「三島由紀夫の再来」との呼び声も高い「平野啓一郎」。大学在学中に発表した『日蝕』が、当時の史上最年少での芥川賞受賞作品でした。以来、長編や短編、エッセイまで、多くの作品を発表しています。
平野啓一郎はさまざまな作風で執筆しており、作品もバラエティに富んでいるため、何から読めばいいのか悩む方も。そこでこの記事では、平野啓一郎のおすすめ作品をご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
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三島由紀夫の再来といわれる芥川賞受賞作家「平野啓一郎」とは?
平野啓一郎は1975年、愛知県蒲郡市生まれ。福岡県北九州市で育ちました。
京都大学法学部在学中に発表した『日蝕』は、芥川賞受賞作品。当時の史上最年少での受賞です。古典的で華やかな文体や文学に対する探究心の深さから、「三島由紀夫の再来」と評されました。その後も精力的に活動中です。なお、『日蝕』は、40万部超えのベストセラーになりました。
平野啓一郎は枠にとらわれず、幅広く活動している作家です。2004年には文化庁の文化交流使に任命され、フランス・パリに1年間滞在。2014年には、国立西洋美術館のゲスト・キュレーターを務め、自身がセレクトした作品の展覧会も開催しました。
そのほか、新聞での批評の執筆、他ジャンルのアーティストとのコラボレーションなども行っており、活動の場は多岐にわたります。
平野啓一郎作品の魅力
平野啓一郎の作品は、美術や音楽に関する深い知識をもとにした、重厚な作風が魅力。政治や社会問題、倫理などにも精通しており、他分野の内容を取り入れた作品も多数あります。
「分人」の概念を多く取り入れているのも特徴です。平野啓一郎は、生きづらいと感じる方に対し、個人をさらに切り分けて考える人間観「分人主義」を提唱。『顔のない裸体たち』『決壊』など、1人の人間が持つ多面性にフォーカスしている作品が楽しめます。
平野啓一郎作品は、それぞれ作風が大きく異なるのもポイント。渾身の長編小説から、手軽に読める短編、小説を読まない方でも読めるように書かれたエッセイも手がけています。
映画化・ドラマ化された作品や、外国語に翻訳され世界中で愛されている作品も多くあり、国内外で評価されている作家です。
平野啓一郎作品のおすすめ
ある男
文藝春秋 著者:平野啓一郎
「愛にとって過去は必要なのか」というテーマで書かれた長編小説です。2018年に、第70回読売文学賞小説賞を受賞。2022年の秋には映画化も予定されています。
弁護士・城戸は、かつての依頼人・里枝から“亡くなった夫・大祐の正体を調べてほしい”という依頼を受けることに。里枝は過去に離婚しており、その後大祐と再婚。幸せに暮らしていましたが、大祐が事故死してしまいます。しかし、大祐は別人という疑惑が浮上して…。
ミステリーの要素もありつつ、ていねいに描かれる心情描写によって、内容に引き込まれる作品。複雑な人間ドラマに浸りたい方におすすめです。
空白を満たしなさい 上
講談社 著者:平野啓一郎
現代における「幸福」の意味を問う長編小説です。平野啓一郎の作品のなかでも、傑作長編と名高い人気作。2022年6月にはドラマ化もされています。
ある夜、勤務先で目覚めた土屋。帰宅すると、妻に“あなたは3年前に死んだはず”と告げられます。土屋は自殺したといわれていましたが、自身には自殺する理由が思いつかない状態。誰かに殺されたのではと疑い始めると、徐々に犯人の記憶が浮かび上がってきて…。
「死者が復活する」というとっぴな設定ながら、先の読めない展開が続き、ページをめくる手が止まらなくなる作品。上下巻構成なので、ぜひ一気に読んでみてください。
マチネの終わりに
文藝春秋 著者:平野啓一郎
「今世紀の最も美しい恋愛小説」と絶賛される、平野啓一郎の代表作。40代の男女を主人公にした長編恋愛小説です。2017年には第2回渡辺淳一文学賞を受賞し、2019年には映画化されました。
天才ギタリスト・蒔野と国際ジャーナリスト・洋子は、出会ってすぐにひかれ合っていきます。しかし、洋子にはフィアンセがいました。蒔野はスランプに陥り、洋子も体調不良が続くように。やがて2人の関係は途切れてしまいますが、2人が再び会える日は訪れるのでしょうか。
