戦後の日本文学を代表する作家「三島由紀夫」。美意識の高い作風が特徴です。整った文章に加え、日常的には使わない言葉や詩的な表現を取り入れて、独特の世界観を描き出しているのもポイント。最終的には自殺という形で生涯を終えている、スキャンダラスな作家でもあります。

そこで今回は、三島由紀夫のおすすめ小説をご紹介します。三島由紀夫作品の魅力についても解説。ぜひ参考にしてみてください。
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戦後を代表する作家「三島由紀夫」とは?

三島由紀夫は1925年、東京生まれの作家。本名は平岡公威です。1944年に短編集『花ざかりの森』が出版され作家デビュー。1947年に東京大学法学部を卒業後、大蔵省に勤務しますが、9ヵ月で退職して作家の道へ。1949年に『仮面の告白』を刊行し、作家としての地位を確立します。

その後は、『潮騒』『金閣寺』『サド侯爵夫人』をはじめ、さまざまな作品を執筆。1970年11月25日に、当時執筆中だった作品を完成させ、自衛隊市ヶ谷駐屯地で命を断ちました。三島由紀夫作品は日本国内のみならず、海外でも高く評価され愛読されています。

三島由紀夫作品の魅力

三島由紀夫は川端康成や谷崎潤一郎と並んで、日本文学を代表する作家として知られています。美しく整った文章が特徴。日常的には使わない言葉や詩的な表現を織り交ぜることで、独特な世界観を表現しています。

難解な作品もありますが、肩の力を抜いて読むことで三島由紀夫作品の持つ魅力を感じられます。卓越した日本語力を駆使した小説を読みたい方におすすめの作家です。

三島由紀夫のおすすめ小説

金閣寺

新潮社 著者:三島由紀夫


金閣寺

青年が破滅するまでの告白を描いた三島由紀夫の小説。当時31歳だった三島由紀夫が、自らの内面を託して描いた不朽の名作と謳われています。また、社会に衝撃を与えた実在の事件がモチーフとされている作品です。

吃音と醜い外見に悩む学僧・溝口は、金閣寺に並々ならぬ美を感じていました。しかし、溝口は金閣寺に火をつけてしまいます。憧れを焼くことは、溝口にとってどのような意味があったのでしょうか。

孤独にさいなまれた主人公が導き出す結論が見どころ。著者の人生を投影した作品を読みたい方におすすめです。

仮面の告白

新潮社 著者:三島由紀夫


仮面の告白

異性に興味を抱かない主人公が辿り着いた境地が描かれた、おすすめの三島由紀夫作品です。自伝的側面を持っているのも見どころ。上品ながらもスキャンダラスな作品です。

女性に魅力を感じず、自らの性的指向に悩む少年・私。戦争がはじまるなか、友達の妹に愛されたことで幸福に近しいものを感じます。しかし、彼女と口づけを交わした瞬間に自分の性的指向を確信してしまい…。

自伝的小説ながら、実際の著者とは印象が異なる主人公のキャラクター設定にも注目してみてください。

潮騒

新潮社 著者:三島由紀夫


潮騒

さまざまな困難に見舞われる男女の恋模様を描いた三島由紀夫の小説。何度も映画化されている作品です。

古代の伝説が語り継がれる伊勢湾の小島に住む若者・新治はある日、少女・初江に出会います。惹かれ合う2人は嵐の日に廃屋の中で将来を約束。しかし、島内に悪い噂が出回ったことで新治は初江と会うことを禁じられてしまい…。

初江の父親が娘と新治の関係を、どのようにして認めていくのかが見どころ。三島由紀夫の描く青春小説を楽しみたい方におすすめです。

鹿鳴館

新潮社 著者:三島由紀夫

鹿鳴館

最高傑作とも謳われる表題作をはじめとした、4編を収録する三島由紀夫の作品集。表題作は、2007年に舞台化もされています。著者が「はじめて書いた俳優芸術のための作品」と語る作品です。

