取るのもおすすめです。
フランス文学おすすめ|近代
モンテ=クリスト伯 1
光文社 著者:アレクサンドル・デュマ
19世紀のフランス文学を代表する文豪アレクサンドル・デュマの代表作。日本では『巌窟王』のタイトルでも知られ、たびたび映画や舞台の題材として起用されてきました。新訳版として2025年に刊行された本書には、各巻に作家や作品の豆知識を紹介した「読書ガイド」も収録されています。
ときは19世紀前半のフランス。将来有望だった船乗りの青年エドモン・ダンテスは、嫉妬した同僚の企みによって無実の罪を着せられてしまいます。海に浮かぶ監獄で獄中生活を送ることになった彼は、14年後に見事監獄からの脱出に成功するのです。
「モンテ・クリスト伯」を名乗るダンテスが、自分を陥れた男たちに壮大な復讐を仕掛けていく物語。息もつかせない手に汗握る展開と冒険、登場人物たちの愛のドラマなど、さまざまな見どころがあります。フランス文学としてはもちろん、世界大衆文学史上に残る不朽の名作です。
赤と黒 上
新潮社 著者:スタンダール
フランス近代文学の先駆者として知られる文豪・スタンダールの代表作。王政復古した19世紀前半のフランスを背景に、野心に燃える青年の恋愛に対する複雑な葛藤を描いた物語です。”19世紀フランス文学を代表する名作”と謳われています。
製材小屋の息子として生まれ、暗く貧しい日々を過ごしていた青年ジュリヤン・ソレル。美しく華奢な容姿の裏に不屈の精神を隠し持ち、町を支配する貴族階級に激しい憎しみを抱いていました。僧侶になって出世を目論むジュリヤンは、町長宅の家庭教師として取り入り……。
階級制度に阻まれながらも、計算高さと美貌を武器に成り上がっていこうとするジュリヤン。情熱的な恋心との間で悩む心理が鋭く表現されています。当時のフランス社会の階級闘争と人間の生々しい恋愛心理を巧みに融合させた、フランス文学おすすめの傑作です。
星の王子さま
新潮社 著者:サン=テグジュペリ
老若男女から支持を集める、フランス文学の歴史に残る傑作小説。サハラ砂漠に不時着した飛行士と、遠い星から地球へとやって来た「星の王子さま」の交流を描いた1作です。世界累計発行部数は2億部以上とされ、1943年の刊行以来、世界中で愛され続けています。
操縦する飛行機が広大な砂漠に不時着し、「僕」は生死の瀬戸際に立たされます。そこで偶然出会ったのが、いくつもの星を巡って地球に降り立ったという小さな王子さまでした。彼は自分の星に咲いていたバラと仲違いをして、星を飛び出してきたというのです。
地球に来るまでに訪れた個性豊かな星々での経験を、王子さまが「僕」に語っていく形式で物語が進んでいきます。対話のなかに登場する、人とのつながりや愛にまつわる深い名言の数々が本作品の魅力。フランス文学を初めて手に取る中高生にもおすすめの名作です。
レ・ミゼラブル 上
KADOKAWA 著者:ヴィクトル・ユゴー
キリスト教的な愛の教えのもと、善と悪に向き合う男の生涯を描いたフランス文学史に名を刻む大河小説。本作品を原作としたミュージカルは”世界の演劇史を代表する作品のひとつ”とも評され、実写映画化でも話題を集めました。
貧しさに耐えかねて一片のパンを盗んだジャン・ヴァルジャン。彼はこの事件で19年間の監獄生活を強いられることになります。出獄後も、ジャンは司教の館から銀食器を盗み出しますが、司教の温情と教えが彼を改心に導くのです。
19世紀前半のフランス動乱期の社会情勢や民衆の生活を、著者自身の体験をもとに描き出した1作。人間讃歌の物語を通して「無知と貧困」「誇りと尊厳」といった深いテーマが表現されています。エンターテインメント性が高く、読みやすい点でもおすすめのフランス文学です。
ボヴァリー夫人
