大正時代に活躍した文豪「芥川龍之介」。短編作品を多く執筆しており、教科書に採用されている作品もあるのが特徴です。古典を題材にした作品から児童向けの作品まで、300を超える作品を手がけています。最後は自殺を遂げた作家としても有名です。

そこで今回は、芥川龍之介のおすすめ小説をご紹介。有名作品を中心に、複数の作品が楽しめるモノも多く出版されています。ぜひ気になる作品を手に取ってみてください。

芥川龍之介とは?

芥川龍之介は、1892年東京生まれの作家です。東京帝大英文科に在学中から創作活動を始め、短編『鼻』が夏目漱石の目に留まります。『羅生門』『芋粥』『藪の中』『杜子春』といった代表作を次々と執筆。大正の文学界を代表する存在です。

1925年あたりから体調を崩し、不安を抱えるなかで薬物自殺をして逝去。遺稿には『歯車』『或阿呆の一生』などがあります。

芥川龍之介作品の魅力

芥川龍之介は短編小説の名手として知られる作家です。300を超える作品を遺しており、古典を題材にした作品から児童に向けた作品まで幅広く執筆しているうえ、なかには教科書に採用されている作品もあります。晩年には、人間社会を批判したり生きることの意味を問いかけたりする作品を手がけているのもポイントです。

また、後世の作家にとっても大きな影響力のある存在です。有名な作家である太宰治は特に影響を受けたとされており、現代文学では村上春樹が尊敬する文学者のひとりとして名を挙げてます。すぐれた純文学作品に与えられる「芥川賞」は、多くの作家にとって憧れの的。重要な文学賞のひとつとして位置付けられています。

芥川龍之介のおすすめ小説

羅生門・鼻

新潮社 著者:芥川龍之介

ブラックユーモアが利いた芥川龍之介の作品集です。全部で6編の作品を収録。夏目漱石が褒めたたえたといわれています。

『羅生門』は、天災や飢饉で苦しんでいる京の都が舞台。羅生門に運びこまれた死人の髪の毛を1本1本抜き取る老婆を見かけた男が、生きる術を見出していくという物語です。また、『鼻』では見苦しいほど大きな鼻をもつ僧侶が、鼻を小さくしようと悪戦苦闘する姿が描かれています。

ほかにも、怖さすら感じる『芋粥』などを収録。特に『羅生門』は教科書にも採用されることの多い作品です。芥川龍之介作品のなかでも、特に知名度の高い作品を読みたい方はぜひチェックしてみてください。

地獄変・偸盗

新潮社 著者:芥川龍之介

芥川龍之介作品の頂点を極めたとうたわれる『地獄変』を表題とした作品集。王朝モノの傑作短編を6編収録しています。

『地獄変』は芥川龍之介が向き合い続けた、芸術と道徳が相反する性質を持っているという問題を『宇治拾遺物語』に登場する絵師・良秀をモチーフに追究。整っていて上品さのある筆致で描かれた傑作で、著者の代表作に数えられています。

『偸盗』では、羅生門に群がる盗賊のむごたらしい在り方に、愛の多様な形を表現しているのがポイント。人間の持つ多面性や不道徳のなかにある、良心などが描かれています。人間心理の本質を鋭く描いている作品を読みたい方におすすめの1冊です。

河童・或阿呆の一生

新潮社 著者:芥川龍之介

“僕はもうこの先を書き続ける力を持っていない。”と、著者がもがき苦しみながら筆をとって書き上げたとされる短編集。自殺した文豪・芥川龍之介の最晩年を感じる作品が6編収録されています。

出産・恋愛・芸術・宗教など、自身の切実な問題を口軽に語る『河童』や、自分の生涯の出来事と気持ちを語る『或阿呆の一生』。さらに、希望のない人生の在りようを描いた憂鬱な雰囲気が漂う『玄鶴山房』などを収録しています。

いずれの作品も、死を身近に感じながら書かれているのが特徴。壊れかけた精神が如実に示されており、より高い芸術性を求める欲求と鬼気迫る様子が作品からうかがえます。芥川龍之介晩年の作品に触れたい方におすすめです。