豊富な音楽の知識とともに、芸術と生活、親子関係、グローバリズムなど、さまざまなテーマを交えて展開するストーリーは必見。平野啓一郎の代表作を読みたい方におすすめです。
日蝕・一月物語
新潮社 著者:平野啓一郎
「三島由紀夫の再来」と呼ばれるきっかけとなったデビュー作の『日蝕』と、続いて発表された『一月物語』がまとめられた1冊です。
『日蝕』は1998年、第120回芥川賞を当時の最年少で受賞した作品。15世紀末の南フランスの小さな村を舞台に、神学僧と錬金術師の出会いを描いています。『一月物語』は、明治30年の奈良県十津川村が舞台。運命の女と青年詩人との愛を、古典的な文体で描いているのが特徴です。
平野啓一郎の原点ともいえる作品に同時に触れられる1冊。初めて著者の作品を読む方にもおすすめです。
かたちだけの愛
中央公論新社 著者:平野啓一郎
著者初の長編恋愛小説です。「人を好きになり、ともに生きていくとはどういうことか」をテーマに描いています。
プロダクトデザイナー・相良は、事故で片足を失った女優・久美子のために、義足を作ることに。2人は次第に仲を深めていきますが、さまざまな障害が立ちふさがります。彼らが見つけた愛の形とは、いったいどのようなモノだったのでしょうか。
「愛とは何か?」を考えさせられる作品。読後感のよい平野啓一郎の恋愛小説を読みたい方におすすめです。
ドーン
講談社 著者:平野啓一郎
2036年のアメリカを舞台にした近未来小説です。2009年には、Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞しました。
人類初の火星探査に成功し、英雄ともてはやされる宇宙飛行士・佐野。しかし、ミッション中に「ある出来事」が起きていました。その事実は隠蔽されたはずだったものの、スキャンダルとして発覚してしまい、アメリカ大統領選挙に大きな影響を及ぼしてしまうことに…。
SFを中心に、政治・社会問題や恋愛、倫理など、多くのテーマを交えて展開するストーリーに引き込まれます。壮大な世界観の作品を読みたい方におすすめです。
顔のない裸体たち
新潮社 著者:平野啓一郎
「ネット社会の罠」をテーマにした長編小説。男女の性意識や人間が持つ承認欲求を、リアルに描ききった作品です。
地方の中学教師・希美子は、ある男性と出会い系サイトで知り合います。希美子は彼との性行為にのめり込んでいきますが、自分の裸が投稿サイトにアップされているのを発見。顔は隠されていたため特定はされずに済んでいましたが、ある事件が起きて…。
過激な描写も多いものの、筆致は淡々としており、スムーズに読み進められるのがポイント。身近な話題をテーマにした、現実味のある作品が読みたい方におすすめです。
決壊 上
新潮社 著者:平野啓一郎
デビュー10年目に発表された衝撃作。2009年には、第59回芸術選奨文部科学大臣新人賞も受賞しています。
地方都市で妻子とつつがなく暮らすサラリーマン・沢野良介。彼は、東京に住む優秀な兄・崇と自分の人生とのギャップを、匿名の日記に記していました。ある日、良介は失踪し、バラバラ殺人事件の被害者となって発見される事態に。事件当夜、彼は大阪で崇と会っているはずだったのですが…。
現代人の苦悩にフォーカスした作品。上下巻構成で、後半に進むにつれて内容が明らかになるため、一気に読破できる小説を探している方におすすめです。
葬送 第一部 上
新潮社 著者:平野啓一郎
近代絵画の立役者・ドラクロワと、ピアニスト・ショパンの交流を中心に、芸術の世界を描く長編小説シリーズ。執筆に3年半を費やした著者渾身の作品で、第一部の上巻です。
ロマン主義全盛期の19世紀、パリの社交界で一躍時の人となった天才音楽家・ショパン。彼は、作家のジョルジュ・サンドと結ばれます。しかし、彼は非常に繊細な精神の持ち主で、とある画家が支えとなっていて…。
第二部まであり、各部が上下巻構成で読み応えがあります。濃密な世界観に没頭できる小説を探している方におすすめです。
本心
文藝春秋 著者:平野啓一郎
「現代の死生観」をテーマにした長編小説。ある親子の姿を、「自由死」が認められている近未来の日本を舞台に描きます。
