少年犯罪などを題材に、社会派なサスペンス・ミステリーを手掛ける小説家「薬丸岳」。犯罪被害者と加害者の心理を巧みに描き、重厚感とリアリティのある作風が特徴です。

今回は、薬丸岳の小説からおすすめの作品をご紹介。評価の高い人気作をピックアップしているので、ぜひ参考にしてみてください。

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ミステリー作家「薬丸岳」とは?

薬丸岳は、1969年兵庫県生まれの小説家です。父の影響で子どもの頃から映画に親しみ、高校を卒業後、役者になるために劇団に入団します。劇団を退団した後はフリーターとして働きながら、映画などのシナリオコンクールに応募する生活を送っていました。

小説を書き始めたのは、高野和明の江戸川乱歩賞受賞作である『13階段』に触れたことがきっかけ。2005年『天使のナイフ』で同氏も江戸川乱歩賞を受賞し、小説家デビューします。

デビュー後は、ミステリーや犯罪小説を中心に数々の人気作を発表。2016年『Aではない君と』で吉川英治文学新人賞を受賞し、2017年には、『黄昏』で日本推理作家協会賞の短編部門受賞に輝きました。

『刑事のまなざし』『友罪』など、多くの作品がドラマ化や映画化もされている、注目のミステリー作家の1人です。

薬丸岳作品の魅力

シナリオを執筆していた頃から、少年犯罪や少年法に興味があったという薬丸岳。『天使のナイフ』をはじめ、少年犯罪を題材にしたサスペンスやミステリーを多く発表しています。

薬丸岳作品は刑事法や社会の問題点に触れつつ、犯罪被害者・加害者の心情や境遇を丁寧に描いているのが特徴。重く切ない雰囲気の作品が多いものの、ミステリーとしてハラハラドキドキとした感覚や、予想を裏切るどんでん返しの展開も味わえるのが魅力です。

平易な文章と巧みな構成で読みやすく、引き込まれるような感覚で一気読みしたという読者が多いのもポイント。読後に新たな視点を与えられるような、社会派なミステリーが読みたい方におすすめの小説家です。

薬丸岳のおすすめ小説

天使のナイフ 新装版

講談社 著者:薬丸岳

天使のナイフ 新装版

2005年に江戸川乱歩賞を受賞した、薬丸岳のデビュー作であり代表作。“少年犯罪小説の金字塔”と評される1作です。2015年にはドラマ化もされています。

娘の目の前で妻を殺された桧山貴志。当時13歳だった犯人の少年3人は、少年法により罪に問われることはありませんでした。4年後、犯人の1人が殺されたことで疑いは桧山に向けられます。

選考委員が、満場一致で受賞に推薦したという本作品。少年犯罪の被害者と加害者を主軸にした社会派なテーマながら、伏線が複雑に絡み合い、ミステリーとしての完成度の高さにも定評があります。初めて薬丸岳作品を読む方にもおすすめの1作です。

友罪

集英社 著者:薬丸岳

友罪

少年犯罪を起こした加害者の、その後の人生と周囲の関係性を描いた長編小説。2018年に映画化もされた、薬丸岳の意欲作です。

埼玉の小さな町工場に就職した益田は、同日に入社した鈴木と出会います。同い年ということもあり、次第に打ち解けていく2人。しかし、あることをきっかけに益田は、鈴木が14年前の連続児童殺傷事件の犯人ではないかと疑惑を抱きます。

過去に凶悪犯罪を犯した友人を、自分や社会はどのように受け入れるべきなのか葛藤する主人公。リアリティのある物語設定には、思わず自分に置き換えて深く考えさせられたという読者も多い薬丸岳作品です。

刑事のまなざし

講談社 著者:薬丸岳

刑事のまなざし

薬丸岳の人気作である「刑事・夏目信人シリーズ」の、1作目にあたる短編集。2013年にドラマ化もされています。収録作の『オムライス』は、第60回日本推理作家協会賞の短編部門に、候補作として選出されました。

通り魔によって、幼い娘を植物状態にされた夏目信人。刑事の道へ進んだ夏目は、さまざまな社会の歪みで苦しむ人々をあたたかく、時に厳しく見つめながら事件の真実を導き出します。

本作品は、人情味溢れる刑事・夏目信人を主軸に、7つの事件を描いた連作短編集。それぞれの事件にミステリーとしての読み応えと、胸が締め付けられるようなが深みがあります。薬丸岳のシリーズ1作目としておすすめの作品です。

Aではない君と

講談社 著者:薬丸岳


Aではない君と

少年犯罪を犯した息子と家族の関係を描いた、薬丸岳の傑作長編小説。2015年度の吉川英治文学新人賞を受賞し、2018年にドラマ化もされました。

同級生の殺人容疑で逮捕された、14歳の翼。弁護士にも口を閉ざす翼は、事件の直前に父親に電話をかけていました。真相は語られないまま、親子は少年審判の日を迎えてしまいます。

加害者の親となった主人公の、葛藤や苦悩が巧みに表現されているのがポイント。大人が読むと、親子の関係性や子育ての難しさを突きつけられる薬丸岳作品ですが、中学生にも読み応えのあるおすすめの小説です。