蜘蛛の糸・杜子春

新潮社 著者:芥川龍之介

救いとはどのようなモノなのかを描く芥川龍之介の作品集。文学が最終的にたどり着く永遠のテーマ「救済」に挑戦した、すぐれた作品が収録されています。

表題作『蜘蛛の糸』は、地獄に落ちた男が救いの糸と向き合う物語。男は、自分だけが助かりたいというエゴイズムをあらわにし、再び地獄に落ちてしまうのでした。『杜子春』は、お金に対する執着をなくし、自然のなかで平凡な人間として生きていくことの幸せを発見します。

『アグニの神』は、魔法使いが神の裁きを受ける神秘的な世界観が印象的。子供でも楽しめる、人間性の溢れた作品を読みたい方におすすめです。

戯作三昧・一塊の土

新潮社 著者:芥川龍之介

芥川龍之介の自身への誇りと焦燥感が現れているとうたわれる作品集。江戸末期や明治時代を舞台に取り上げた作品を収録しています。

著者の思想や問題を、芸術至上主義の境地を切り開かんとする馬琴を通して語る『戯作三昧』や、仇討ちを果たした赤穂浪士にスポットをあて新しい角度から描き出す『或日の大石内蔵之助』の2作は、江戸の末期を舞台にしている作品群です。

さらに、花火のような一瞬の煌きを持つ人生を描いた『舞踏会』などの「明治開化期モノ」も楽しめます。そのほか、写実小説『秋』など全13編を収録。時代が変わる瞬間を切り取る作品を読みたい方におすすめです。

侏儒の言葉・西方の人

新潮社 著者:芥川龍之介

芥川龍之介のむき出しになった狂気を体感できる1冊。著者の遺稿になった表題作を含む、全4編の作品集です。

侏儒とは見識のない人の蔑称。すぐれた知性と表現力を使って、世に溢れる偽善や欺瞞について語った『侏儒の言葉』は、死が忍び寄る著者の懐疑的で厭世的なアフォリズムです。また、『西方の人』は、自身の人生をキリストと重ね合わせ、悲しさや苦しさを綴ります。

晩年の著者が、世界や人間の在り方について深く切り込むことで辿り着いた思想が垣間見られるのがポイント。芥川龍之介作品の総決算を読みたい方におすすめです。

奉教人の死

新潮社 著者:芥川龍之介

パイオニアとも呼ばれる「切支丹モノ」を11編収録した芥川龍之介の作品です。「切支丹モノ」とはキリスト教にまつわるテーマを持った一連の作品の総称。芥川龍之介はキリシタンでないにもかかわらず、全著作の1割が「切支丹モノ」の性質を持っているといわれています。

文禄・慶長時代の口語文体を用い、信心深く、若くて美しい切支丹奉教人の行く末を悲哀のなかに描き出した『奉教人の死』。信仰と封建的な道徳心の対立に悩み、人情を優先して生きた女性が主人公の『おぎん』など、11編を収録しています。

著者は子供のころからキリスト教に興味を抱いており、作家になってからも興味は失われなかったことがわかるのがポイント。芥川龍之介の宗教観に触れたい方におすすめの1冊です。

蜜柑・尾生の信 他十八篇

岩波書店 著者:芥川龍之介

近代文学の鬼才と呼ばれる芥川龍之介が描く珠玉の作品集です。没後90年を記念し、多くの読者の心を惹きつけている芥川龍之介の魅力を再発見するために刊行された1冊。同社の文庫版に収録されることのなかった作品がピックアップされています。

収録作品は、『老年』『青年と死と』『ひょっとこ』『孤独地獄』『野呂松人形』など全20編。特異なテーマや多彩な作風、独自の文体など、芥川龍之介文学の特徴がよくわかる作品を幅広く収録しています。芥川龍之介のめずらしい作品を読みたい方に適しています。

歯車 他二篇

岩波書店 著者:芥川龍之介

常に死を感じさせられる1冊。難解な作品集で、何度読んでも新しい気づきを得られる芥川龍之介の作品です。全3編が収録されており、すべて著者の晩年に描かれているのがポイント。自殺によって生涯を閉じた芥川龍之介が、死に憑りつかれて筆をとった作品です

『玄鶴山房』に感じられる希望のない雰囲気は、著者が自身の経験を通して感じた人生の在りようを示しています。『歯車』は、自殺を決意した人間の死へ向かう日々の心情が綴られた作品です。書き手の死のにおいを感じ取れる作品を読みたい方は手に取ってみてください。