主人公は他人に体を貸し、命令に従う「リアルアバター」という仕事を稼業にする青年。彼にとって唯一本心を明かせる存在だった母が死んでしまいます。事実を受け入れられない彼は最新技術を使って母を復活させますが、母が隠していた衝撃の事実を知ることになり…。
貧困や格差問題など、現代人が今後直面する問題に切り込む作品。重厚感のある小説が読みたい方にぴったりです。
透明な迷宮
新潮社 著者:平野啓一郎
「現代人の悲喜劇」を取り上げた6編を収録した短編集。社会から外れてしまった人々の暮らしを描き上げています。
監禁され、見せ物として愛し合うことを強いられた男女の運命を描く表題作の『透明な迷宮』や、事故をきっかけに奇妙な体験をするようになった作家を主人公にした『Re:依田氏からの依頼』などを収録。ていねいな人物描写がされた、ストーリー性に富んだ作品ばかりです。
手軽に平野啓一郎の作品に親しみたい方にぴったり。不思議な世界を楽しみたい方におすすめです。
高瀬川
講談社 著者:平野啓一郎
「生と性」をテーマにした作品4編を収録した短編集。さまざまな表現技法を使っているのも特徴です。
小説家と女性誌編集者の一夜をもとに、現代における「性」を取り上げる表題作の『高瀬川』や、母を亡くした少年と不倫をしている女性との交錯を描く『氷塊』などが楽しめます。特に『氷塊』は、上下二段組みで進行するユニークな構成にも注目してみてください。
内容・構成ともに実験的な作品が多数。読み口の異なる平野啓一郎の作品を楽しみたい方におすすめです。
私とは何か 「個人」から「分人」へ
講談社 著者:平野啓一郎
執筆活動を通じて生まれた、著者の人間観をまとめたエッセイです。自身が提唱する「分人主義」を、より詳細に解説しています。
「嫌いな自分との向き合い方」「自分らしさとは」「他人との距離の取り方」など、恋愛でも、職場や家庭でも参考になる内容ばかり。小説を読まない方でも読めるよう、分かりやすく解説されているのが特徴です。
小説以外の作品を読んでみたい方や、人間関係に悩んでいる方にぴったり。「分人主義」を取り入れた、ほかの作品を読む際の参考にするのもおすすめです。
「カッコいい」とは何か
講談社 著者:平野啓一郎
「カッコいい」という概念がどのようなモノなのかをひもとくエッセイ。著者が長年書きたいと思っていたテーマを取り上げた1冊でもあります。
「カッコいいとは何かが分からなければ、私たちは、20世紀後半の文化現象を理解できない」との思いで執筆。著名なジャズトランペッターのマイルス・デイビスや、映画『仁義なき戦い』をはじめとした事例、三島由紀夫などの文学者の論考を交えながら、「カッコいい」を定義していきます。
著者の広く深い知識にも圧倒される1冊。日常的に使っている言葉を深く考えてみたい方におすすめです。
文明の憂鬱
新潮社 著者:平野啓一郎
文明に関するエッセイ49編を収録。身の回りのモノや技術、さまざまな事件・現象について、論理的に迫っていきます。
加工食品や臓器移植、世界同時多発テロなど、時事問題を多く取り上げているのがポイント。刊行から15年以上たった著者の初期作品ですが、今読んでも考えさせられる点が多々あります。
平野啓一郎の小説をまだ読んだことがない方にもおすすめ。すでに平野啓一郎の作品を読んだことがあり、著者の発想や考え方について興味のある方にもぴったりです。
生きる理由を探してる人へ
KADOKAWA 著者:平野啓一郎・大谷ノブ彦
お笑いコンビ「ダイノジ」の大谷ノブ彦との対談を収録した異色の1冊です。「自殺」をテーマにしていて、全6章で語られています。
自殺を考えるほど追い詰められている方に対し、「違う形で生きるという道を提示できないか」との思いで刊行されているのが特徴。2人の生い立ちや「分人主義」の内容も絡めながら展開していきます。
立場や経歴の違う2人の考えに触れられる1冊。日常生活に疲労を感じている方や、生きるヒントが欲しい方にもおすすめです。
芸術の世界を描く大長編から、身近な話題や社会問題を扱う作品まで、さまざまな平野啓一郎作品をご紹介しました。設定や文体が作品ごとに異なり、長編・短編以外にエッセイもあるため、読む作品で平野啓一郎の印象が大きく変わります。どれから読もうか迷ったら、まずはメディア化された作品から選んでみてください。