新潮社 著者:ギュスターヴ=フローベール
“フランス近代小説の金字塔”と評されるフランス文学の名著です。平凡な結婚生活に嫌気がさした女性の、破滅的な恋愛事情とその顛末を描いた問題作。フランスにおける写実主義文学の先駆けとされています。
舞台は19世紀中頃のフランスの田舎町。美しい女性・エンマは年上の医者シャルル・ボヴァリーと結婚しますが、彼女の理想とするロマンチックな結婚生活とはかけ離れていました。やがてエンマは夫の目を盗み、他の男性との情事や浪費に走るようになります。
田舎町のありふれた不倫話を芸術作品として昇華した点が、文学として高く評価されました。恋愛小説を愛するエンマが物語のようなロマンチックな人生を夢見て暴走するという、生々しい悲劇が描かれます。当時のフランス文学界に衝撃をもたらしたおすすめの傑作です。
異邦人
新潮社 著者:カミュ
1957年にノーベル文学賞を受賞したフランスの作家・カミュの代表作のひとつ。世間の常識から外れた言動をとる男を主人公に人間の理性や不合理な側面を描き、”不条理小説の金字塔”とも評されました。新たに実写映画化も予定されています。
主人公の青年・ムルソーの母親が亡くなるところから物語は展開。彼は母親の死の翌日には海水浴に出向き、女性と関係を持つといった自由奔放な生活を続けます。さらには友人の女性絡みで他人を殺害し、動機を”太陽のせい”とまで答えてしまうのです。
殺人による裁判とその後の顛末が、ムルソーの一人称視点で語られていきます。一見、非社会的に見える言動の数々から、残忍な殺人鬼・奇人とまで世間に判断されてしまう違和感が淡々と表現されているのが見どころ。フランス文学らしい哲学に満ちたおすすめの名著です。
ゴリオ爺さん
光文社 著者:バルザック
フランス文学の巨匠・バルザックの最高傑作と名高い長編小説。緻密な人間観察をもとに、当時のフランス社会を描き出した著者の作品群「人間喜劇」の代表作としても知られています。場末の下宿屋と華やかな社交界で繰り広げられる人間の欲望のドラマを描いた物語です。
貧乏貴族の子弟・ラスティニャックは、出世の野心を抱いて田舎からパリへとやって来た学生。下宿屋に身を寄せながら、親戚のツテを借りて社交界に潜り込みます。そこで見かけた夫人は、実は下宿先で貧しい暮らしを営むゴリオ爺さんの娘とわかり……。
2人の娘を上流階級に嫁がせる一方で、自身は貧困のうちに破滅していく父親の姿を群像劇のように追いかけた1作。いき過ぎた親の愛情の行末が悲喜劇的に描かれます。19世紀パリの社交界の様子を、きめ細やかな人物描写とともに楽しめるおすすめのフランス文学です。
十五少年漂流記
新潮社 著者:ジュール・ヴェルヌ
『海底二万里』『八十日間世界一周』などを手がけた”SF小説の生みの親”ジュール・ヴェルヌの冒険小説。無人島に漂着した15人の少年たちが、子どもだけでサバイバル生活に挑む様子が描かれています。後世の作品にも多くの影響を与えた、フランス文学の名作です。
ある日、少年たちだけを乗せたスクーター船が、荒海へと飛び出してしまいます。大嵐の末に船が漂着した岸辺は、島か大陸の一部かもわかりません。15人の少年たちはさまざまな工夫を重ねながら、スリルに満ちた生活を送ることになります。
8〜14歳までの子どもたちが知恵・勇気・好奇心を武器に、次々と降りかかる難題に立ち向かう冒険模様が繰り広げられます。チームワークや少年たちの友情が魅力的に描かれており、読書感想文の題材としてもおすすめ。中学生から大人まで広く楽しめるフランス文学です。
狭き門
新潮社 著者:アンドレ・ジッド
愛と信仰の間で葛藤する若者の切なくほろ苦い恋模様を描いた、フランス文学の傑作古典小説。1947年にノーベル文学賞を受賞したアンドレ・ジッドの半自伝的小説とされています。
