ハードボイルドのなかにも義理と人情が描かれるヤクザもの小説。知られざる裏社会は好奇心を刺激し、人気を集めています。男社会の厳しさや生きにくさだけでなく、情が溢れる人間味を知ることができるのも魅力です。
そこで今回は、映像化された人気作や話題作まで、おすすめの作品をピックアップ。初心者にも読みやすい作品も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
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ヤクザもの小説のおすすめ|人気
孤狼の血
KADOKAWA 著者:柚月裕子
マル暴刑事とヤクザの戦いを描いた警察小説。日本推理作家協会賞を受賞した柚月裕子の代表作です。2018年に映画化され人気を博しました。
捜査二課暴力団係に配属された新人刑事・日岡は、評判の悪い先輩刑事・大上とコンビを組むことに。ある日、失踪事件をきっかけに暴力団同士の抗争がはじまります。抗争を止めるため大上はある秘策を持ち出しますが……。
迫力のある広島弁がポイント。ハラハラする展開はページをめくる手を止められなくなる、おすすめのヤクザもの小説です。
任侠書房
中央公論新社 著者:今野敏
義理と人情を大切にするヤクザが描かれた任侠エンターテインメント。人気の「任侠シリーズ」第一弾です。
弱きを助け強きを挫く、任侠の精神をもった小さなヤクザ組織・阿岐本組。ある日、組長は潰れかけている梅之木書房の経営を引き受けることになりました。そこには癖の強い編集者たちがいたり、マル暴の刑事も登場したりするなどトラブルが続きます。梅之木書房の運命はどうなるのでしょうか。
思わずヤクザたちを応援したくなる個性溢れるキャラクターたちもポイント。読み心地のよいおすすめのヤクザもの小説です。ヤクザものに挑戦してみたいという初心者でも読みやすいので、チェックしてみてください。
侠飯
文藝春秋 著者:福澤徹三
「食」にこだわるヤクザを描いた異色グルメ小説。シリーズ累計35万部突破の「侠飯シリーズ」第一弾です。漫画化やドラマ化もされています。
就職活動をしていた大学生・若水良太。ある日、ヤクザの抗争に巻き込まれ、組長・竜一をひとり暮らしの部屋にかくまうことになりました。竜一は、料理とグルメのお取り寄せが趣味。強面の竜一が作るこだわりの料理は美味しく、良太は入り混じる恐怖で混乱してしまいます。そこに同級生も参加し、事態は予想外の展開に……。
組長が言葉にする、さまざまな人生の教訓も魅力です。料理の参考になるという読者の感想も多く、知識も得られる一冊。グルメだけでなく、驚くオチも楽しめるおすすめの作品です。
プリズンホテル 1 夏
集英社 著者:浅田次郎
任侠団体専用の不思議なホテルで繰り広げられるコメディタッチなヤクザもの小説。浅田次郎の初期作で、漫画化やドラマ化もされています。
舞台は任侠団体専用の「プリズンホテル」。熱血ホテルマン・天才シェフ・心中志願の一家と、奇想天外な人々がドタバタ劇をくりひろげます。さまざまな喜怒哀楽がつまったコメディストーリーです。
時代を感じるキャラクター設定は、現代と比較しても楽しめるポイント。笑って泣けるおすすめのヤクザもの小説です。
虚の伽藍
新潮社 著者:月村了衛
『機龍警察』などを手がけたことで有名な月村了衛が、ヤクザと根深く絡む京都の闇の側面を描き出した社会派ノワール小説。第172回直木三十五賞の候補作に選出され、2025年には第12回高校生直木賞に輝いたヤクザもの小説の話題作です。
舞台はバブル期の京都。主人公・志方凌玄は、日本仏教の最大宗派のひとつ・燈念寺派に勤める若手の僧侶です。ひょんなことから、自宗の腐敗した状況を知ってしまった凌玄。燈念寺派を正道に戻すため、彼は自ら京都の闇社会へと足を踏み入れていきます。
金と利権が渦巻く京都の壮絶な地上げ戦争を軸に、欲望に翻弄された人々の生々しい人間ドラマを描いた1作。ヤクザに信頼を寄せ、利用する僧侶・凌玄が、京都の支配者へとのし上がっていく様を追いかけます。ヤクザを扱った注目作を読みたい方におすすめの小説です。
疫病神
KADOKAWA 著者:黒川博行
いわくつきの建設コンサルタントとヤクザの最凶コンビの活躍を描いた、ハードボイルドなヤクザもの小説。「疫病神シリーズ」の記念すべき第1作目です。本シリーズの作品である『破門』は、第151回直木三十五賞を受賞しています。