明治19年に鹿鳴館で開催された夜会。交錯する愛憎や暗殺の計画、裏切りのなかで踊る、4人の男女が巻き込まれる運命を描いています。

ほかにも、『只ほど高いものはない』や、六世中村歌右衛門のために書かれたとされる『朝の躑躅』などを収録しています。三島由紀夫が手がけた戯曲を読みたい方におすすめです。

鏡子の家

新潮社 著者:三島由紀夫

鏡子の家

長くゆるやかな人生をどのように生きるのかをテーマにした三島由紀夫の作品。複数の登場人物の生きた軌跡を描いているのが特徴です。

世界の崩壊を信じるエリート社員・杉本清一郎、美しい俳優・舟木収、大学拳闘部・深井峻吉、才能のある画家・山形夏雄。4人の若者は、それぞれが巨大な壁の前に為す術もなく立っていると感じています。そして、資産家令嬢・鏡子の家に集まってくるのでした。

読む人の立場によって、感情移入できるキャラクターが変わってくる作品。読み進むにつれて引き込まれていく三島由紀夫作品を読みたい方におすすめです。

午後の曳航

新潮社 著者:三島由紀夫

午後の曳航

大人社会のほころびを、少年の目線から描いた三島由紀夫の作品。1976年に映画化もされています。

横浜に住む13歳の少年・登は、母・房子と2人暮らし。見学に行った船で出会った航海士・竜二に憧れます。しだいに、房子との関係を深めていく竜二。1度は船に乗って海に戻りますが、最終的には房子に結婚を申し込み、陸で生きることを決意しますが…。

竜二の決断と行動に失望する登が、仲間と共に立てた計画に注目。著者の美学が色濃く反映されている作品が読みたい方におすすめです。

禁色

新潮社 著者:三島由紀夫

禁色

女性を愛せない青年を利用した老作家の復讐を描いた三島由紀夫の小説。『仮面の告白』と並ぶ同性愛小説の極致と称されています。

老作家・檜俊輔は、美しい外見を持った青年・南悠一の“僕は女を愛せないんです”という発言を受けて、自分を裏切った女性たちへの復讐を思いつきます。一方、悠一はゲイバー「ルドン」の雰囲気を身にまといはじめて…。

とある愛によって、俊輔の人生が狂っていく様子が見どころ。登場人物の心理を深く描いた三島由紀夫作品を読みたい方にもおすすめです。

春の雪 豊饒の海・第一巻

新潮社 著者:三島由紀夫

春の雪 豊饒の海・第一巻

自身のすべてを込めて描いたといわれる三島由紀夫の作品。『春の雪』『奔馬』『暁の寺』『天人五衰』の4部からなる長編小説です。

松枝清顕と綾倉聡子は、共に華族として生まれた身。互いに惹かれ合いますが、自尊心の強い清顕は聡子を遠ざけてしまいます。聡子は、皇族との婚約を受け入れることとなり…。

清顕は婚約した聡子と禁断の逢瀬を重ねますが、恐れていたことが2人に降りかかります。三島由紀夫の描く恋愛小説を読みたい方におすすめです。

葉隠入門

新潮社 著者:三島由紀夫

葉隠入門

江戸時代に編集された武士の在り方を説く『葉隠』を、三島由紀夫の思想を通して読み解いた作品。『葉隠』は、三島由紀夫が影響を受けた書のひとつでもあります。

過激思想として認識されることの多い『葉隠』。その本質は、死の存在こそが自由・情熱・生への活力を生み出すという「生の哲学」でした。

笠原伸夫が訳した『葉隠』の名言も楽しめる1冊。また、本作品は、今読むべき人生の教科書と謳われています。『葉隠』を通して三島由紀夫の思想を知りたい方におすすめです。