父親を亡くしたジェロームは夏を叔父のもとで過ごすことに。そこで美しい従姉・アリサと知り合い、2人は互いに惹かれあっていきます。しかし、アリサは母親の不倫や不幸な環境に置かれた立場から愛を神に捧げており、ジェロームへの愛に踏み切れません。
恋心を自分の信仰を汚す感情と考えるアリサとのままならない関係性が、アリサ視点の日記なども交えながら描かれるのがポイント。世界観をより理解するための解説や年譜なども収録されています。フランス文学が生んだ純愛小説の名作が気になる方におすすめです。
失われた時を求めて1 第一篇 スワン家のほうへⅠ
光文社 著者:プルースト
「世界最長の小説」としてギネスブックにも登録された、フランス文学の記念碑的大作。語り手である「私」の人生を回想しながら、19世紀末〜20世紀初頭のパリの社交界の様子が綴られていきます。”20世紀文学の最高峰”とも称される世界的名著です。
著者・プルーストの精神的自伝とされている本作品。少年時代から晩年に至るまでの人生の機微が語られています。ささやかな出来事がきっかけで不意によみがえる記憶「無意志的記憶」をテーマにしており、描写される時間軸が次々と切り替わるのが特徴です。
さまざまなテーマを含んだ、フランス文学らしい哲学的な内容が魅力。世界文学の傑作として名を残す独創的な小説世界に、ぜひ挑戦してみてください。
フランス文学おすすめ|現代
悲しみよ こんにちは
新潮社 著者:フランソワーズ・サガン
“少女小説の聖典”として時代を超えて愛され続けるフランス文学の傑作。フランソワーズ・サガンのデビュー作です。1954年の発表直後から爆発的な人気を集め、世界中で空前の「サガンブーム」を巻き起こしました。
まもなく18歳になる少女・セシルは、プレイボーイ気質な父親とその恋人・エルザとともに、南仏の避暑地でバカンスを過ごすことになります。そこで出会った青年との恋も芽生え、楽しく過ごしていましたが、父親のもう1人の恋人・アンヌが合流し……。
父親とアンヌの再婚を阻止しようとするセシル。大人と子どもの間で揺れ動く少女の不安定な心情が、詩的かつ情感豊かな文体で美しく表現されています。フランス文学を代表する名著のひとつとしてチェックしておきたい、おすすめの1作です。
異常 【アノマリー】
早川書房 著者:エルヴェ・ル・テリエ
2020年にゴンクール賞に輝いた、フランス文学の最近の注目作です。「あらすじ検索禁止」を謳われる、驚きに満ちたエンターテインメント小説。アメリカのミステリー界でも年間ベストの評価を獲得し、40の言語での翻訳出版が決定しました。
登場人物は殺し屋・売れない作家・軍人の妻・がんを告知された男など、まったく接点のなかった多種多様な人々。彼らに共通するのは、かつてエールフランス006便に乗り合わせ、異常な乱気流に巻き込まれたことでした。彼らは無事に元の生活に戻りますが……。
視点が次々と切り替わりながら、それぞれの人物の人生と生活が群像劇のように描かれていく本作品。徐々に思いがけない方向へと進んでいく物語のなかに、フランス文学らしい人生をめぐる深い洞察が綴られています。SFテイストな小説が好きな方におすすめの話題作です。
悪童日記
早川書房 著者:アゴタ・クリストフ
40以上の言語に翻訳された、現代のフランス文学の世界的ベストセラー作品。第2次世界大戦下を背景に、双子の兄弟の日々を日記形式で綴っていく斬新な表現手法が話題を集めました。実写映画化や舞台化もされ、続編も刊行されています。
