ボタンを押すとバカっと分裂。
ライターのMark WilsonがFast Companyの「1日クリエーティブ・ディレクター」で目指したのは、映画やアニメでしかお目にかからないであろう、そんなコンセプトカーでした。
自動車最大手のGMを訪れ、偉い人からキャデラックのデザイナー、職人たちまで、たくさんの人に説明したものの、結局コラボに至らず。デザインを引き受けたのは、drone ambulance などのコンセプトを手がけたargodesign社でした。プロジェクトを率いた同社のChipp Waltersは、この車を「Lane Splitter」と名付けました。
Lane Splitterの左右の「オートバイ」は非対称な形をしています。それぞれ両側面を平らにして、四角張った同じ形にした方がドッキングしやすそうですが、それでは見た感じが四角張るし、バイクとして速そうじゃない。やっぱり外側は流線型がいい。そんな経緯で、この形に決まったんだとか。
ドッキング時には、既に実用化されている自動駐車システムを応用して、2台のオートバイをガイドします。
車体を傾けることで曲がるオートバイと、4つタイヤの上に車体が乗って常に安定している自動車。その両方に対応するため、タイヤはハブなしに。太いタイヤを採用して接地面を増やす一方、それぞれがオートバイのタイヤのように傾くことで、より急な曲がり方ができるようになるんだとか。ただ、説明したWaltersは「少なくともそう考えてるってこと。物理的に正しいかは分からないよ!」と言って笑います。
Waltersによれば、Lane Splitterにはまだ美的観点でフロント部分に問題があるそうです。そしてなにより、このコンセプトが実現するかどうかはエンジニアリング次第だと。それでも彼は「みんな驚いていると思う」「最初に考えていたよりずっとできた」と言います。
2台のオートバイに分裂する車が実現するか、実現しても実用性がどれほどあるかは分かりませんが、無理だと言わずにやってみたら、またそこから新しい何かが生まれるのかもしれませんね。
Waltersはこうも言います。大事なのは「ありそう」感だと。「無理に決まってる」と思うのを一瞬でも中断させられるだけのリアリティがあれば、頭の中に「できるかも!」という言葉が残る。それが成功の秘訣なんだそうです。