花ざかりの森・憂国

新潮社 著者:三島由紀夫

花ざかりの森・憂国

三島由紀夫自らが選んだ短編集です。16歳のときに執筆した実質的デビュー作『花ざかりの森』をはじめ、13編の短編を収録しています。

『憂国』では、主人公の武山中尉が、二・二六事件で逆賊となった親友を殺さなければならない事実に悩んだ結果、自刃を決意。夫の覚悟に添う夫人との情交と壮絶な最期を描いている作品です。『中世に於ける一殺人常習者の遺せる哲学的日記の抜萃』では、著者が生涯かけて探求したテーマが垣間見えます。

さまざまな作品を楽しめるのが魅力。三島由紀夫の描く世界を堪能したい方におすすめです。

美しい星

新潮社 著者:三島由紀夫

美しい星

三島由紀夫が描くSF小説です。2017年に実写映画化もされている作品。人類救済について問うシーンは、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』に匹敵すると謳われています。

大杉家には、一家全員が宇宙人であるという秘密がありました。父は原水爆を憂いて米ソ首脳にメッセージを送り、金星人の仲間であるという男と会いに行った娘は妊娠して帰ってきて…。

宇宙人という第三者的視点を通して、人間の存在を深く考察している点が魅力のひとつ。三島由紀夫の描くSFを楽しみたい方におすすめです。

サド侯爵夫人・わが友ヒットラー

新潮社 著者:三島由紀夫

サド侯爵夫人・わが友ヒットラー

三島由紀夫の戯曲集。“一対の作品”と著者自らが評する戯曲を収録しています。

『サド侯爵夫人』は、社会の風紀を乱したことで捕まったサド侯爵を、妻・ルネが18年待ち続けていました。ルネは、サド伯爵の何を信じていたのでしょうか。一方、『わが友ヒットラー』では、独裁者を衝き動かした狂気の深淵を探ります。

人間性にひそむ謎と狂気と権力の構造に迫る作品を読めるのが特徴。一方は女性だけ、もう一方は男性だけで作品を展開しているのも見どころです。

獣の戯れ

新潮社 著者:三島由紀夫

獣の戯れ

互いに傷つけ合う3人の男女を描いた三島由紀夫の小説。1964年に実写映画化されている作品です。

西洋陶器店でアルバイトをする大学生・幸二は、店主の逸平に、妻・優子からの嫉妬を求めてほかの女と遊んでいることを告白されます。幸二は優子を想い、彼女と一緒に逸平の浮気現場をおさえるのでした。しかし、壮絶な修羅場は3人を待ち受ける運命のきっかけに過ぎず…。

幸二・逸平・優子の三角関係がどこに行き着くのかが見どころ。破滅へと向かおうとする登場人物の行く末が気になる方は、手に取ってみてください。

命売ります

筑摩書房 著者:三島由紀夫

命売ります

三島由紀夫が「命」について考えた作品です。連続テレビドラマ化もされています。2015年の紀伊國屋書店新宿本店文庫年間ランキングで、1位になった作品です。

自殺に失敗して病院で目覚めた主人公は、必要とも思えない命を売るために新聞広告を出します。しかし、危険な目に会ううちに、“死にたくない”という想いが芽生えてきて…。

エンタメ性に富み、疾走感があるのが特徴。読みやすい三島由紀夫作品を探している方におすすめです。

不道徳教育講座

KADOKAWA 著者:三島由紀夫

不道徳教育講座

井原西鶴の『本朝二十不孝』を手本とし、逆説的レトリックを展開する三島由紀夫のエッセイ集。現代倫理のパロディを楽しめる作品です。

大いにウソをつくべし、弱い者をいじめるべし、痴漢を歓迎すべし…。一般常識では考えられない理論を展開し、不道徳を勧める著者の本意はどこにあるのでしょうか。

皮肉たっぷりに道徳や常識を語る著者の語り口が特徴。ほかの作品が持つ雰囲気との違いにも驚かされます。軽妙な語り口の三島由紀夫作品を読みたい方におすすめです。

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