虚夢

講談社 著者:薬丸岳


虚夢

刑法39条を主題に、精神鑑定に一石を投じる1作。「心神喪失」により不起訴になった無差別殺人犯と、被害者を描いた薬丸岳の名作ミステリーです。

通り魔によって奪われた娘の命。しかし、犯人は「心神喪失」状態であったとされ、罪に問われることはありませんでした。しかし、事件から4年後、別れてしまった元妻から“「あの男」を街で見た”と告げられます。

被害者の立場や心情だけでなく、加害者の立場も丁寧に描かれているのがポイント。切なさと重厚感のあるサスペンス・ミステリーが好きな方に、特におすすめの薬丸岳作品です。

悪党

KADOKAWA 著者:薬丸岳


悪党

「犯罪加害者の追跡調査」を行う探偵が主人公の薬丸岳作品。複数回にわたってドラマ化もされている、社会派ミステリーです。

元警官の探偵・佐伯は、老夫婦から“息子を殺し、少年院を出て社会復帰した男を追跡調査してほしい”という依頼を受けます。しかし、佐伯は依頼に後ろ向きでした。実は、彼自身も過去に姉を殺された、犯罪被害者遺族だったのです。

同様の追跡調査をいくつも手掛けながら、姉を殺した犯人に近づいていく佐伯。本作品は特に、遺族の心情を痛切に描いているのがポイント。連作短編集のような構成で楽しめる、おすすめの1作です。

闇の底

講談社 著者:薬丸岳

闇の底

薬丸岳の江戸川乱歩賞受賞第1作にあたるサスペンス・ミステリー。法や警察の限界に言及する社会派長編小説です。

子どもへの性犯罪事件が起きるたびに、過去に同様の罪を犯した前歴者が首なし死体となって発見されます。身勝手な性犯罪を、私刑で抑止しようとする処刑人・サンソン。そして、犯人を追う埼玉県警の刑事・長瀬。2人を結びつけたのは、過去のある事件でした。

再犯率の高い性犯罪者の扱いについて考えさせられる本作品。薬丸岳のデビュー2作目にして、劇場型犯罪というモチーフでエンターテインメント性も高い1作です。

死命

文藝春秋 著者:薬丸岳

死命

2019年にドラマ化された、薬丸岳のサスペンスミステリー。余命僅かな殺人犯と刑事という、対照的な2人の闘いを緊迫感溢れる筆致で描いています。

殺人願望を押し殺してきた榊信一に宣告されたのは、末期癌により自分が余命わずかであるということ。残された人生、欲望に対して忠実に生きることを決意する榊は、連続殺人の実行へと走ります。一方、そんな榊を追う刑事・蒼井。彼もまた病に冒され、余命わずかと宣告されていたのです。

逮捕と死、どちらが先になるか読めない、ハラハラする展開が魅力の本作品。薬丸岳らしい重苦しさの漂う物語設定ながら、一気読みした読者も多いおすすめのサスペンス小説です。

ラストナイト

KADOKAWA 著者:薬丸岳

ラストナイト

“涙腺崩壊必至”と謳われる、薬丸岳の感動長編小説。異なる5人の視点から、1人の犯罪者の実像を描いたミステリーです。

居酒屋「菊屋」に、店主・菊池の友人が現れます。彼は顔面に豹柄の刺青を入れ、犯罪を複数回にわたって繰り返す前科者・片桐達夫。出所したばかりの片桐は、かつて菊池の妻と「菊屋」を暴力団員から守るために、傷害事件を起こしていました。その事件以降、人が変わったように犯罪に手を染め続ける片桐。彼はなぜ、罪を重ねることになったのでしょうか。

同じシーンを違う人物の視点から描いていくことで、立体的に物語が浮かび上がる巧みな構成が見どころ。涙が止まらなかったという読者も多い、おすすめの薬丸岳作品です。

ハードラック

講談社 著者:薬丸岳

ハードラック

派遣切りやネットカフェ暮らし、闇サイトなど、現代の身近な問題を取り入れた薬丸岳作品。困窮がきっかけで闇社会に踏み入れ、転落していく男が主人公です。

25歳で日雇い仕事を失い、“大きなことをするため”と、闇の掲示板で4人の仲間を募った仁。しかし、仁は軽井沢で起きた放火殺人の汚名を着せられてしまいます。信じられる人間が誰なのかも分からないまま、仁は手探りで真犯人を探し始めますが…。

二転三転する疾走感のある展開で、ハードボイルド小説としても楽しめます。中学生や高校生にもおすすめの1作です。

神の子 上

光文社 著者:薬丸岳

神の子 上

薬丸岳作品のなかでもエンターテインメント性が高い1作。高いIQを持ち、闇社会で生きてきた天才少年と、個性溢れる登場人物たちが織りなす長編小説です。

戸籍すら持たない境遇のなか、己の頭脳だけを頼りに生きてきた町田博史。彼は少年院入所時の知能検査で、IQ161以上を記録するほどの天才でした。町田は、同じく収容されていた少年たちと脱走を決行します。一方、闇社会に生きる男・室井は、町田を執拗に追い求めており…。

上下巻というボリュームのある本作品は、結末まで予想できない怒涛の展開が見どころ。ハラハラするだけでなく、どこかあたたかみも感じられる作品が好きな方に、おすすめの小説です。

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