産業廃棄物処理場に関連するトラブルに巻き込まれた建設コンサルタント・二宮啓之。依頼人が失踪し、何者かによるたび重なる妨害に遭うなかで見えてきたのは、数十億もの金が絡む利権問題でした。二宮はひょんなことから、ヤクザ・桑原と共闘することになります。
巨額の金と利権を目当てに群がる悪党たちを相手に、反社会的勢力のコンビが事件の真相を追っていく痛快なストーリー展開が魅力。関西弁を用いたテンポのよい会話劇も物語を盛り上げます。エンターテインメント性の高いヤクザもの小説を読みたい方におすすめのシリーズです。
ヘルドッグス 地獄の犬たち
KADOKAWA 著者:深町秋生
2022年に実写映画化されたヤクザもの小説の人気作。全3部作からなる「ヘルドックスシリーズ」の第1作目にあたります。ヤクザ組織に潜入した捜査官を軸に、血で血を洗うバイオレンスなヤクザの世界を描いた物語です。
改正暴力団対策法が施行されるなか、武闘派路線を貫く東京のヤクザ組織・東鞘会。警察は警視庁組対部に所属する潜入捜査官を「兼高昭吾」の名で東鞘会に潜入させる奇策に出ます。兼高は任務として、警視庁を揺るがす秘密を握る東鞘会会長・十朱の殺害をもくろみますが……。
密命で汚れ仕事にも手を染めたダークな警察官が本作品の主人公。ヤクザとしての仁義と警察官の使命との間で揺れ動く葛藤が、手に汗握る展開のなかに巧みに表現されています。ヤクザの仁義なき戦いを濃密な人間ドラマとともに楽しめるおすすめ小説です。
バードドッグ
講談社 著者:木内一裕
元ヤクザの探偵がさまざまなアウトローな事件の解決に挑む人気シリーズの第3作目。著者は名作『BE-BOP-HIGHSCHOOL』を手がけた漫画家・きうちかずひろの別名義です。シリーズ作品ですが、それぞれストーリーが独立しているため単体でも楽しめます。
日本最大の暴力団・菱口組系の組長が失踪。殺害されていることが予想されますが、警察に届けるわけにはいかず、元ヤクザの探偵・矢能のもとに調査の依頼が持ち込まれます。容疑者のヤクザたちはそれぞれに動機は十分で、アリバイもありません。
ヤクザ組織の内部で起きた失踪事件を前に、物証がまったくない状況下で元ヤクザの立場を活かしながら真相に迫っていく様が見どころ。矢能をはじめとする登場人物たちの魅力的なキャラクター性も人気を集めています。ヤクザもの小説に初挑戦の方も読みやすいおすすめの1作です。
ヒートアイランド
文藝春秋 著者:垣根涼介
ストリートギャングの少年たちを中心に、ヤクザが絡む息の詰まるような攻防を描いた長編ミステリー小説です。高い評価を集め、2007年に実写映画化も果たしています。
渋谷で会員制のファイトパーティーを主催し、トップまでのし上がったストリートギャング・雅。ある日、頭のアキとカオルのもとに仲間が大金を持ち帰ってきます。それは裏金強奪のプロが、ヤクザが経営する非合法カジノから強奪したばかりの金だったのです。
危険な大金に関わってしまった仲間を救うため、作戦を企てるアキたち。彼らを追う強奪犯に、強奪犯を追い求めるヤクザたちの思惑が入り乱れるハラハラドキドキの展開が繰り広げられます。緊迫した頭脳戦と爽快なストーリーに魅了される読者も多い、おすすめの小説です。
修羅の国の子供たち
双葉社 著者:田村和大
現役の弁護士である田村和大が、ヤクザを父親に持つ子供をテーマに描き出した本格社会派小説です。物語は日佐正範と蒲田寅が小学生の頃から始まります。
日常的な暴力に晒され、薬物中毒の両親と周囲からの差別に苦しめられてきた正範と寅。過酷な少年時代を過ごした同級生の2人は、それぞれにヤクザへの復讐を誓うことに。やがて正範は検察官になり、寅は父親と同じくヤクザの道へと進みます。
ヤクザを取り締まる検察官と、敵対する同業者を始末していくヤクザという異なる立場で、ヤクザの撲滅へと邁進する2人の絆を描いた物語です。リアリティのある法廷シーンや意外性のあるミステリー要素も見どころ。ヤクザの恐ろしさを正面から描いたおすすめの小説です。
プリンシパル
新潮社 著者:長浦京
第二次世界大戦直後の日本を舞台に、ヤクザの組長代行を務めることになった女組長の生き残りをかけた闘いを描くクライムサスペンス小説。関東最大級の暴力組織・水嶽組本家の一人娘・綾女が本作品の主人公です。
