手を失った人の明るい未来。

事故などで手を失った人のための義手には数多くの種類があります。動かないものの外見が精巧に造り込まれた義手、本物の手のような動きを可能にするハイテクなものまで様々なタイプが存在。今回は、動くタイプのものでも、これまでとは一線を画す仕組みを採用した義手の開発のために、日夜努力を傾けているドイツのSaarland University発のテクノロジーをご紹介しましょう。

これまでとは全く違う「人工の手」

Saarland University開発の義手もしくは人工の手を仮に、artificial handと呼ぶことにしましょう。通常は、それがロボットの手であろうと、義手であろうと、内部には多くのモーターやケーブルがぎっしり。でも、artificial handは仕組みが全く違います。ニッケルチタニウム合金の形状記憶金属のワイヤーで指を動かすのです。そのため非常に複雑な動きが得意。しかもモーター駆動と違って音が静か。

どんな風に動かすの?

いくつも束ねられても綿糸よりもまだ細いこの形状記憶ワイヤーの束は、artificial handの指の表面とその裏面に仕込まれています。このワイヤーの束は非常に強靭です。この束ねられたワイヤーに電流を流し、熱が加えられると、収縮します。そして冷えると元の長さに戻ります。まさに人工筋線維という感じ。

もっと太いワイヤーを1本だけ使用せず、細いワイヤーをたくさん束ねて使う理由はここに。1本だけよりも数多くのワイヤーがあった方が合金の面が増え、早く冷えるというのがその理由。電流のON、OFFでパパッと伸縮。プロトタイプであるartificial handはまだ開発途上にありますが、将来的にはもっと繊細で人の微妙なコマンドに対応した動きができるものを目指して研究が進められています。