年末の一日・浅草公園 他十七篇

岩波書店 著者:芥川龍之介

小説の可能性を追い求めた芥川龍之介の作品集です。1921〜1923年までの中期作品と、震災後から1927年までの後期作品を収録しています。

『年末の一日』は、日々の生活において起こる出来事に対しての心の動きを描写した作品。『浅草公園』は、シナリオ形式をとった一風変わった形式をとっています。

『保吉の手帳から』『お時儀』『あばばばば』『金将軍』など全19編を楽しめるのがポイント。多様な文体とテーマの作品は、著者の筆力の高さが伺えます。中期作品から後期作品までの特色を感じたい方にもおすすめの1冊です。

侏儒の言葉 文芸的な,余りに文芸的な

岩波書店 著者:芥川龍之介

芥川龍之介最晩年の箴言集と文芸評論集です。著者らしいアフォリズムと、谷崎潤一郎との論争を経て生じた小説の危機感を綴っています。

芸術が今後も滅びることはないことを“打ち下ろすハンマアのリズムを聞け”と表現した著者が、死を前にしながらもアフォリズムを磨き上げ紡いだ『侏儒の言葉』。作家・谷崎潤一郎との論争に垣間見える芥川文学の本質を記した『文芸的な、余りに文芸的な』を収録しています。

晩年の著者が考えていたことを知ることのできる1冊。芥川龍之介への理解をより深めたい方におすすめです。

藪の中

講談社 著者:芥川龍之介

いまだに物語の解釈が定まっていない表題作をはじめとした芥川龍之介の作品集です。表題作の『藪の中』は、黒澤明によって『羅生門』のタイトルで実写映画化。ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞、アカデミー賞で名誉賞を獲得し、後の映画業界に影響をあたえたとされています。

『藪の中』では、馬が通る道から逸れた藪の中、胸もとを刺された男の死体が発見されます。殺したのは誰なのでしょうか。

そのほか、『羅生門』『地獄変』『蜘蛛の糸』など、著者を代表する作品を6編収録しているのがポイント。芥川龍之介の代表作をまとめて読みたい方に適した1冊です。

上海游記・江南游記

講談社 著者:芥川龍之介

芥川龍之介の旅の記録を綴った作品集。表題作をはじめ、『長江游記』『北京日記抄』などの5編を収録しています。

芥川龍之介は大正10年に、およそ4ヵ月かけて上海・南京・九江・などを巡る旅をしました。中華民国として成立してから10年経った大陸の姿を肌で感じとる著者。政治・文化・経済・風俗など、当時の中国の在りようを克明に綴っています。

著者らしいユーモアと鋭い観察眼で描かれるのが魅力。文豪の目を通して他国の姿を感じてみたい方におすすめの1冊です。

トロッコ・一塊の土

KADOKAWA 著者:芥川龍之介

芥川龍之介にとって欠かすことのできない作品を中心に収録した作品集。表題作をはじめ、著者の転機となる中期の作品を21編も堪能できるのが魅力です。『トロッコ』では、8歳になる少年・良平が、鉄道の敷設工事で行き来するトロッコに魅了されます。

ある日、見知らぬ若い男達と一緒にトロッコを押すことになった良平でしたが…。『一塊の土』では、子供を亡くしたお住が、毎日畑へ出て一生懸命働く嫁・お民に感謝しますが、やがて稼ぐことに心奪われた彼女に心をすり減らしていくのでした。

特に、『トロッコ』の憧れと現実のあいだに揺れる少年の姿が見どころ。子供から大人まで共感できる、著者らしい冷静な人間に対する考察を感じたい方におすすめの作品です。

芥川竜之介俳句集

岩波書店 著者:芥川龍之介 著、加藤郁乎 編

芥川龍之介のすぐれた俳句を1000句以上ピックアップした作品。加藤郁乎が編纂しています。“余技は発句の外には何もない”と語った芥川竜之介。生涯、俳句に対して特別な想いを抱いていたとされています。

著者の俳句は、洗練されたレトリックによる技巧を用い、現代人の感覚をよく表しているのが特徴です。さらに、芭蕉や丈草といった江戸の名俳人の格調高さを大切にしているのも魅力のひとつ。文豪の俳句に触れてみたい方におすすめの1冊です。