戦後、大物ヤクザであった父親の訃報を受けて、東京へと呼び戻された綾女。組の組長代行を余儀なくされた彼女は、戦後の混乱期の覇権を争うヤクザ同士の激しい抗争へと立ち向かうことになります。その裏には、GHQや大物議員たちの暗躍もあり……。
戦後、ヤクザの暴力に支えられた日本社会の裏舞台を、史実を踏まえてフィクションとして描き出しているのがポイント。裏切り者を相手にしたひりつくような攻防や迫力満載のアクションも描かれます。戦後直後のヤクザを取り巻く空気感に触れられる、おすすめの小説です。
ムショぼけ
小学館 著者:沖田臥竜
兵庫県尼崎市を舞台に、刑務所に長期服役した元ヤクザの社会復帰の様子を描いた1作。長期にわたる獄中生活を経験した元ヤクザの作家・沖田臥竜の、壮絶な実体験をもとに書かれた自伝的小説です。2021年にはドラマ化もされました。
14年ぶりに刑務所から出所した元ヤクザ・陣内宗介。5000万円の見返りを条件として組のために長期服役したはずが、約束を破られて組は破門に。妻子も失ってしまいます。母親とともに暮らし始めた陣内は、元ヤクザの若頭が経営する内装屋で仕事を始めますが……。
長期服役によって社会と隔絶されたことで、世間の環境の変化についていけない「ムショぼけ」状態に悩まされる陣内の日常が描かれます。元ヤクザの著者ならではのリアリティのある暮らしぶりの数々が魅力。笑って泣けるヤクザもの小説として、おすすめの人気作です。
ヤクザもの小説のおすすめ|ノンフィクション
身分帳
講談社 著者:佐木隆三
前科10犯の男が人生を再スタートしようと奮闘する人間ドラマ。2020年の映画化がきっかけで復刊されました。伊藤整文学賞を受賞したノンフィクション小説です。
人生の多くを獄中で過ごしてきた主人公の山川一。長い刑期を終え出所し、人生をやり直すことに。しかし、東京で仕事を探すも、難航してしまいます。衝突と挫折の連続のなか、山川は新しい人生を切り拓けるのでしょうか。
本作に惚れこみ、映画化と復刊を果たした、映画監督・西川美和による解説も見どころです。不運な幼少期からヤクザになり、足を洗い普通の人生を求めた主人公の不器用でまっすぐな生き方にも注目してみてください。
ヤクザの子
新潮社 著者:石井光太
ヤクザの家庭をテーマに、その子供として生まれてきた人々の過酷な半生を記したノンフィクション小説。2021年に『ヤクザ・チルドレン』の題で刊行され、話題を集めた1作です。
暴力・虐待・薬物が日常にある家庭で育ち、学校ではヤクザの子として白い目で見られて孤立。出自のためにまともな就職先も見つからないという悪循環から逃れられない実態が、赤裸々に綴られています。14人が証言するそれぞれの半生とはどのような世界なのでしょうか。
ヤクザの家庭が抱える社会的な問題の数々に、真正面からスポットを当てているのがポイント。公的な支援に頼りにくい環境下でヤクザの子供たちが直面する負の連鎖が生々しく記されています。日本社会におけるヤクザのリアルな実像に迫ったおすすめのノンフィクション小説です。
ある漢の生涯 安藤昇伝
幻冬舎 著者:石原慎太郎
安藤組組長にして映画俳優としても名を残した安藤昇の生涯を記したノンフィクション小説です。戦時中に特攻隊に志願し、人生の終わりを覚悟していた安藤。そんな男がヤクザとして生き、やがて俳優として広く知られるようになっていくまでの破天荒な生き様が綴られています。
従来のヤクザとは異なるスタイルを貫き通した安藤。知性・色気・暴力を備えた天性のヤクザ者にして、憎みきれない魅力を持つ”カリスマヤクザ”の実像が、モノローグ形式で語られるのが本作品の特徴です。
巻末には『長い後書き』と題し、著者と安藤の交流について触れたミニエッセイが収録されています。昭和時代の伝説のヤクザとして語り継がれる、実在の人物について興味がある方におすすめのノンフィクション小説です。
時代ととも変化を遂げたヤクザの世界。ヤクザもの小説と一口にいっても、物語はさまざまです。昔ながらの義理人情に重きを置いたヒューマンドラマや、目を覆い隠したくなるほどの暴力的なハードボイルド作品まであります。コミカルなテイストも多く、笑える作品もあります。ぜひ手に取って楽しんでみてください。