植物の葉や茎、根などを原料に染色を行う草木染め。天然素材を使用するため、合成染料にはない深みのある独特な色合いを楽しめるのが魅力です。

今回は、木工作家の清水将勇氏が営む工房「ヤポニカ」に注目。杉材を草木染めした実用的ながらもアート作品のように美しい酒器とマグカップをご紹介します。

杉材に草木染めを施したきっかけ

茨城県石岡市に工房を構える清水将勇氏。次世代の匠をサポートするプロジェクト「LEXUS NEW TAKUMI PROJECT 2018」にも選ばれた注目の木工作家です。

木工職人としての修行を経て独立する際、偶然手にした書籍をきっかけに木材の草木染めに着目。東大寺正倉院に保管される正倉院宝物を収める箱に、防虫・防腐作用がある蘇芳(すおう)で染めた杉材が使用されていたという歴史的事象を知ります。

さらに詳しく調べるうちに、草木染めが杉材の魅力を最大限に引き出す染色方法であると確信。試行錯誤を繰り返し、杉材を草木染めする技法を編み出します。

杉材の個性を魅力に変える草木染め

針葉樹のなかでも柔らかい杉材。染液がよく浸み、濃く鮮やかな色に染まります。また、心材と辺材の色の差が明瞭なのも特徴。草木染めすると異なる発色をし、複雑な表情を見せます。草木染めを施した杉材は、色鮮やかながら生き生きした木の表情が見えるのが魅力。どこか懐かしい色合いで、見ているだけで心が癒されます。

草木染めの種類と技法

ヤポニカが採用する代表的な草木染めは、藍・蘇芳・ローズマリー・ログウッド・南天・クチナシ・五倍子(ごばいし)・タマネギの8種類。材料を煮出して染液を作り、杉材にハケで直接塗って乾燥させます。

前後にミョウバンや鉄、銅などを主成分とする媒染剤を施すのがポイント。天然色素と杉材を結びつけ、鮮やかな発色を実現します。

手彫りならではのあたたかみ溢れるデザイン

ヤポニカが手掛けるアイテムは、シンプルなフォルムながら成形後に手彫りの跡をあえて残しながら胴を削るなど、テクスチャーの加工方法に異彩・超絶の技が見られます。

また、鉄のワイヤーブラシで叩きつける特殊な浮造り(うづくり)加工を施しており、浮き上がった木目の表情を楽しめるのに加え、傷ができても目立ちにくいのが魅力です。さらに、叩きつけた際にできる無数の孔から染料が染み込みやすくなり、強度が増すうえ、重厚感のある雰囲気に仕上がります。

クラウドファンディング経由でお得にゲット

杉材に草木染めを施したヤポニカの工芸品は、2020年8月25日までSAKIDORI Storeにてクラウドファンディング中。お猪口とショットグラス、マグカップの3種類から好みのアイテムを選べます。気になる方は、ぜひチェックしてみてください。