戦火から逃れるため、大都会から国境沿いの小さな町へと疎開してきた双子の少年。祖母の非情な教育を受けながら、2人の天才は飢えと迫害を逃れるためにさまざまな生きる術を身につけていきます。人間の醜さや世の中の不条理を目にするたび、彼らはそれをノートに記していくのです。
兄弟が体験した数々の苦難を、心理描写や固有名詞を省く淡々とした筆致で綴られるのが特徴。「悪童」として生き抜こうとする2人の冒険のような日々から、戦争の悲惨な現実が垣間見られます。ハードボイルドな世界観のフランス文学を読んでみたい方におすすめの1作です。
悲しみのイレーヌ
文藝春秋 著者:ピエール・ルメートル
フランス文学の大人気ミステリー「カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ」の第1作目。第4回本屋大賞の翻訳小説部門第1位に輝いた、『その女アレックス』の前日譚にあたるサスペンス・ミステリー小説です。日本でもシリーズ累計部数は120万部を突破しました。
パリ警視庁犯罪捜査部に所属するヴェルーヴェン警部は、ある連続殺人事件の捜査に駆り出されます。凄惨な現場に残されていたのは、”わたしは戻った”という謎のメッセージ。異常犯罪として捜査を進めていくと、事件は驚くべき事実に行き当たり……。
グロテスクな描写の数々が話題になった本作品は、事件の様相が二転三転する予想もつかない物語構成が見どころ。現代のフランス・ミステリーを存分に堪能したい方におすすめのイヤミス小説です。
彼女を見守る
早川書房 著者:ジャン=バティスト・アンドレア
第1次世界大戦後のイタリアを舞台に、天才彫刻家の波瀾万丈な生涯を回想する形式で描いた長編小説。2023年にゴンクール賞を受賞しました。2024年には第3回日本の学生が選ぶゴンクール賞にも輝いたフランス文学の注目作です。
イタリア北西部にある小さな村の、貧しい家に生まれ育った石工の弟子・ミモ。一方、村の城館に住む侯爵家の娘・ヴィオラは、その立場にありながら自立を望んでいました。出会うはずがなかった2人の少年少女が惹かれ合い、大戦間の激動の時代を生き抜いていきます。
異なる生きづらさを抱えたミモとヴィオラの壮大な道のりを追いかけていく1作。身分の差を超えて絆を強めていく2人の成長と挫折、友情と愛といった人間ドラマが、大戦前後という背景のなかで魅力的に描かれます。ドラマチックな大河小説が好きな方におすすめのフランス文学です。
三つ編み
早川書房 著者:レティシア・コロンバニ
それぞれの社会で理不尽と闘う3人の女性の運命を劇的に描いた、現代フランス文学の大ヒット作品。海外で文学賞8冠に輝き、フランスでは累計200万部を突破しています。
主人公は生きる国も境遇も異なる3人の女性。カースト外の「不可触民」として生まれたインド人のスミタは、娘を学校に入学させることを希望しています。一方、イタリアに暮らすジュリアは家族経営の会社を立て直すために、望まない結婚を母親から懇願されていました。そして、カナダで弁護士を営むサラは、出世を間近にして病でその道を断たれてしまうのです。
制度・慣習・役割にとらわれていた女性たちが自分の人生を切り拓いていく闘いを、3つのエピソードを通して描いた1作。それぞれの自分の意志を貫く勇気が、思いがけない形でつながっていきます。フランス文学発のフェミニズム小説として注目を集めている、おすすめ作品です。
フランス文学の売れ筋ランキングをチェック
フランス文学のランキングをチェックしたい方はこちら。
恋愛小説からエンターテインメント小説まで、さまざまなジャンルの名作が楽しめるフランス文学。人間の心理が巧みに描かれており、深く考えながら物語の世界に浸れます。まずは『星の王子さま』など、馴染み深い作品から手に取るのがおすすめ。世界的にも名高いフランス文学の名著の数々を、ぜひ手に取ってみてください。